捜索
ラーメン屋。
ガラララ、と扉の開く音、「ヘイラッシャイ!!」とゆうきの張った声。彼がバイトを始めて、もう2週が過ぎていた。
入ってきた常連二人組おっちゃんたちは、
「あの兄ちゃん、いつも威勢がいいね」
「おぅ。ああいう子ウチにもほしいな」
などと話している。
色々炊事をしながら、
やるせなさは仕事で忘れよう!と努めるゆうき。
そして金がなきゃやはり不便が多い。「稼ぐぜぇ〜…」と燃えてもいる。
「2番、4番テーブルだ」
と店長から突如声がかかる。できた料理を持ってけと。
勢い余る声量で、
「ハイィ!!!」
とゆうき。
「元気だな。その調子で。」
せっせと働きます。
…………
午後8時。
張り切りすぎて疲れたが、今日は給料が入った。あの日から1000円で奇跡的に暮らし抜いて、やっとこさ。嬉しさも2倍である。が、あれからメガネ上司やオヤジの消息がつかめない。あのラーメン屋来て俺のアパート前通ったなら近くに住んでると踏んだが、見当違いだったか。とりまさっさと捜索を開始せねば。地元の母にもあまり心配をかけたくない。
それからは、メガネのタクシーで向かった方向の街に、電車でひと駅ひと駅、バイト終わりから毎日毎日(昨日とは違う駅へ 違う駅へ)通っては周辺を捜し、収穫なしでは帰ってくる、の繰り返しだった…。
2月10日。
だいぶ遠くの駅まで来た。もう帰りてぇ と思っていると、ポケットのケータイが鳴る。店長だ。そのときここからひとつ向こうのホームに8両電車が、ここの駅で停まるため、速度を落として流れ込む。
電話に出る。
「お疲れさまです、店長。」
「喜べ。借りを返せるチャンス到来だ。今すぐ店来い。」
え?ここから?いまから?マジで?!と思うが、仕方な…
!?
店長「おい…?」
いまあちらのホームに着こうとしている列車の4両目の真ん中あたりの窓から、オヤジとメガネ上司が 笑いながら話しているのが見えた…
ど…どうする…?!?