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第二話「イージーモードに限る」

自分の体が明らかに赤ん坊であることや周囲の状況から、どうやら自分は


転生してしまったらしいとの結論を出してからだいたい一ヶ月が経過した。


その中で分かったことだがどうやら俺は「フォルクレストオンライン」の世界に転生したみたいだ。


そのものではないのかもしれないが影響は間違いなく受けている。


なぜここが「フォルクレストオンライン」に影響を受けた世界だと判断したのかと言えば


まずこの世界には魔法が存在していた。


こちらに転生して数日目の夜中に誰かが近づいてきて、手を俺の顔にかざし何か呟いたから


なにしてるんだと疑問に思っていると、突然かざされた手が発光したのだ。


びっくりした俺はその時、年甲斐もなく大泣きしてしまった。


中身は18歳だってのに全く......父や母が様子を見に来た時にも


無意識のうちに笑顔になったりしたし、精神が体に引きづられたりしているんだろうか。


そんな大仰なものじゃなく、ただ生理的な動きが起こっただけという線もあるか。


ただ魔法はもはや異世界転生ではテンプレと化しているからどこかという根拠にはならないな。


この時点で判明したのは転生した場所が地球ではないことだけだ。


まあそんな訳で今いる場所は元いた世界から見れば異世界である。


俺、異世界転生しちゃいました!


正直ゲーマーの自分が見ている恥ずかしい夢という可能性も否定はできないが......


まあ覚めないのならば夢も現実も変わらないのだからいいだろう。





決定的だったのは言語と地名だ。


初めのうちは喋りかけてきても何を言っているのか全く聞き取れなかった。


確か最初に聞いた言葉は「ソヤヲスドザシラヌ"Alwin"ナラ」だった。


赤ん坊の記憶力は恐ろしいほどいいらしくそんなことまで鮮明に覚えている。


その後なんども"Alwin"と呼びかけられたので俺の名前はアルウィンなのだろう。


ちなみに愛称はアルでもなくウィンでもなくアーウィだった。


そのことからアルファベットの発音をしているのは固有名詞だろう当たりをつけた。


そうだと意識して聞いていると会話のなかに聞き覚えのある単語が出てきた。


"yeshua"(ヨシュア)と"stimo"(スティモ)。


「フォルクレストオンライン」における自領とチュートリアルで戦う領の名前である。


その単語を聞いてからこちらの言葉を理解できるようになるまでは早かった。


喋っているの言葉が「フォルクレストオンライン」のものであれば


そこにはある法則が成り立つとうことを俺は知っていたからだ。


その法則とは「ガチャ ギィ」おっと、誰かきたようだ。


入ってきたのは俺がもっとも目にする事の多い少女、ナールだった。


今の時間は昼過ぎ、両親は仕事があるからか基本的に朝と夜しか来ないのだ。


彼女は俺や両親のことを様付けで呼ぶのでメイド的な人だと思っているのだが、


食事は両親と一緒に同じものを食べているらしい。


どういうこっちゃ。


年の頃は恐らく10歳程度。


肩ほどまで伸びた綺麗な黒髪と藍色の瞳。


そこに質素な服装と華奢な体が相まって薄幸の美少女的な外見なのだが


その実は基本的にテンションの高い元気っこである。


「ソヤヲスドザシラヌ"Alwin"ナラ!

 ロスヌチニニハワ"Helena"ナラダトアエウヲスベヌヲ。ヲタッハベヌメ!」

(おはようございますアルウィン様!

 もう少ししたらヘレナ様が来られるようですよ。よかったですね!)


今回の用事は俺の様子を見るがてら、母が来ることを伝えにくることだったらしい。


「あーう!」


意味のある言葉は発せないがせっかくだから返事をしておく。


ただ声をあげるだけで喜んでくれるのだから、チョロいもんである。


ナールは返事をした俺をみてニコニコしていたがしばらくしたら部屋から出て行った。


それにしてもなぜ人は赤ん坊に話しかけるんだろうな。


普通の赤ん坊だったら理解できないと思うのだが......


前世でも子育てというものを経験したことのない俺にはいまいち分からない行動である。






えっと何を考えていたんだっけか......


そうそう言語の法則性についてだった。


それは察しのいい人なら即座に気づけるほど単純だ。


実際に「フォルクレストオンライン」では、文字が実装されてから二時間で法則が発見され


それ以来「この運営の仕事は雑」という共通認識が2ch住民の間で広まった。


なぜならその法則が50音を「あ→さ」というように下に二段ずらしただけの


なんの捻りもないものだったからだ。


さらに例外処理もずさんの一言で変換先に該当する文字が


存在しない文字の場合(たとえば「ざ」など)はそのまま元の文字が使用される。


まあそのずさんさのおかげで変換しながらではあるものの、


早い段階で喋る内容が分かるようになったのだから、運営には感謝しておこうと思う。





そしてこれが夢にしろ、そうでないにしろ元の世界に戻れる可能性があるとすれば


それもこの世界が「フォルクレストオンライン」に酷似しているところにあると思っている。


そもそも「フォルクレストオンライン」はプレイヤーが


ある領の長である15歳の少年をロールプレイし自領を発展させていくゲームである。


そしてそれには期間が設定されていて、


期間内に自領がある程度まで発展していないと強制ゲームオーバーに、


発展していれば数値化され得点およびランクが出るといった具合でクリアとなるわけだ。


ようするに何が言いたいかといえば俺はゲームでいうエンディングを迎えれば


何らかの変化があると思っている。


確かに自分のやっていたゲームの世界に転生するというシチュエーションはいい。


実にいい。


実際に転生直後は嬉しくてずっとニヤニヤしていた。


しかし最近は不安の方が増してきているのだ。


そもそも俺はこの世界で生き残れるのだろうか?


フォルクレストオンラインはファンタジー在りの中世が舞台だ。


中世において命は軽いものだったと聞いたことがある。


あるいはゲームのオープニングまでたどり着ければ都合のいい展開に持っていけるかもしれないが


そこまで辿り着けるかすらわからない。


ゲームでは失敗した所でGAME OVERの後も続けられた。


だからこそ縛りプレイを楽しむことができたのだ。


もしそこで終わってしまうとしたら自らを制限することに何の意味があるというのか。


マゾゲーは好きだが、己の人生ともなればイージーモードに限る。


フォルクレストオンラインと前世の知識というアドバンテージはあるのだ、なんとかなるだろう。


それにしても、あぁ眠い。


今後の方針にまた明日かんがぇ...ょぅ...

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