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第115章「合宿④」

 初日がようやく終わる頃には別々だった王鈴と正愛の生徒が、徐々に一緒に会話を交わしながら、練習と片付けに取り組む光景が見られた。

 当初は不安と期待混じりの手探りであったが、各自が確実に手応えを感じていた。

 短い入浴後、準備ができた者から食事となる。

 美乃理も短パンとTシャツのラフな姿で食堂に向かうと、まだ廊下を歩いているうちから賑やかな声が聞こえていた。

 果たして他のスポーツ合宿に来ているグループも併せて、食堂はいっぱいで、盛大に賑わっていた。

 全て中学高校、大学の女子であった。

 厳しい練習を終えた解放感と充実感で、楽しい会話が繰り広げられていた。盛んなおしゃべりと笑い声。

 セルフ形式で並んで受け取った後、各自空いているテーブルをみつけて座る。

 合宿、研修用の施設なので豪華ではない分、十分な広さを備えていた。


「しっかり食べなさい。明日はもっと練習はあるんだから」


 運ぶ途中、高梨部長が先に座っている部員に声をかける。


「はーい」

「わかってまーす」 


 自然に仲良くなった正愛の生徒と王鈴の生徒たちが交わって席に着く。

 空いている席を見つけて美乃理と高梨部長が隣り合って座っていると反対側から神田亜美と早坂真由美がやってきた。

 揃って王鈴のロゴの赤い刺繍が入った水色のTシャツ姿だった。


「ここ、いい? 美乃理ちゃん」

「うん大丈夫だよ」


 持っていたお盆を反対側の席に座った。

 早速食事に手を着けながら、会話をする。


「デザートまで付いてる、嬉しいなあ」


 お盆を置いて、箸を取る。小皿につけられていたメロンを手にして笑顔をみせる。


「きちんとメニューを考えて作ってもらってるから遠慮せず食べていいのよ」


 体重を気にする余りに、栄養補助食やサプリメントだけで過ごそうとして体に無理をさせる子もいるから、食事のお手本をみせるのも目的にある、との高梨の説明も付け加えられる。


「練習だけが目的じゃないんだって」


 ほんの少しの体重差でも、体の動きが変わり、手具の重みも違ってくる。

 自然、話題も食事に関することも多くなる。


「うちは一週間に一度体重測定して管理してるんだ」


 王鈴では週に一度、体重測定を必ずやるということを聞いて驚く正愛の生徒たちがそこかしこに見られた。


「先輩、お茶を持ってきましょうか?」


 気を利かせた好子がテーブルに声をかけてきた。


「ありがとう好子ちゃん、お願い」


 好子はだいぶ絞られた体になったがそれでもまだまだふくよかな方であった。もうしばらくの時間が必要だった。

 美乃理が亜美と真由美に説明をした。とても頑張り屋だと。


「正愛はやっぱり凄いなあ……」


 多分有名な学校の新体操部では好子は入部の段階で弾かれてしまうかもしれない。

 懐の広さに目を見張った。

 部長の鋭い視線は生きていた。その生き生きとした瞳に気付いた。あの目は、部で除け者にされているわけではない。


「うちの学校の子も正愛を見て刺激受けてるわ。目の色が違うって勢いがあるんやなあ」


「王鈴の規律正しい練習、すごくうちなんか、ほうっておくとすぐばらばらやり出すから、自由にさせすぎだからいい薬になったわ」


「お互いがありのままに力を伸ばしあうって美乃理ちゃんといたクラブ時代を思い出すね」

「うん、そんなこと考えていなかったもん」

 隠したりはせずに全力でぶつかりあった。

 最高の環境だったと思う。


「去年からですよね、この合同合宿、ねえ、高梨先輩」


 美乃理も会話に加わる。


「ええ、そうね、私が正愛に入った時には、まだなかったわ、合宿はあったけれど、もっとこじんまりしてた」

「合同合宿の形式になったのは、もっと上の働きかけよ」

「体操協会――のですよね」


 美乃理も聞いた話をすると皆が頷いた。周知の事実ではあった。


「でも……逆に、月見坂学園は今回は欠席だからねえ、はあ……」


 高梨のため息に亜美も同意する。


「残念だよ……、せっかく月見坂の麻里ちゃんにも会えると思ったのに」

「月見坂は、あそこのコーチはちょっと頭の固いところがあるらしい」


 真由美は少し声を潜めて四人に囁く。


「麻里ちゃんにも会いたかったな……」


 美乃理も呟いた。

 話が昔のことになると自然、亜美といた花町新体操クラブ時代のこと話題に上がる。

 亜美が穿いているジャージのポケットをごそごそした。

 取り出してなにやらスマホを操作し始める。


「ほら、まだあるよ」


 スマホを取り出して画面を美乃理たちに見せた。


「ああ、懐かしい」


 他の者ものぞき込む。


「うわあ、昔も可愛い綺麗やったんね」


 真由美が驚いた。


「ほら、美乃理ちゃん、この画像、覚えてる?」

「懐かしいな……リトルクイーンカップ……の時だよね」

 

 画像ではお団子頭の美乃理が煌びやかなレオタード姿でトロフィーを持っている。

 少しはにかんだようだ写真向きの笑顔。

 背後には整列している同じようなレオタード姿の少女たち。

 遠くに観客でいっぱいの客席、やや光っているのはフラッシュが一斉にたかれているからと思われる。

 美乃理の両脇には亜美、麻里の三人が揃いのレオタード姿で、写っている。

 真ん中に美乃理が一段高い場所に立っていてトロフィーを持っている。


「前から御手洗さんは可愛いかったねえ……」


 真由美は覗きこみつつ、スマホを渡した。


「あ、横に亜美もいるじゃん! この頃からVサインして笑う癖があったんだ」


 亜美はおきまりのポーズがあった。


「美乃理ちゃんが優勝して、わたしが準優勝で右にいる麻里ちゃんが三位だったんです」

「凄いわ、表彰台独占かあ。麻里って月見坂の朝比奈麻里やろ、うわオールスターじゃん」


 スワイプしてみた写真を見て感嘆の声をあげた。

 

 その他にも180度以上に開脚した大きなジャンプや、笑顔のままリボンやボールと戯れるように舞う華麗な画像が映し出された。

 その多くは美乃理や麻里たちと共にいる写真だった。


お風呂シーンはカット。まあ今更。

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