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元人間の天狗徒然紀行  作者: 唐墨 いくら
第一章 山籠もり編
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その三、決意

 あの勝手気ままな、もとい、気まぐれな神様が部屋を訪問(という名の侵入)してから早くも一週間が経った。背中に生えた赤ちゃんの指のような、小さな手羽先のようなものは今や羽毛が生え、手のひらサイズにまで成長している。その見た目はまさしく雛の翼の様である。大きくなるまでに数か月と言っておったなあの爺さん…いや、神様。幸い今は服に隠れているため私の変化に気づいている者はいない。


 家族にも親友の香音にも、誰にも言っていない。このまま変わらず生活することは、数か月後なんて頃にはおそらく不可能だろう。羽が生えた人間なんて、上手いこと行っても見世物のような人生か、最悪国の研究機関に連れ出されていろんな調査をされるに違いない。そんな考えが光翼の脳裏を過ぎった。それだけは!絶対に嫌だ!

 

 目立ったことや面倒事が嫌いな光翼はその結果、大学を辞めることを決意した。辞めるのは大学だけではない、人間社会での生活そのものから離れて、なるべく人の目につかないよう生活しようと決意したのだ。全力で人間社会の目から逃れて、ひっそりとのんびりと山に籠ろうと思ったのだ。


 そんなこんなで考えていたが遂に来てしまった20歳の誕生日、世の中はバレンタインでチョコレートの香りが街中を包み込んでいる。そんなチョコレートなんてお構いなしに香音と光翼は一緒にウニを食べに下町へいく。彼女からプレゼントを貰い、料理に舌鼓を打ちながらいつも通りな会話を繰り広げる。そんな何気ない楽しいひと時ももう終わりなんだと、そう思うと急に涙が出てくる。それを嬉し涙と思った香音は


「えっえっ、どうしたのよ?そんなに私からの誕生日プレゼント嬉しかったの?やめてよ全く、光翼はすーぐ泣くんだからぁ。」


 と、微笑んで光翼にハンカチを渡す。優しい。こんなにやさしくていい友人と離れることはとても寂しい、けど、香音は一番信頼ができるし、大事な友人だから、彼女には本当のことを話したい。笑われて信じてもらえないかもしれないけど。

  

  一回、本当のことを話してみよう。


「香音、急な話で悪いんだけど、私もうすぐ大学辞めるのね。辞めて遠くへ引っ越すつもり。だから、もう香音には会えなくなっちゃう。だから寂しいのよ。寂しくて涙が止まらないの。」


 せっかく誕生日祝っている中で本当にごめん…。


 一瞬驚いた香音は、すぐに冷静な顔になり、とても冗談には見えない光翼の様子に何かあると悟ったようだ。そこですべてを話すために光翼は香音を自宅のアパートへ連れて行った。

 香音は光翼に何があったのかを聞き、光翼も経緯を偽りなく話した。最初は信じられなかった香音も、光翼の背中の羽を何度も確認した後は次にどう動くかを相談する姿勢に入った。頭の切れる香音の、こういった切り替えが早いところは今回ほどありがたいと思ったことはない。


「まず、さっきも言ったように私は人の目に付かない遠くの地で生活をしようと思うの。具体的には山に籠る。これしかないと思う。」


単刀直入に言う光翼。頼れる友人だからこそ、自分のスタンスははっきり示しておきたい。光翼のはっきりした意見に、香音は同意する。


「うん、人目に付いたら間違いなく騒ぎになるね。でも、そのためには今から山籠りの準備をしないと。どんどん大きくなっているんでしょ?その翼。買い出しが難しくなったら私が代わりに行くから何でも言って。」

「ありがとう。とりあえずテントやナイフとかのサバイバルグッズは必須かも。」

「よし、今から買いに行こう?準備は早ければ早いほど良いよ。動けるうちに動いとかなきゃ!」


行動力の塊の香音によって、百貨店にて一緒に基本的なサバイバルグッズは手に入れた。

もともとバイトを大量にしていたため貯蓄に少し余裕はある。持ち運びしやすいように一番軽いものをそれぞれ選び、サバイバルナイフは丈夫なものを、マッチも大きめの箱を5箱くらい買った。こうして、香音とともに山籠もりの準備が着々と進んでいった。


今回は短くてごめんなさい。前のあとがきに準備する話と書いておいて、実際は準備する前の相談回でしたね。次こそ準備する話になります。香音と光翼が仲良くほのぼのと準備なり飛ぶ練習なりしますよ。

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