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第63章「稔(みのる)と敦子と柔軟体操」

 正愛学院高校特進科の休み時間は、静寂に包まれていた。

 次の英語の小テストのための準備に勤しんでいるためだ。

 受験に特化したこのクラスは課題、宿題が多くまた定期テストに加えて小テストも多い。

 月末にはそれらの結果を纏めてグラフ化させたものが生徒に配布させられ、自分の成績、順位を突き付けられる。

 授業の進度も早いので、手を抜くと置いて行かれる。

 休み時間も、それをこなすためにノートや教科書、参考書を開いている生徒がほとんどだった。

 少しの時間も惜しんでテストに備える。

 そのせいで、休み時間も他のクラスのような騒めきは無く静かだった。

 勉強に明け暮れ、部活をやっている生徒もほとんどいない。

 厳しい学校の授業に加え夜遅い予備校通いする生徒も多く眠そうにあくびをする生徒も目に付く。

 そんな10代の青少年たちが集まる空間の静けさを打ち破るように、綺麗な声が響いた。


「ねえ、御手洗君ってどこかしら?」


 一瞬クラス中がさらに静まりかえる。

 そして教科書に目を落としていた生徒達は顔を上げ、入り口に視線を向ける。

 ぼんやり机に肘をついて窓の外を眺めていたみのるもはっと、振り向いた。


「え? 御手洗? あいつならあそこにいますよ」


 一番近くにいた生徒がみのるの方を指さす。


「あ、いたいた。ありがとう――」


 その生徒は稔をみつけると、悠然と特進科教室に入りみのるの方へ颯爽と向かってくる。

 教室中の視線が敦子に集中する。

 何せ――ほとんど男子を占める特進科の教室に他の科の女子が入ってきたのだ。

 しかも、入ってきた女子生徒は清水敦子、正愛学院高等部英語科の二年生――そして新体操部のエースだ。新体操部のことは詳しく知らなくても、部長と清水敦子のくらいは知っている。それくらい正愛の生徒達の間でその名は通っていた。


