14 初めての夜
※ご注意ください
相手は竜ですが、たぶんR12くらいだと思います。
ついにこの時がやってきたのね。
ハルと出会って初めての記念すべき夜。
それを宿の一室で過ごすことになって、街でも大きな五階建ての建物に入る。
だがしかし!残念なことにここにスイートなんてものは存在しなかったのだ!
仕方ないので最上階の角部屋を頼む。
ハルを抱っこしたまま部屋に入り、即座に鍵をすると室内を見回した。
10畳ほどの広さにシングルサイズのベッドが2つ、テーブルとイスのセットが1つ。
薄そうな壁にはハンガー掛けがついている。なんというシンプルさ。
奥の壁に扉があるから向こうはトイレとお風呂なんだろう。
ハルの防音の魔法がなければ隣に丸聞こえではないの?という有様にがっかりする。
続きの小部屋にトイレとお風呂の確認に入って、ベッドの上に座ってるハルを振り返った。
「は、ハル!この世界にお風呂はないの!?」
すごい形相で振り返ったのか、ハルがびくっとした。
『ぉ、お風呂?』
「そうよ!入浴!お湯を・・・うーん、部屋で温泉に入る感じ?」
『えと、ここにミチルの言うようなのはないと思う・・・』
どこかどぎまぎと言うハルを覗き込む。
『たらいに水を張って、そこで洗うのが一般的、だったはず・・・』
ハルがちらっと、小部屋の壁に立て掛けられている大きなたらいを見る。
浅くて大きいそれは、そうするのに適しているような大きさがあり、確かに小部屋はタイル張りでたらいを置けそうな広さもあった。
どうやらこの100年で浴槽は発明されなかったようだ。
ふと、そわそわしているハルを見るとぴゃっと顔を逸らしてもじもじしている。
これは、もしかしたら良い機会かもしれない。
薔薇色の未来のために。
小部屋に入ると隅に大きな排水口があるのに気がついた。
石鹸で先に手を洗ってからたらいも洗う。
よく濯いでから蛇口の下に置いて水を溜め始めた。
「ハ・ル。」
ハルに近づき、にこっと微笑むとハルが何?というように首を傾げて見上げてきた。
「洗ってあげるね?」
ハルを抱き上げて意気揚々と小部屋に入る。
しばらく腕の中でじっとしてたハルが、はっと気づいたように手を振り出した。
『や、ぼっ・・・えぇー!』
よくわからない声を出してハルが逃れようとする。
「もしかしてハル、水浴びとか嫌いなの?」
脇の下に手を入れて目の高さまで抱き上げるとハルはぶんぶんと首を横に振る。
『き、嫌いじゃないけどこれはちょっとその・・・!』
何だか焦った様子でぎくしゃくしてるハルのほっぺにちゅっとする。
ぴっとハルの動きが止まって、ぷしゅうと空気が抜けたように項垂れた。
たぶん諦めたんだと思う。うへへ。
緩む頬のまましゃがみこみ、ハルの背中から水をかけようとしてふと思った。
竜が変温動物だとしたらいきなり水じゃ寒いんじゃない?
「ねぇ、これお湯にできる?」
『う、ん。お湯にするのは簡単だけど・・・ねぇやっぱりやるの?ぼく一人で入れるからミチルだけで・・・』
「もう!妻が自分の夫を洗って何が悪いのよ!」
ハルのほっぺをむにゅむにゅしながらハルの口にぶちゅっと口付けた。
今までの軽い触れ合いじゃなくて長くくっつけてぺろっと舐める。
驚いたようなハルが少し口を開けたおかげで、舌は簡単に入った。
少しひんやりしたハルの口内を獲物を探すようにして舐め上げる。
次第に、硬直して目を見開いていたハルの瞳がとろーんとなってうるうるしてくる。
呼吸が荒くなり、ふるふる震えるハルの両手がワンピースの胸元をぎゅっと握り締めてしっぽがぴんと伸びていく。
「・・・ふ、ぅん、ミチ・・・」
牙の先がちょっと痛かったけどハルも気をつけてくれてるみたいで、嫌がってないことが嬉しかった。
その後はお風呂にも入らず、何度もちゅーをしてハルを抱き締めたまま眠りについた。