16 ハルとの食事
会議室から出たところでギルドカードの提示を求められた。
まわりの人も求められてて、各々提示している。
私もカードを提示したところ・・・あれ?なぜかちらっと顔とカードを見られた。
感じわるーい。
むっとしたのがわかったのかギルドの人が石のようなものを取り出した。
それをカードにかざすと、カードの上にほわわーんとイスに座る小型化した私が浮かぶ。
素晴らしい技術である。
でもそんなの撮影された覚えがないんですけどね。盗撮だよ、それ。
まさかスカートの中とか見えないよね?
それにしてもみんな提示して素通りなのに一人だけ立ち止まってるのって結構目立つ。
だいたい疑われるようなこと何もしてないのに。
もしかして拾った他人のカード持ってると思われてるとか?
でもこんなの偽造し放題じゃないの?名前書いただけだし。
ギルドに入ればお得ですよって何人目かの鎧が言ってたから入ったのにさぁ・・・
しばらく確認していたらしい人から目の前にどうぞ、とカードが返される。
たぶん、入ったばかりの最低ランクが冷やかしかよとか思ってるんだ。きっとそうだ。ぺっ。
受け取ったカードをさっさとポケットに入れてギルドの建物を出た。
宿に戻って部屋で早めの夕食を食べる。
この世界のメニューは焼いたお肉とかゴルフボールくらいの蒸かしたお芋とかスープとか、そんなどこか見たことのある素材の味を生かすような料理ばかりだった。
二人分のメニューが並んだ丸いテーブルの上にハルが座り、真剣な表情でお皿を見ている。
ああ、とっても癒される・・・
小さな手で慣れないフォークを使ってお芋を刺そうとしてる姿ったらもう!
何度か失敗してやっとお芋をフォークの先に刺し、でも何度もつついていたお芋はぽろぽろと砕けてしまった。
あー!みたいな顔をしたハルに表情に出さないように悶えまくる。
隠そうとしても口元はニヤついているけどそれは仕方ない。
黙ってお皿の上で砕けたお芋をじっと見てるハルは撫でて抱き締めて頬擦りしたいくらい可愛かった。
まあ、やったけど。
腕の中にいるハルの前に、私のフォークに刺したお芋を差し出す。
うるうるした瞳で見上げてきて、しょぼんと項垂れた。
『不器用で、ごめんね・・・?』
「うううん!そんなことない!最初より断然上手くなってるし、ハルはそのままが良いんだから!それにハルにあーんができる楽しみが無くなっちゃうじゃない?」
笑顔でハルを覗き込み、ね?とほっぺにキスをする。
『ぅん、ありがと。そ、それじゃあ・・・』
もじもじと見上げあーんをするハルにお芋を入れてあげた。
交互に食べて最後にデザートのチーズケーキも食べる。
ふー、今回も悶え死ぬかと思った。
食後の一息をついて、今後のことを考える。
フレイムドラゴンの討伐までまだ日はあるし、先に謝りに行ってその時できれば血もちょっとわけてもらって、ついでに出て行ってもらえたら万々歳なんじゃない?
フレイムドラゴン側の理由はまだ聞いてないけど、人間側のはわかったし。
昨夜の草原のもう少し遠くにあるらしい岩山付近に住み着かれたせいで、そこで鉱石が掘れなくなったとか。
だいたいはその手前の何とか平原にいるらしいから、探すならそのへんからかな。
抱っこしたままのハルを見れば、胸に縋るようにしてぴすぴす寝息をたてて眠っている。
ふっふっふ!こんなこともあろうかと鼻栓をして鼻血対策はばっちりよ!
ちょっと漏れたけど・・・