「すげえ美人……」

「清水敦子だ」


 制服であるブレザーにプリーツスカートが揺れる。短く感じるのは、ミニスカートだからではなく脚がながいから――。

 いかにも運動をやっている引き締まった体つきは、レオタードを着ていない今の制服姿からもあふれ出ていて、その醸し出す雰囲気はまるっきり特進科の雰囲気とは違っていた。 

 クラスの生徒たちはノートや参考書から目を離し、教室に入ってきた敦子を暗い穴蔵に舞い降りた天使のように、魅入った。 

 窓際の席のみのるへ一直線。迷いもなくその目の前へ立った。


「よ、稔」


 そして手をひらひら振る。


「あ、は、はい! なんですか? 清水さん」


 肘をついてぼんやりしていたみのりも慌てて頬づえを直し、背筋を伸ばした。


「部の備品の会計に訂正があって、この書類作り直さないといけないんだって。後で生徒会への提出、お願いね」


 そして目の前に一枚の紙をおいた。


「わ、わかりました……清水さん」

「そんな他人行儀でなくてもいいのに。同じ学年なんだから、ため口でいいくらいよ。じゃあお願いね」


 用事はそれだけですぐに敦子はでていった。

 皆、名残惜しそうに、天使が出て行くのを眺めていた。

 だが、その後は稔には居心地の悪い時間だった。

 特進科の教室でヒソヒソ……ただし稔に聞こえるくらいの大きさで囁きあっていた。


「なあ、聞いたか?御手洗って、最近新体操部に出入りしてるらしいぜ」

「ああ、俺も知ってる。練習場所の体育館第2ホールに入ってくところを見た奴がいるんだって」

「それもさ、さっきの英語科の清水敦子や三年の部長高梨礼華と一緒だったんだぜ!」

「清水と高梨って、あれだろ! この学院でトップクラスの美女って」


 男子がクラスのほとんどなので、勢い声も徐々に大きくなる。

 居心地は一層悪くなった。


 半月ほど経った頃、みのるが新体操部に出入りしている噂は徐々に漏れ始めていたのだ。

 一度噂になるとすぐに消えるというわけにはいかなかった。早速男子たちの間で、みのるのことの話が盛り上がる。

「新体操部って男子禁制だろ!? 女の園じゃねえか!」

「どうやって潜り込んだんだよ!」

「御手洗のやつ、俺にもどうやったか教えろって」

「聞いても教えてくれないんだよ。あいつ。先生に言われたかなんとかみたいでさ……」


 中には直接聞いてくるクラスメイトもいた。

 その場合は隠しようがないから、「ちょっとわけがあって」とか当たり障り無く返事をした。

 万引き云々の話は漏れておらず、先生も新体操部の女子たちも黙ってくれているようだ。

 だが好奇の視線は向けられた。

 女子新体操部に男子のみのるが出入りしているとなれば当然ではあった。

 またカリキュラムの厳しい特進科で、勉強漬けといえど、異性への興味は年相応の少年たちと同様だ。

 否応無く有象無象の噂が教室に、静かにはびこっていた。


「すっげー! 俺も先生にお願いしてみようかな。御手洗だけずるいってさ」

「馬鹿、勝手に部外者が練習場に入っただけで、すっげー怒られるんだぞ」

「御手洗がうらやましいぜ」

「そうそう、俺達にもいい思いさせろってな」


 やたらといじられるのは受験と成績が必須命題の特進科にあって成績下位のみのるの立場が低いことも要因にあった。

 成績が低いことを跳ね返すだけのものも、みのるには無かった。

 築いてきたもの、培ってきたもの。

 自分自身が受験一本に重きを置いてきたために、それを失ったみのるには、力強く立っていられる支えがなかったのだ。

 ひっそりとクラスの片隅で身を縮める。

 このクラスでの状況がみのるの中学から高校での約五年半、流れた時間だった。

 それを取り戻すために今三日月先生の指導で新体操部に出入りしているのだが。

 教室には稔の気持ちをくみ取ってるれる、親友がいなかった。

