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元人間の天狗徒然紀行  作者: 唐墨 いくら
第一章 山籠もり編
1/37

その一、 神隠し

お目汚し失礼いたします。

誤字やおかしなところがあれば今後直していきます。

※この小説はフィクションであり、実在する場所、団体、機関とは関係ありません。




―――ここは首都圏郊外住宅地。現在は深夜2時30分を過ぎたころ、住宅街は閑散としていて、ほとんどの者が寝静まっているため、誰も外に目を向けるものはいない。そんな中に一人、否、一羽の大きな鳥人間の姿が朧月の薄ら明るい光の中夜空を飛んでいた。


「はぁ、、、はぁ、、、荷物詰め過ぎた、、、きっつ、。」


 そうため息をつきながら愚痴をこぼす鳥のような大きな羽を生やした彼女は、手に何やら大量の荷物を詰めたカバンを手にしている。

 鳥が空を軽々と飛べるのは骨を空洞上にしてできる限り軽量化した進化した成果によるもの。人間のような重たい体が飛べるだけでも大変な労力が必要な事であるが、彼女は荷物をも抱えている。それに応じてはばたく回数もかなり多めだ。


「今晩中にあの山まで辿りつかないと、、、。人目に付いたら大変だし。…一体どうしてこうなったのやら…。」


 行き先は、まずは郊外から少し離れた山だ。事前調査でルートは知っている。あとはまっすぐ飛んでいくだけ。飛んでいる間、彼女はこうなった経緯を思いめぐらしていた。


 全てのきっかけは春とするには早い、しかし冬も終わりに近い、まだ寒い季節の昼前である。彼女、光翼(みつば)は都内の大学に通う大学2年生であり、通学のため田舎の地方から都内周辺へ引っ越して一人暮らしをしていた。

 都内へ出ていった理由は、勉強したい大学があったからというのも一つだが、彼女の深緑の目を奇異の目で見てくる閉鎖的な田舎からさっさと出ていきたいという思いもあった。ここでは、不思議がられるも排除をしようとする人はいない。寧ろ、興味を持たれて友人もできたほどである。ここで初めて親友と呼べる者もできた。

周りと同じように授業を受け、ランチをし、同じような休日を送る日々。今日もいつも通り授業の後、その友人と大学周辺の店へランチに来ていた。


 「光翼(みつば)もとうとう二十歳!いやー実に喜ばしい!今度の日曜日とかにお祝いにどこか美味しいものでも食べに行かない?!下町の駅で雰囲気もコスパもいい店見つけたの!そこ、ウニが期間限定で食べ放題なのよ!」


そう食い気味に喋るのは光翼の親友の香音(かのん)だ。美味しいものには目がない彼女は早速いつもの調子で誘いにかかる。光翼としても、常に美味しいものリストを頭に入れている彼女が引っ張ってくれるこの調子は嫌いじゃない。寧ろ毎回新しい美味しい世界に連れて行ってくれるので良い。


「ありがと!ウニ最近食べてなかったから食べたいなぁ。今から楽しみやわぁ。」

「誕生日プレゼントとかも、なんか希望ある?」

「うーん、本当は空飛ぶ箒とか絨毯とかほしい。でも無理だからくれるものなら何でも嬉しい。」

「そんな真顔で言われても…相変わらず面白いことポンポンと言うね、光翼は。」


 独特の雰囲気と会話が光翼の特徴でもあり、親友の香音の気に入っているところだ。こんな調子でランチのイタリアンパスタを食べながらウニの話や誕生日プレゼントの話をして、普通の大学生らしく楽しんだ後、帰り道にふと、小さな社が見えた。香音は気づいていないようだった。実家が神社に近いからか、小さいときから神社に何かある度通っていた光翼は「親友にちょっと待って」と言いながら、ついふらっと足が向いて境内に入っていった。


(こんなところに神社ってあったっけな…。)


 そう思いながらも鳥居にお辞儀をして入っていく。不思議な光の中に吸い込まれるように光翼は空間の中へ消えていった。小さな社にも関わらず、小ぎれいに掃除されているようで祠は埃を被っていない。しかし、一切お供えがないのを不思議に思った光翼は、お供えが無いのも寂しいだろうと思い常にバッグに仕込ませてある飴やらチョコやらをお供えし、最後なんとなくさっきまで話題に上っていた誕生日のことについて思い返していた。


 (誕生日かぁ…。20歳ってうれしいような、ちょっと寂しいようなって思っちゃうのよね…。神様はそういうのないから何となく羨ましいな。20歳からは誰も経験できないような面白いことや楽しいことがありますように!)


 ―――ゴォッ

 「――。」


 踵を返して社を出る瞬間、強めの風が吹いてきた。誰かの声がしたが聞き取れず、後ろを向いて確認しようとしたらそこはいつもの大学周辺のビルが立ち並ぶビル街であり、驚いていると聞きなれた声が聞こえてきた。


 「ちょっと、光翼!!!どこ行ってたの?!探したんだからぁ。」


 香音は少し息を荒げながら光翼に駆け寄る。っえ?って表情で混乱している様子の光翼に香音は続ける。


 「もうっ!店を出て少し歩いた瞬間いきなりいなくなるんだもん、びっくりするわ!」

 「えっ、だって、そこの小さな神社にさっきまで…。」

 「…?神社なんてこの辺にないよ?あんたまた遅くまで本読んで寝不足でぼけてるんじゃない?今日は帰って寝よ?私ノートと出席取っとくからさ」


 状況を粗方理解した光翼はキョロキョロとあたりを見回してさっきまであったはずの神社を探すが、どこにもない。確かに、ビル街の中に小さいとはいえ神社があったならば今までに気づくはずなのに、あの神社は初めて見た。神隠しにでもあったのかと頭が痛くなってきた光翼は、香音に言われるがまま今日は家に帰ることにした。




続きますので、もし時間がありましたら読んでいただければ幸いです。

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