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回想 -溝が生まれる日-

初めての回想回です。

暫くは2000字前後で投稿していこうと思います。

宜しくお願いいたします。

「ちちうえ、ぼくたちって鏡なの?

ノルマンの鏡ってなぁに?」



あれはいつだっただろうか?

まだ父上の子ども扱いおかしくなくて

母上が生きていて

そして--兄上ともまだ仲の良い兄弟だった頃

広間に集まった家族の前で父上に尋ねたことがある。



「ユーリは難しい言葉を知ってるんだな!

ノルマンの鏡はな

わが一族の誇りと生き様を示した言葉だ!

俺たちが目指すべき姿を一言で表したものだな!」



その問いを受けた父上は嬉しそうに僕を抱き上げると、そう誇らしげに説明した。



「それってどういういみなの?」



褒められた事、抱き上げられことがうれしくきゃっきゃと喜び、降ろされた後、今度は僕はその傍らに立つ兄上をに抱き着き見上げるとそう問うた。



「家の家系は、わがノルマン公国の公主で在らせられるノルマン公爵様の姿を見て、悪い御当主様だったら戦うんだよ。

そして良い御当主様には強力な右腕になるんだ。

ずっと昔の公爵様と家のご先祖様との約束さ!

公爵家の状態に合わせて家の状態も変わる。

だから家はノルマンの鏡なんだよ。」



そのころからすでに柔和な雰囲気を身に纏った兄上は、子供にもわかるようゆっくりとした、それでいて強い意志を感じさせる口調でそう説明しながら僕の頭を優しく撫でる。



子供の僕はそれが公爵家との内戦に直結する様な気がして恐ろしくて堪らなくなり、思わず後ずさりをすると、ソファーに座り読み物をしていた母上の胸に飛びつき半べそをかきながら問う。



「御当主様と戦争するの……? 」



「心配しなくても、今の公主様と公子様はとても清廉で聡明な方よ。

ウェルズもユーリも公主様公子様のお力になれるように健やかにあればそれでいいの。

お母様の言うことが信じられない? 」



母上は本を閉じテーブルに置くと僕を優しく抱きしめながら耳元であやすように呟く。

不思議と母上の言葉は外れることが今までなく、僕にとって母上の言葉は幼い僕にとってはそのまま真実となる言葉だった。

安心した僕は体の力が抜け、そのまま眠りに落ちた。





今考えれば、兄上は本洗礼を目前に控え、名君である公爵様、名君になるであろう公子様の右腕となるに足る人物評である『佐の才』を受けるにふさわしい人物となるべく、最後の追い込みをしていたのだろう。

もっとも、当時の僕はそれを最近遊んでくれなくなり、不満に感じることしかできなかったのだが……



それからしばらくして兄上の本洗礼が行われた。



本洗礼は、誕生日を迎えた後の最初の満月の夜に行われる。

屋敷の教会に厳かな雰囲気が流れ、運命神ダイアナ像が後方にある祭壇に立つ神父様が神への賛美の言葉を唱える。

兄はその厳かな雰囲気の中祭壇の前に跪き、共に賛美の言葉を唱え、首を垂れる。



その姿を母上に手を繋がれ、祭壇の後ろの椅子に座りながら僕は見ていた。

いつも豪快な父上も、その時ばかりは兄上に一番近い席で静かに兄上を見つめていた。



まもなくして賛美の言葉が終わり兄上が右手をダイアナ像に差し出すように上げると、赤くそして所々緑の美しい光に包まれる。

周りの人々からはほぅ……と声にならない歓声が上がった。



僕も美しいその光に心を奪われ、思わず繋がれた手の先の母上を見つめると母上は何か悟ったような顔をして、僕の手をぎゅっと握る。

光がゆっくりと消失すると、兄上の右手の甲には紋章が刻まれていた。



「ウェルズ様は『騎の才』か……流石クロスフォード家次期当主様だ。」



「ウェルズ様の清廉な性格にぴったりの才だな。これでクロスフォード家も安泰だ。」



祭壇後方の椅子に座る人々から兄上の右手の甲に宿る紋章を見つめ、賛辞の声をひそひそと広がった。

その声を聞き、馬の首から上の下にに交差するような形で騎士剣が刻まれた意匠の紋章を目の当たりにした兄上は、周りの反応とはそぐわない普段の柔和な表情の兄上からは考えられない、下唇を噛んだような厳しい表情で何も言わず立ち上がる。



そして神父を、その後ろにある運命神ダイアナ像を見つめ一礼をすると、そのまま教会を出て行った。



僕は兄上が悲しんでいるような気がして居ても立っても居られず、母上と繋いだ手を振り払うと兄上を追いかける。



「待ちなさいユーリ!ウェルを1人にしてあげて……」



母上の呼び止める声に一度は立ち止まるものの、兄上の厳しい表情を忘れられない僕は母上の言葉を聞けずに教会を飛び出した。

うまく書けたかなぁ……

シリアスさが伝わっていれば何よりです。

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