 対する清水さんは――みのるは思い浮かべた。

 英語科。クラスは女子が多い。普通科とほぼ同等のカリキュラムながら英文系の科目が多く、海外の学校と交流や研修もある。

 持ち前の陽気な性格と文武両道。生徒に人気なのも当然だった。

 不釣り合いと思えた。新体操部の仮部員なんて立場でなければみのるとは接触はなかっただろう。


「何度かすれ違ったけど、あのボイン、すっげーくるよなあ」


 教室の男子の一人は、両手で胸のあたりを手で支えるようなポーズをしながら――

 男子が八割以上を占める特進科では、こと異性のことに関して話がおおげさになりがちだった。

 それを聞いてみのるは不快になったけれど――


「そうそう、それにあの引き締まったケツ」

「俺は太腿が最高だぜ」

「やめとけ、やめとけ、変質者扱いされるぞ」


 イメージをすると急に胸が――というか体が熱くなってきた。





「御手洗君! 今日もよろしくね!」

「よ、よろしく……お願いします」


 たどたどしい声でみのるは返事をした。

 新体操部の練習は今日も活気があった。静かだった体育館の練習場に女子生徒達の声が響き、明るさに満ちていく。


「お、今日も来てるね、みのる


 清水敦子もちろんいる。みのるをすぐに見つけた。

 下の名前で呼ばれることに、やや戸惑いを覚える。

 いつの間にか名字ではなく、名前で呼ぶようになった。


「よ、よろしくお願いします」

「なんだ、相変わらず他人行儀だねえ」


 制服からジャージに着替え準備が終わった後、軽いストレッチをめいめいで始める。

 上から指示されるまでもなく、何人か集まった時点で、各自が自主的に初めていく。

 上半身を反らせたり、屈伸、下半身足を180度に開脚させて前後に体を折り畳んだり。

 イチ、ニ、サンとか掛け声を合わせる。

 本格的な練習に入るまでの入念な準備体操は、それだけで多くの時間を費やす。

 既に汗が滲んでいる部員の子もいた。

 ただ横でみているだけのみのるでも、その雰囲気に気分が高まっていく、この時間がたまらなかった。

 かけ声にあわせた、入念な準備体操。

 それが終わるといくつかのグループに分かれてそれぞれの練習課題に移る――。

 やることは沢山あった。それを一つづつ着実にこなしていく。


「ちくしょう、なんなんだよ……」


 みのるは頭を振った。

 クラスの男子たちの会話がきっかけになったのだろうか、その日は練習を見学しようにも妙に胸がドキドキした。

 今までは万引き事件の尾を引いていたことや、新体操部の熱気に圧倒され魅入ったために、そんなことを考えるような気持ちが起きていなかった。

 過ちから立ち直り、もう一度自分を見つめ直す。

 そのことに集中していた。

 だが、今確かに自分の中にある男の部分が急に頭をもたげてきている。

 そんな気持ちで先輩たちはじめ部員をみるのが、あまりに心苦しくて、正視できなかったのだ。

 そしてそんな目でみる自分に嫌悪も感じていた。


「さっきから何うつむいてんのさ、みのる


(こういう時に限って、敦子さんは僕に構ってくる)

 特に敦子はみのるの思考を読んでいるのかと疑うくらいに男子高校生、みのるの心情を理解する。


「べ、別になんでもないです」


 敦子に背を向けた。

 だが、それがかえってみのるの気持ちが揺れていることを彼女に気づかせてしまった。

 試合が近いこともあって、今日の敦子は練習用のレオタードに着替えている。

 練習用とはいえ、その姿はとても綺麗だった。


「ははーん、あたしたちのこれにちょっと熱くなっちゃったかな?」


 わざわざレオタードに付いているスカートの裾をつまんでみせた。

 急にみのるは、休み時間での会話を思い出してしまった。

『清水敦子の胸、いいよなーー』

(う……)

