第43章「美乃理(みのり)と学校の放課後」①
意識してそうなったのではないが美乃理が普段学校で付き合うのは女子であることが多くなった。
最近はさらに二人と親しい吉村美佐や班員の村田とも会話するようになり、今日は小林とも話をした。
きっかけは三時間目と四時間目の間の休み時間の時に「美乃理ちゃん、最近新体操始めたんでしょ?」と向こうの方から話しかけてきた。
美乃理が新体操を始めたことは、既に一年2組の女子たちの間では広がっていた。
そしていくつか質問を受けた。
週に何回か通っているのか、どんな練習内容なのか。どんな子たちがいるのか。レオタードは実際着て可愛いのか。
こと同じクラブ生たちの仲間ができたことを知ると、興味深げに頷いた。
また横で聞いていた忍も話に加わる。
「美乃理ちゃん、すごく上手にできるんだよ。足も一番高くあげれるから、他の子のお手本にされてるの」
美乃理をほめそやすので、恥ずかしかった。
「みのりん凄いじゃん!」
小林は、羨ましさを隠そうとしなかった。
自分は書道や塾に通っていて行く時間がないとのことだった。
女子のおしゃべりは続く。
吉村さんが、お母さんの化粧台をいじって叱られた話で盛り上がった。
口紅を使って酷くしかられたらしい。
「うちもあたしには触らせてくれないのよぉ」
嘆いたさやかに、周りの子もずるい、ずるいと同意した。美乃理も話にあわせた。
その次の休み時間は伊山さんが、兄と喧嘩した話で盛り上がった。
伊山さんに兄がいて、その兄とゲームや漫画を取り合った話しだった。
最終的には母の「お兄ちゃん、我慢しなさい」で落ち着いたようだ。
「妹のくせに生意気だ」っていったから「1年先に生まれたぐらいで偉そうにするな!」と言い返したらしい。皆どっと笑ったので、美乃理もつられて笑った。
伊山さんに兄がいることを知ったのも初めてだ。
昼休みにはドッジボールに興じた。
健一たちの提案で、クラスの半分以上が集ってドッジボールを遊んだ。
珍しく男子と女子一緒に遊んだ時間だった。
「御手洗もやるよな?」
「もちろんっ」
美乃理にも声がかけられた。
久々のドッジボールはそれでも楽しむことができた。
「美乃理ちゃん!」
他の子の投げたボールを上手くキャッチ。
そのまま体を滑らせて放り投げる。
ボールの扱いが前よりもこなれた感じがする。受け止める時に衝撃を吸収。
自然に新体操の動きが出てしまった。
そしてポン、と投げる。
「それっ健一」
威力は小さいものの素早い動きに健一にあたった。
「やったな、御手洗」
キャッチできずアウト。
その後健一の集中攻撃を受けたが華麗に交わし耐えきった。
美乃理も稔も関係ない。
そして帰りのホームルーム。
「起立! 礼!」
「さようなら!」
日直の忍の帰りの挨拶の号令と共に皆の声が教室に響く。
椅子を引く音。
ほどなく、がやがやと喧噪が始まる。
「あとで遊ぼうぜ」
「木下、あとで公園に集合だ――」
時折親しい者同士の会話が聞こえる。
「美乃理ちゃんも一緒に来ない?」
ランドセルを背負った美乃理に声がかかった。
「え?」
声のした方向を向くと、吉村さんと何人かの女子が集っていた。
「今日、あたしたち一緒に家で遊ぶんだ」
「あ、でも今日は……」
「そっか、新体操のレッスンだっけ?」
「じゃあ、また今度だね。頑張ってね」
吉村さんたちは残念そうに帰っていった。
(初めてクラス女子から家に遊びに誘われた……)
徐々に自分がクラスの女子の入っていく。
上手くできなかった稔と違い美乃理は確実に小学一年女子としてステップアップしていることを感じた。
「ほら、他の学年の教室で授業をやっているから、おしゃべりは駄目よ!」
担任の斉藤先生の声が轟いた。
小学校での1日が今日も終わりを告げた。




