03 目指せ両想い
よっしゃ!これはもはや美味しくいただいてくれといってるような展開ではないのか?
ハルに隠れてガッツポーズをとると、できるだけ真面目な表情をつくる。
「ハル、よく聞いてね?私この世界の人間じゃないの。これは確信があるから絶対よ。
つまり私はこの世界でたった一人ぼっちの異世界人なの。
そんな私だけど、私ハルと友達、いいえ、それ以上の関係になりたい・・・ハル?どうして丸まるの?
ま、まさか私のこと嫌い??それとも異世界人だからやっぱり気持ち悪いの??」
ああ、言ってて悲しくなってきた。
いくら竜でも未知の生物とは距離をおきたいと思うかもしれない。
年若いハルならなおさら・・・
丸まるハルに背を向け、しゃがみこむと右足の横にのの字を書く。
でもこれのの字になっていないと思う。
丸を5回くらいなぞったところで、ハルの苦渋に満ちた声に振り返る。
『ごめん、ミチル・・・』
やっぱりか・・・
いいんだいいんだー・・・ハルじゃない竜探して脅してペットにして
『ぼくのせいでミチルは、もう・・・家に帰れない・・・』
遠い目で何もないところを蹴っていた足を止める。
いま、なんて?
帰れない?家に?誰のせいで?ハルのせい?
「ハール?責任、とってくれるよね?」
うふ、うふふふふふ・・・
口元に力を入れても怪しい笑いは消せなかった。
人生初のプロポーズがこんな顔ではハルも嫌だろうに。
笑うならもっとかわいく笑って言いたかった。
『せ、責任?そりゃぼくだってできればミチルを元の世界に帰してあげたいけど、ぼく一人の力じゃ無理なんだ。ごめんね、ミチル、ぼくがもっと・・・』
しょんぼり落ち込んだハルの足にそっとふれる。
「違うよ、ハル。私が言ったのはハルが私の恋人になって結婚して夫になって一緒に幸せな家庭を築いていこうって話。もちろんハルが私を好きになってくれるように努力はするしたまに脅すけど当然最初の目標は両想いになることよ?」
少しひんやりする鱗にへばりつきながら頬擦りする。
きっとハルはお人好しなんだと思ってた。
石から竜になったときにすら顔から追い払ったり噛み付いたりの攻撃しなかったんだから。
そのうえ“自分のせいで”なんて私に言っちゃった日にはもうツケコマレルに決まってるのに。
わ た し に。
ふっふっふ・・・
やはりこれは美味しくいただいてくれといっている展開だったようだ。
あと一押しで近い将来の恋人&夫が手に入る。
しかもとっても素敵で性格も良い非のうちどころのない彼が!
・・・それにしても出会って半時間も経ってないのにプロポーズか・・・我ながら天晴れである。
ハッ!そういえばまだOKもらってなかった!!
浮かれるのはOKもらったその後だよ!バカ!!
くるりとハルを見上げてにんまりとほほえむ。
「さあハル、誓いのキスよ!」