近づく距離と遠ざかる距離
ゆかりが雅也と飲みに行っている時、達也と穂波も二軒目に行っていた。
「達也くんて、しっかりしてるのに面白いね」
穂波は純粋に達也を褒めた。達也はお酒を飲みながらいい気分だった。
「しっかりしてるなんて言われたことないよ」
達也がそう言うと、穂波は
「ゆかりちゃんが、達也くんはゼミで真面目でしっかりしてるって言ってるよ」
と言った。達也は内心ガッツポーズをした。ゆかりに感謝した。
「そう思われてるなら嬉しいよ」
二人は初めて話したとは思えないほどに、盛り上がった。しかし、帰りには達也はたいぶ疲れていた。自分をよく見せたいと思い、ゆかりに言うような弱気な発言はできなかった。それでも話は合うし、やっぱりかわいいと達也は穂波への好意を更に高めた。穂波も達也の自分への思いが決して悪いものとは感じず、達也の印象はよかった。だから、彼らはその後もコンスタントに連絡を取り合っていた。
ゆかりは、真由子と穂波と会った際に、穂波から達也の話を聞き、胸を痛めた。好きな人が友達と上手くいっている。それと比例して、ゆかりと達也の距離は開いている気がした。実際、2人は会っていても、穂波だけが共通の話題となりつつあった。
穂波と達也の近づく距離。ゆかりと達也の遠ざかる距離。