 目の前の敦子の体が脳裏に焼き付けられていく。

 慌ててまた眼をそらした。

 男の生理現象がばれないように股間を気にした。胸がどきどきと鳴り、血流が増す。

 敦子にはばれないように……とみのるは必死で気持ちを押さえようとした。

 だが、そのぎこちない様は清水さんにはお見通しだったようだ。


「君もおとなしそうな顔してるけど、男の子だもんねえ。そういうのにここが熱くなっちゃうのもしょうがないさ」


 にやにや笑いつつ、股間を指差して稔を煽る。


「ば、馬鹿にしないでくださいっ」


 言い当てられていることもあって敦子の言葉を遮ぎった。

 またこういう時に限って、制止役の部長の礼華がいない。

 清水敦子が暴走している時に止めてくれるのだが――


みのる、ちょっと来なよ」

「あっ、ちょっと……」


 敦子にぐい、と腕を引っ張られた。


「こっちこっち」

「でも……」


 何をされるのかわからない。


「取って食うわけじゃないから、ついてきな」


 そこは新体操部の部室兼更衣室だった。

 みのるも物品の管理のため入ることを認められているが、さすがに着替え中は入ることはできない。

 誰もいないことを確認して、ドアをあけてみのるを引っ張り込んだ。


「えーっと、どこにあったっけ。卒業した先輩が置いてったやつ……」


 しばらくロッカーをガサゴソした後、「あったあった」と言いながらみのるにあるものを差し出した。

 ポンと渡されたのは、一着の上下のジャージだった。


「身長大きめの人が使ってたジャージさ。これに着替えなよ、みのる

「え? だって僕は見学のみって……」

「まあ、それなら男子のみのるも着ることができるだろう」

「で、でも……」

「体を動かさないで、悶々としてるから余計な雑念が起きるのさ。礼華部長もそこのとこがわかってない。おっと、でも元気ってことは稔が健康な男子であることの証かな?」

「もう……」


 調子は相変わらずだった。


「一緒に練習やろうよ、みのる

「え? で、でも……」

「さあさあ、早く着替えなって」


 拒否しようとも思ったが、敦子の強い瞳に促され、やむを得ず着替えた。

 おそらくふざけて言っているわけではないことをみのるもなんとなく感じたからだった。

 みのるは学生服のボタンに手をかけた。

 みのるのトランクスと上半身裸姿でも清水さんは動じなかった。


「そんなの見えたって気にしやしないよ。あたしにはうちに兄貴と弟が四人いるんだから」

「で、でも……」


 逆にみのるが気を使って後ろを向いて着替えた。

 やや小さめだったが十分着ることができるサイズだった。


「よし、準備完了だね」


 そしてみのるの腕を掴んで再び練習場へと引っ張った。


「この辺りでいいかな……」


 練習場に戻りちょうど他の部員の邪魔にならなそうな場所を見つけて、そこに陣取る。

 敦子は、ハーフシューズを脱いで裸足になった。



「ほら、ここに座って」


 敦子に促され、横に並び床に直に座り足を伸ばす。

 敦子は女子の中では大きい方だ。

 一方稔は中から下。チビとは言われないぐらいの身長。

 身長は敦子がやや小さいぐらいだった。

 だがこうやって間近で体を揃えて並ぶと、足の大きさも脚の細さも全然違っていた。

 男子と女子の違いがはっきりとある。

 

「最初は下半身と足から」


 敦子はその小さな足を使ってみのるに見本を見せる。


「ほら、こんな感じで足のつま先を伸ばしたり」


 足首の運動だった。足を開いたり、閉じたり、つま先を伸ばす。


「これぐらい簡単だろ?」


 みのるも真似をする。


「お、いいね」


 からかわず、稔を褒める。


「まずはストレッチからだよ。新体操は柔らかい体が一にも二にも必要だからね。まずは体を作り上げるのさ」


 足を伸ばして体を倒す。

 みのるもそれを見て体を倒した。

 それを何度か繰り返す。


「ほら、そんな背中を丸くしたらだめだよ。背中をぐっと伸ばして――」


 早くも敦子さんから細かく指示が飛ぶ。


「つま先はピンと伸ばしたまま。だらっとさせちゃ駄目」


 稔も一々指示に従う。


「そうそう」


 確かに見本をみせる敦子は足も背筋も綺麗に伸びている。


「ほら、脚が曲がってる。きちんと伸ばして!」


 足の次は脚の柔軟だった。


「右足を持って、そのまま伸ばしてみるんだ」


 ストレッチ1つとっても、敦子がやるとどれも綺麗に決まる。

 両足を開いて柔らかくペタンと床にくっついた。

 みのるもそれに続く。

 いつの間にか他の新体操部の子も、興味深く見ている。決して笑ったりはせずに、二人の様子を見守っていた。

(見られてる……)

 注目浴びるのは恥ずかしいが、同時に自分がここにいることを認めてくれているようで嬉しい気持ちもあった。


「お! 凄い! 開脚と前屈がいきなりできるなんて、あんた素質があるじゃん。ただのガリ勉君じゃなかったんだね」


 普通はすぐにはできない。柔軟を毎日やって徐々に体を柔らかくして、できるようになるものらしい。


「凄い、御手洗君!」


 見ていた周りからも誉めそやされる。


「わ、凄い」

「あの子もやるじゃん――」


 小さな拍手と感嘆の声を耳にすると悪い気はしなかった。

 下半身の入念な柔軟の後、さらに上半身の柔軟体操へ移る。

 清水さんの一、二、三、四のかけ声にあわせて上半身を倒したり起こしたり、捻ったりする。

(こんなに大変なんだ……)

