雨の鎮魂歌
大地を魔物が黒く染めるその中心で、カイは戦っていた。
手にしている剣の一振り一振りが魔物を両断していく。
戦闘が始まってすでに数時間は経過しているが魔物の減る気配はなく、カイは無我夢中で剣を振り続けた。
魔物の気配を感じとり、そこに向かって剣を振りぬく。
カイは思考する暇もないほどに集中していた。
いつの間にか雨が降り始め、少しづつではあるがカイの体力を削っていく。
そんな中、背後に現れた気配に気づき、そこに向かって剣を突き立てる。
勢いそのままに次の敵へと剣を振りかざそうとしたが、出来なかった。
本来なら死んだ魔物は霧となって消えていくはずだが、そうならず、刺さったまま抜けないというありえない状態に、カイは思考が回復していく。
振り返るとそこには、魔物に連れ去られたはずのサクラの姿があった。
胸には深々と突き刺さっているカイの剣。
「・・・・・・・・・サクラ?」
カイは呆然としながらもサクラへと近づいていく。
「・・・・・・・・・カイ」
サクラは最後の力を振り絞り、カイの方へ手を伸ばす。
カイの頬に触れる手の熱が、否応無しに彼に現実を突き付けてくる。
「・・・・・・・・・よかった」
サクラは微笑んでそう言った後、地面に倒れた。
「サクラ、ウソだろ・・・・・・・・・」
カイは急いで抱きかかえるが、すでにサクラから一切の反応は無かった。
「サクラ、サクラ、サクラッ!」
周囲に魔物の姿はすでになく、ただただ、雨が二人を濡らしていた。