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感情のジレンマ

食事に行く三日前に達也からゆかりへ連絡が来た。

『今、病院なんだけどインフルかもしれない』

ゆかりは達也が心配だった。インフルエンザが流行っているから熱があればその可能性は限りなく高かった。

『大丈夫?』

すぐさま返信した。しばらくして達也から望まない返事が返って来た。

『インフルだった。ごめん』

ゆかりは悲しかった。例え、達也がゆかりを見ていなくても、一緒に食事に行くことは楽しみだった。まして行けなくなった理由がインフルエンザとは、ゆかりは彼が心配でならなかった。

『会えなくて、残念。お大事に』

ゆかりは素直な気持ちを書いて返信した。達也がどう受け取るかゆかりは分からなかった。


達也は目を覚ますとゆかりからのメッセージを読んだ。残念…俺と穂波ちゃんをそんなにくっつけたかったのか、と達也は思った。達也は恋愛経験がほとんどなく、話したこともない穂波にゾッコンだった。ゆかりも達也と連絡を取っていてそれに気づいていたのだが、受け入れられなかった。『本当にごめん。穂波ちゃんにも伝えてください』達也からのメッセージはゆかりをもどかしくさせた。少しくらい自分の好意に気づいてもらいたかったのに穂波の名前だけが書かれていたことが胸を締め付けた。ゆかりは『達也くんインフルになったから食事は中止、ごめんね』と穂波に連絡して、スマートフォンをベッドに投げて枕に顔を押し付けた。達也は穂波しか見えていないことは知っている。穂波は話したこともない見たことある程度の男の人をいきなり好きにならないよ、と言っていたがどうなるかはわからない。二人が上手くいけば、私が付け入る隙はない、とゆかりは思った。穂波に嫉妬して、友達関係も崩れるかもしれない、ゼミでどんな顔して達也に会えばいいかわからないとも思った。ゆかりのスマートフォンが鳴る。

『残念。また今度行こう』

穂波からだった。ゆかりはいっそのこと食事に行くなんてなくなってしまえば良いと思うのだが、好きな男が望む以上、彼を喜ばせたかった。新着メッセージが届く。

『俺の恋はもう終わりだ』

達也からゆかりへのメッセージには切ない思いが込められていた。しかし、この文章は間違っているよ、とゆかりは思った。本当はゆかりの恋が終わっているのだ。何度も繰り返すが実際、達也と穂波はまだ交流がないのだから今後どうなるかなんてわからない。けれど、ゆかりの片思いは今は確実に叶わないのだ。目に涙を滲ませて、複雑な感情を理解しようとするができない。好きな男を守りたい、悲しませたくない、苦しめるものを遠ざけてあげたい。でも、その反面自分自身も守りたいというジレンマがゆかりの頭と心を駆け巡った。ゆかりは再び枕に顔を押し付けた。目からこぼれ落ちた涙はそれを濡らした。

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