05 ハルのおねだり
※ご注意ください
相手は竜ですが、たぶんR12くらいだと思います。
ミッションはコンプリートされなかった。
そして―――私のパジャマは血に濡れた。
ハルの凶悪な一言によって。
もじもじとしたハルが、うるうると潤んだ瞳で恥ずかしげに呟く。
『・・・・・あのね、えっとね・・・?』
ちらっちらっと目を合わせては視線を下げるという大サービスつきで。
当然その様を記憶に焼き付けるようにじっと凝視し、瞬きすることすら最小限にした。
『さっきみたいに、えと、ミチルに・・・なめてほしい、な・・・』
できる?してくれる?とその海色の瞳からひしひしと伝わってくる。
それは“おねだり”と分類されるものだった。
無論、私の鼻は血を噴いた。当たり前だ!どこで覚えたんだそんなこと!!
無意識に顔をそらして鼻血をハルにかけるのは阻止できたが、私の左肩は悲惨だった。
ただでさえやや暗かった赤が、今は黒くさえなっているように見える。
もういい、ついでだと右肩で鼻血の残りを拭いた。
ほんとに舐めていいのか、いいんだね?ハルがお願いしたんだよ?
ふっ、ふっふっふっふっふ・・・!天は我に味方せり!!
荒ぶる鼻息をどうにか押さえつけ、ハルの体を持ち直す。
抱き締めていた体勢から、脇の下に手を入れて持ち上げた体勢に。
明らかに期待をこめて見上げる瞳が甘く揺れている。
どきどきしすぎて手のひらが汗ばむ。
そっとハルを引き寄せ、ほっぺに口を近づけた。
そしてぺろんと舐める。
じっくりハルの様子を観察しながら。
『ひうっ!』
短い悲鳴のようなものをあげて、ぎゅっと目を瞑り、一瞬全身を硬直させるとすぐにしっぽを振りまくる。
ぶんぶんと左右に振れるしっぽはけっこう速い。
どうだった?と目で問いかければ、ハルは嬉しそうに期待に満ちた目を向けてくる。
その間も振れるしっぽと表情で言いたいことは十分にわかっていた。
「どうしたい?」
答えなんてわかっていたけど。
その問いにハルは俯いて、どうしようかとても迷っているようだった。
『・・・も、も、もう一回・・・』
かなり悩んだのだろう。少ししてから上げた瞳が泣きそうに潤んでいる。
さらに引き寄せ、ハルの耳元で囁いた。
「もう一回、どうしたいの?」
『も、もう一回、なめて・・・』
とてつもなく恥ずかしいことを口にするように、ハルは今にも消えそうな声でそう言った。
自分の口元が笑みに歪むのがはっきりわかる。それでも。
ハルがそんな風にお願いをするからよ?と念を押して、もう一度、今度はハルの首を舐める。
―――ねっとりと。
『・・・きゃううぅ・・・』
今度は甘ったるい可愛い声でハルは鳴いた。
ハルの海色の瞳が細まり、腕を縮めて手が握り締められている。
長いしっぽがぴんと伸びて、小さな牙ののぞく口が少し開いたままだった。
手の中でぷるぷるとわずかに震えて何かに耐えるようなハルを見て、ごろんごろん身悶えたいのを懸命に堪える。そしてこの瞬間、心に誓った。
ハルを人前では舐めないと。