第67章「発表会④」
開会予定の午前十時がくると、クラブごとに縦に二列に整列した。美乃理たちもそれに従って真ん中からやや右側に寄った場所に並ぶ。
煌びやかなレオタード姿の少女たちが集う場は壮観だった。
大会の責任者と思しき壮年女性からの簡単な開会の挨拶が始まる。
「日頃の練習の成果を保護者の皆さんにみてもらえる今日の発表会を迎えたことに私たちコーチ陣一同喜ばしく思っております――」
開会の挨拶を訥々と述べる。
設けられた観客スペースはその保護者たちでひしめいていた。
(どこにいるのかな……)
忍の家族は観客席のやや奥まったところだが、一番前の列に陣取っていた。父親と母親、そして兄弟、祖父母まで来ている。
美乃理の母も、すぐ近くにいた。
一緒におしゃべりでもしてるのだろうか、隣には忍の母もいる。
ひそひそささやきあっている様子が伺えた。
若干の来賓紹介の後、会場の諸注意があった。
「ではつづいて地区の新体操クラブのとりまとめと、大会の実行委員を務める……ご挨拶を」
いくつかのクラブのコーチたちがやっているようだった。
どこかの団体のお偉いさんの挨拶が続く。
退屈そうにキョロキョロしている子やあくびする子もいた。だが、美乃理は興味深く聞いていた。
どうも雰囲気的に、花町クラブは新設のクラブのようで、有力で伝統のあるクラブがまた別にあるようだ。
この町の新体操の事情も脳裏に刻み込まれていく。
やがて挨拶が一通り終わり、開会が宣言される。
一旦集った子供たちはクラブ毎に散っていき、ホールの中央では舞台の準備が始まる。
「みんな集まって」
柏原コーチが手をあげてクラブ生を呼び寄せる。




