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ハルミチル  作者: ねむこ
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04 罠にかかった竜




『・・・キス?キスならさっきしたよ?』


とても不思議そうな顔で首を傾げるハルに、さっきのとは違うと言いかけて留まる。

・・・さっきのちゅーバレていたのか。

だが問題はそこではなかった。

ハルは勘違いしている。

本来ならここでやさしく訂正してあげるのが良心というものだろう。


ニヤリ。


「ハル、念のため、もう一度、しとこう?」


一言一言区切って強調する。

にっこり笑っておいでおいでと手招きする。

その手に誘われるように長めの首を下げてくるハルに泳いで近づいていく。

ハルの鼻先をなでなでしながら上唇と思われるあたりにちゅっとする。


ちゅっとした瞬間、たしかにハルは照れていた。


なんだかもじもじして瞳が潤んでいるハルは国宝級だと思う。

いいや、国すら超えたね。

世界の宝だ。


そこでふと気づいた。

この純粋培養純真無垢なハルがよく今まで無事だったなと思うと同時に、この純粋培養純真無垢なハルを数多の魔の手から守るのは私の役目ではないのかと。


ハルをなでなですりすりしながら、この大きな体ではどこへ出かけるにしても100%目立つと思う。

近所のスーパーに買い物にもいけやしない。


それにこの色。

どこの悪代官に目をつけられて攫われるとも限らないのだ。

そして夜といわず昼といわずあんなことやそんなことを・・・!

許せん!断じて許せん!!それをしていいのは私だけだ!!

悪代官お前は引っ込んでろ!お前には指一本ふれさせん!!

頭の中で悪代官を撃退してから、ハルの瞳を見つめる。


「ねえ、ハルは私より少し大きいけど、もう少し小さくなったりはできないの?

 こういうふうにハルを抱っこして散歩とかもしたいんだけど・・・」


誰かに攫われないためには最終服の中に隠すことも考える。

服の胸元から顔を出してるハル・・・うっ!かわいすぎる!!

ちょっと鼻息が荒くなってしまったが、どうにか心を落ち着ける。

少し考えていたようなハルの体がゆらりとかすむと、お座りして40センチくらい(しっぽ除く)の縫いぐるみサイズのハルが・・・ごくん・・・

凝視している間どうやら息を止めていたようで、大きく一呼吸するとそっとハルの両脇に両手を差し入れ目の前につれてくる。


粘っこいくらいうっとりと見つめてからゆっくり抱き締めた。


「・・・苦しくない?」


ドキドキしながら尋ねるとハルがふるふると首を振る。

うひゃ、くすぐったい!でも我慢!


『ぼくの体はこの大きさでも人間には傷一つつけられないから・・・

 だから、安心して好きにしていいよ?』


ぶっ!!

あ、危ない危ない・・・

そんな好きにしていいなんてそんな気軽に、えっ、あ、ちょ、ほんとに?


・・・だめだ!!


ハルはたぶん力の込め加減についてのみ言ってくれたに違いないのにいきなりそんなことしたらハルに嫌われてしまう。

もう少し、もう少しの我慢よ・・・

両想いになったら必ず・・・必ず・・・


・・・ちゅ。


ああっ!くりくりした瞳の誘惑に負けてしまった・・・!

こうなったら我慢なんて無理!無駄!無視!

ハルのおでこに再びちゅっとしてなでなですりすりしまくる。

あー、このフィット感もたまんない。

なんでこんなにぴったりなんだろうと思うくらい少し硬いハルの抱き心地は最高。

西洋風ドラゴンの宿命、お腹ぽっこりも少し控えめなハルは思っていたより軽かった。


これなら服の中から顔を出すハルができる。してみせる。

・・・服の中から顔を出したハルがこっちを見上げて小首を傾げる、なんて・・・

くーっ!こりゃたまんないね!!

自分の想像にでれんでれんしながら、ハルの背中やしっぽを撫でているとくいくいとパジャマを引っ張られた。


ん?と腕の中を見ればどこか恥ずかしそうにもじもじしているハルがいた。


これもまたよし!!

少々鼻息が荒くなってしまったが、ハルは俯いていたので気づかれていない・・・と思いたい。

そんなハルがちらっと上目遣いで目を合わせると両手の爪先同士をつんつんして・・・

だめ、鼻血出そう・・・!

でも今そんなものを見せればハルはドン引きするかもしれない。

気合だ!気合を入れろ!気合でのりきるんだ!

いや、気合じゃだめだ!ここは深呼吸だ!!


すーーーはーーーと意識して深呼吸を繰り返すと、いくらか治まった気がする。

よし。ミッションコンプリー!


少し気を紛らわせるために考えた内容は、この後無残にも打ち砕かれるはめになる。




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