訓練から
神崎が刑事になって3週間が経過した 相原に命じられて毎日欠かさずしている練習のおかげで
神崎は全体的に高度な能力を身に付ける事が出来た。それを見た相原は神崎に射撃訓練を始めた。 射撃訓練とは数十メートル離れた的に
正確に撃つ訓練で新人刑事を悩ます壁とも言えるだろう。 相原は取り合えず神崎を射撃室に呼び寄せた。 コンクリートの壁が部屋を被い尽くしている。部屋には鉛のニオイが
かすかに漂っていた。相原は5つある的の中の3番を選び神崎を連れて行った。
全ての場所には仕切りがあり流れ弾を防ぐ役割をしている。 相原が連れて行った3番も同じような造りになっているが、流石に人二人分入るのは厳しかったので、最初に相原が手本を見せるということになり神崎が後ろで見る形をとった。 相原はその場の机に
置いてあった拳銃『サムライエッジシ』を手に取り弾をマガジンに詰め込んだ。
サムライエッジシとはイタリアが生産国の拳銃『ベレッタM92』をカスタム・アップした物である。日本刀の刃を連想させる『スライド』が特徴である。
そして、的をじっくりと見つめ狙いを定め引き金を引いた。サムライエッジシから放たれた弾は電光石火のごとく一撃で的の真ん中を捕らえた。そして直ぐに狙いを定め思い切り弾を放った。弾は一気に前とは変わらず真ん中を捕らえた。これを見た神崎は唖然としてその場に立ち尽くしていた。それを見た相原は軽く笑い、こんなのは慣れだよと言い
神崎にサムライエッジシを渡し後ろへ下がった。そして相原に、やってごらんと言われ
的の直線状に立った。そして、相原と同じ手順で弾を詰め込んで、的に狙いを定めた。
サムライエッジシの重みと実戦の緊張感が神崎の心を委ねる。軽く深呼吸をして引き金を
軽く引いて見せた。弾は神崎が狙った中心部を大きく逸れ床に当たった。
-何故だ今のは標準も逸れていなかったのに。
「手が震えて標準が逸れているぞ」
相原が神崎の心を読んだように呟いた。神崎は自覚した。自分がこの人生の中で銃を
握ったといえば試験の1度だけである。しかし、何故こんな事が分かるんだ、 神崎はもう一度 サムライエッジシを構えた。震えで サムライエッジシがずれないように慎重に
標準を合わせ引き金を引いた。 銃は中心部を逸れ的の下方に当たった。
ー 何っ!、2回目で的に当てたというのか!
あの浅倉さえで2桁位の弾を使ったというのに
コイツ・・・・・・・
相原は神崎の背を見ながら驚愕した。神崎はマガジンに残った最後の弾を放とうとしていた。前にやった通り慎重に標準を合わせいざ、放った。 サムライエッジシから放たれた弾は一直線にさっき相原が当てた風穴に入り込んだ。余りにも偶然に神崎はガッツポーズを相原にして見せた。その後神崎はその場に有った弾が無くなるまで射撃練習を
した。 1発目と2発目意外全て弾は中央部を捕らえた。正に神技と言っても良い位だ。
これを見た相原は直ぐに浅倉に連絡を入れた。信用していないのか浅倉は態々練習を
見に来たが結果は変わらず全て中央部に当てるという結果になった。それを見た浅倉は
ガッチリと神崎の手を握り締め、おめでとう、明日から捜査官として動いてもらうよと言いそこから立ち去った。この瞬間神崎は捜査官として認められた。喜んでいる神崎に相原はこう言った。
「話がある・・・・・・・」