プロローグ
はじめまして三月皐月です。
初めての小説になりますので文章のおかしいところ、改行のおかしいところなど多数あると思いますが、
よろしくお願いいたします。
才能--物事を巧みになし得る生まれつきの才能。才知の働き
この才能という言葉が僕は嫌いだ。
物事を巧みになし得る。なんと素晴らしいことだろう。
例えば魔法、例えば剣術、例えば政治
これらどれか一つでも才能が有れば世の中で生きて行くのは飛躍的に簡単になる。
しかし、これらの才能を持つことによってある意味人は可能性を縛られることにもなる。
魔法の得意な者は魔術師に
剣術の得意な者は剣士に
政治が得意な者は官僚に
そうして生きる人生は果たして自分で選んだ人生といえるだろうか?
走っているのは自分でもその道は自分で作った道だろうか?
そんなことを考え、走るのをやめてしまった自分にはそんなことを考える資格などもうないということに気づき、苦笑する。
しかしながら、走るのをやめてもなおこの疑問はぐるぐるぐるぐるぐるぐると----
「お兄様、朝です。朝食の準備が出来ております。
朝食が要らないのであれば私からルーシュに申し上げますが、いかがいたしますか?」
目を開けるとそこには、肩まで伸びたブロンドのストレートの髪と新緑を思わせるライトグリーンの瞳を持ち、透き通るような白い肌をした可憐な顔の少女がこちらをのぞき込んでいた。
「おはようレイラ。
朝食は頂こうかな。でないとルーシュにひどい嫌味を言われそうだ。」
僕が起きたことを確認すると部屋のカーテンを開け、日光を部屋に取り入れ外を眺めていた妹にそう声をかけると、こちらを向いて花が綻ぶように笑って手を合わせた。
「まあ! 本当にですか?
それでは私は部屋の外におりますのでお兄様もお早めにお越しになってくださいな。」
きらきらとした日光を受けますます可憐さを増したレイラはそういうと部屋を出て行った。
「さて……着替えますかね……」
思い切ってぐっと体を起こし、ベッドから降りるとぐっと背伸びをする。
肩甲骨のあたりがぱきぱきと小気味いい音を立てると少し頭がはっきりした気がした。
クローゼットから服を取り出し着替える。
今日も外に出る気は無いし適当なもので良いだろう。
適当に着替えを済ませ顔を洗い外に出ると
「お兄様またそんな恰好で……」
「今日は外に出る予定もないし--「お兄様こちらへ」……はい」
不満そうな顔をした妹はどうやらこの格好で広間に行くことを許してはくれないらしい。
指示通り自室に戻ると、すでにレイラはクローゼットを開け服を取り出していた。
勝手知ったる兄のクローゼットである。
行商に来た商人から僕の服を選んでいるのは彼女なのだから当たり前と言えば当たり前なのだが……
そんな事を考えながらぼーっとレイラを見ているうちにてきぱきと目的の服を手に取った彼女はそれを僕に差し出す。
「こちらの服にお着替えになって下さい。
あと後頭部に寝癖が立っておりますのでそちらも直してきてくださいな。」
言われるがままに服を着替えようと上着を脱ぎ受け取ろうとすると、真っ赤な顔で口をパクパクさせるレイラと目が合った。
「……やーん、レイラのえっち--ふぐほっ! 」
裸のお腹に的確なボディーブローを決めると僕の体はくの字に曲がる。
これはちょっとした暴行案件だぞ……そう思いながら苦しむ僕にそのまま彼女は服を押しつけ
「お兄様の露出狂!! 部屋の外で待ってますから早く出てきてくださいね! 」
一言言うと部屋から飛び出していった。
「おーおー思春期だねぇ」
鳩尾を的確に抉っていった妹の走り去る姿をくの字に折れ曲がったまま見ながら僕は声にならない声で呻くとえっちらおっちら着替えを進めるのだった。
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「やっぱりお兄様はきちっとした格好をしたら素敵ですわ。やはりこのお兄様のつやのある黒い髪に合わせたこの上着と、高貴な紫の瞳の色に合わせたワンポイントの装飾がよく似合って--」
着替えを終え、寝癖を直し部屋の外に出ると、レイラがそわそわとした様子で待っていた。
開口一番レイラは興奮したように早口で語りだすと、自分自身が相槌を打つようにうんうんとうなずいていた。
なんだか寝癖を直して鏡をみた自身の評価とはかけ離れているが、身内の欲目というものだろう。
確かに服はレイラは選んだだけあってとてもきれいにまとまっているが、認識の一致はそこだけだ。
が、そうやって興奮した様子で喋るわが妹は欲目なしに可愛い。それでいいではないか。
僕はよくわからない釈明をし、納得するとレイラのうんうんに自分の首も合わせた。
「--の選定をしなければいけませんね。」
どうやら品評会は終わったようだった。
それに伴い僕が広間に足を向けると、レイラも広間に向けて歩き出す。
「しかし、お兄様が朝食をお召し上がりになるなんて珍しいですね。」
横に並び僕のほうを向くと妹はそう言って僕のほうを見上げた。
僕の肩の高さが彼女の頭の高さになるため必然的に彼女からの問いかけはそう言った形になる。
「ここ最近朝食に出なかったから、ルーシュにそろそろ怒られるかなと思ってね。」
僕は勤勉で世話焼きの赤い髪の使用人の怒った表情を想像しながら渋い顔で答えた。
彼女は食材の無駄遣いにはとても厳しい。
何度も食材を無駄にすると主従関係を越えた鉄槌が下ることは想像に難くなかった。
そんな僕の渋い顔を見て彼女もその場面を想像したのだろう。
くすくす笑いながら違いないですわと口元を抑えた。
それを見ながら僕達は広間に到着した。
僕が広間の扉に手を掛け開けようかというタイミングで彼女は
「それにしても、タイミングが良かったですわ。
久々のお兄様との食事が家族全員で食事できるタイミングで。」
もし僕がその言葉を扉に手を掛ける前であれば、逃げ出したことだろう。
しかし、現実はそんなわけにはいかないのだった。
「おはようレイラ。今日も可憐だね。
それと今日はユーリも一緒なんだね。久々に食事が一緒にできて嬉しいよ。」
「おう! おはようレイラ! それと今日は穀潰し息子も一緒か! 朝早く起きて、ちゃんとした格好もしてくるえらいじゃないか! 」
「ユーリ様、レイラ様おはようございます。」
扉を開けるとそこには、柔和な笑顔を浮かべ、そつのない挨拶をしてくる金髪紫眼の容姿端麗な青年と
にやにやした表情で立ち上がり、頭をもげそうな位撫で回してくる黒髪緑眼のがっちりとした中年がいた。
そしてその後ろでは、赤髪碧眼のメイドが丁寧に朝の挨拶を告げていた。
1ページの文字数ってこれくらいでいいのでしょうか?
何かありましたら何でもよいのでご指摘お願い致します。