 稔は実感した。

 ここまで真剣にそれも柔軟をやることはなかった。

 いつの間にかみのるに汗が滲んだ。

 気がつくと、練習場にやってきたときの心の火照りや妙な感情は消えていた。

 一緒に練習をしたことにさわやかな心地を覚えていた。


「ふう、はあ……」


 一通り終わった時にはみのるはすっかり息が切れていた。

 いつになく汗をかいた。普段運動をしていないために余計に大変だった。


「御手洗はスタミナ切れかい? じゃあ、少し休憩しなよ」


 一方敦子は全然平気な様子だ。

 さらにこれから大会に向けての練習を始める様子だ。

 一体どれだけ体力とスタミナが鍛えられているんだろう。

 見てるだけではわからない敦子たち、そして部員の皆の凄さに気がつかされた。


「あれ? 御手洗君?」

「あ、高梨部長――」


 練習場の入り口をみると高梨礼華がいた。


「そのジャージ……」

「部室にあったのを貸したんです。見てるだけじゃ体が腐るって」

「もう、敦子、三日月先生から御手洗君の扱いは慎重にっていったでしょ!?」

「ごめんなさい」


 礼華は愚痴を言いながらも、みのるの目をじっと見つめた。


「でも……今日は御手洗君の目、とても澄んでる。ありがとう、敦子」

みのる、結構いい線いってましたよ――体も柔らかいし瞬発力もあるし」

「え? そうなの? 凄いね」


 練習の成果を敦子は部長に報告する。ここが良かった、あそこも上手。あまり褒めるので稔はむず痒くなった。


「た、ただの柔軟ができただけです」

「いや、それが一番大事さ。これで本当に新体操ができたら、凄い大物になれるよ」


 敦子はさらに誘惑する。


みのるが本当にうちの部員だったら……いい部員だったと思うんだけど残念だね」

「そ、そんなこといても僕は、その……女子じゃないし……」

「その能力で女子小学生ぐらいからやってたら相当なレベルに行ったと思うんだ」

「んー残念だなあ。色々教えることができたのに」


 変な言い方だと思っていたけれど単なるほめ言葉であんなことを言ってるんだとみのるは聞き流した。


「それでどうだった? 新体操をやってみた感想は?」

「た、楽しかったです……それにさわやかで気持ちいいです」

「そうだね、でもさらに先の世界に行けたら、もっと気持ちいいのさ」

「世界……ですか?」


 みのるが正愛学院の新体操部で一緒に練習ができた最初で最後の日だった。






 その先の世界に行くことはないと思っていた。けれどもみのるは――

 こうして美乃理として今ここに、その先の世界へ行こうとしている。


「あら、美乃理またやってるのね」


 夜、夕食を取り入浴を済ませた後に、一人一階の洋間で柔軟の練習をしている我が子の様子を母親はこっそりと覗いた。

 ときおりトントンというステップの音が漏れてきていて、その音に引き寄せられた。


「あ、母さん。ごめん。ウルサかった?」

「ううん、いいのよ」


 宿題はやったの? と言いそうになったが、恐らくきちんと済ませているだろうことと、練習に取り組む娘――美乃理の顔をみて、水を差すのをやめようと思い言葉を止めた。


 一方美乃理は思い出す。床に座って足を伸ばす下半身や上半身の運動。

 あの時清水敦子が教えてくれた体を柔らかくさせるための柔軟を。

 学校でも休み時間にこっそり忍と振り付けや動きの練習もしている。

 そして家にいる今も。

 今はあの時小さいと思った敦子よりもずっと小さな体と足で。

 礼華先輩や敦子はいないが美乃理が新体操をしていることは確かだった。

 また一緒にやることになるのだろうか、今度は同じ部員としてやれるのだろうか。

 まだ先は長い。


「もうすぐ発表会ね、美乃理」


 一心に練習をする美乃理に母親が囁いた。

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