またも
「すみません…店長…」
「あ゛?」
ゆうきは震える声でそう告げ、電話を切る。
「この…!!オヤジ変な時にばっか現れやがって…!!」
そのホームに向かって走る走る。階段を駆け上がろうとして、別のホームにいまさっき着いた電車の乗客(もう降車してるけど)で、こちらのホームで乗り換える方々が大量に狭い階段を、上る用の領地まで侵しながら、すごい密度で攻め下ってくる。
ちっきしょ…と言って彼はUターン。
彼の考えた事は…そう、ひとつ向こうのホームなのだから、自分の脚力でむこうまで跳び移ろうというものだった。(バカだ)
彼は目をつむり、軽く深呼吸してから、また目を開く。
さてと〜……人目はありすぎるが…
やむなし。
と心で言うと、(線路2つまたぐわけだが、1つは父の乗り込んだ電車で遠い方の線路上もう止まりかけなので大丈夫、もう片方手前の線路に電車が来ないかだけ)「右確認。」、「左もオーライ。」、少し助走をつけてGO!!っと、跳ぶ直前に
「まてコラ。」
首ねっこ掴まれ、喉がいきなり圧迫。
「きゅっ…!!」
これまた後ろにふんぞり返る。彼は自分に、「後ろか!!」とツッコむ。「またこれ?!」とも。もちろん駅員でした。
PM 10:08
駅員にさんざ説教され、父を取り逃がし、結局ラーメン屋へ…。
居所のない顔をして謝るゆうきに店長、
「事情はわかった。許してやるからあの客なんとかしてくれ」
と。店長も困っていたのでゆうきを呼び出したのでした。
「うぃす」
お困りの原因は、赤いドレスでけっこう色気出してるつもりの、ゆうきと同いくらいに見える女性。長い髪を見ても綺麗に手入れされているのがわかる。が、恋人と何かあったのか、飲みつぶれたようで、テーブルにつっぷしている。顔は腕で見えず、寝ているのかは不明。
泣き暮れた後かもしれないのに無頓着な彼は、仕事の一部としか考えず、機械的に、
「あの、お客さん…ウチ閉店なんすよ。ウチで寝られたら困るんす。ね、起きて下さいよ…?」
と、ゆっさゆっさと彼女の肩を揺する。女がすぐに返す。寝てはいなかったようだ。
「ほっといて…」
「放っときたくてもできないんすよ…さ、早く…!」
言い続ける。
ついに女は、ガタッと立ち上がり、
「ちょっと黙って!!」
腫れた目で思いきり彼を睨めつける。(彼はほんとに驚く。どんだけ鈍いんだ)それから額を抑え、
「ダメ帰るわ…ここにいたら頭が痛くなる…」
「肩貸しましょうか?」との言葉を
「いらないわよ、ガキ。」
で弾くと、ふらふらしながら出口までいき、妙に勢いよく開けて、ピシャと閉めると言うより乱暴な音を立てていった。
店長「でかした。」
ぐっと親指。
ゆうき「たまにいるんすよねー…」
つづく。