13 ギルドに登録
開けっ放しの小ぢんまりした建物の横に立て看板があった。
“ご自由にお持ち帰りください”
下にあるトレイの中には紙切れが数枚入っている。
“勇者求む!
君もフレイムドラゴンの討伐に参加して栄誉を手に入れよう!!
説明会予定日 ユヌの月 三日 正午より別館第一会議室にて
討伐実施予定日 ユヌの月 十日 雨天決行
奮ってご参加ください!!”
立て看板の上では、板を嵌め替えて表示するタイプのカレンダーが今日はユヌの月二日だと示していた。
町の人にギルドと呼ばれる小ぢんまりした建物に入ると、ロビーにいた何人かがこっちをちらりと見てから視線を戻す。
窓口が5つ並び、各々に数人ずつ並んでいる。
一番左端の窓口に並ぶと、みんなお金を受け取るだけだったみたいですぐに順番が回ってきた。
イスに座るとハルを膝の上にのせる。
「ギルドに加入したいのですが、どうすればいいですか?」
「かしこまりました。」
イスに座った綺麗なお姉さんが心得たとばかりににっこり笑って、一枚の用紙をカウンターに広げる。
「こちらにお名前をご記入ください。」
差し出されたペンを受け取り、言われたところに名前を書く。
次にお姉さんは薄いカードをくれた。
「ではこちらにもお名前をご記入ください。」
お姉さんの字で日付の書かれたカードは裏面に紙を貼り付けた金属の板だった。
表には紋章のような刻印があり、蔦の絡まった二匹の竜が追いかけるようにして相手の尻尾に噛み付いている。
かっこいい・・・
竜の模様を見つめているとお姉さんがコホン、と咳払いをした。
顔を上げると、お姉さんが引き攣った笑顔を浮かべている。
すみません、つい。そう思って軽く頭を下げてから名前を書くと、お姉さんがカードを受け取って先ほどの用紙の上に置いて割り印を押した。
カードの表と同じ図柄の左半分が、カードの裏にくっきりと残っている。
イスに座ったままのお姉さんが後ろを向いてカードを何かにかざすと、カードをトレイにのせてカウンターの上に置く。
「これでギルドへの登録は完了です。お疲れ様でした。」
手に取ったカードは硬めのラミネート加工がされていた。
素晴らしい技術である。
これで多少手荒に扱っても、この素敵な竜の紋章が汚れることはないのだから。
じっと見つめていると、またしてもお姉さんがコホンと咳払いした。
「ギルドについてご説明致しますか?」
ハルを見れば首を縦に振る。
ギルドについてハルも知らないと言っていたからちょうどよかった。
説明を聞いた。
最重要事項として魔物を倒せばお金をくれるところというのはわかった。
あとは依頼のランクが高くなるほど報酬も高くなるそうだけど上げすぎると目立つだろうし、~退治とかの依頼を名指しで命令されたりするとか。
やっぱり目立たないためにもランクは上げない方が良い気がする。
それに私には崇高な使命があるのだ。
左手にハルを抱き、右手でカードを掲げて立ち上がる。
キラッと光る笑顔でお姉さんを見下ろした。
「どうもありがとうございました。」
「い、いえ、こちらこそ・・・」
引き攣った笑顔でお姉さんは手を振ってくれた。
町から離れた夜の草原は涼しかった。
人に見られないために夜にしたけど、とあたりを見回す。
誰もいないのをハルも魔法で確認した。
『やるよ?』
見上げて言うハルにこくりと頷く。
「うん、まずはハルの魔法がどれくらいのものか知っとかないと。」
魔法学校エリートコースのハルを思い描いて前方を見た。
腕の中から何の動作も呪文もなくハルが魔法を放つ。
あたりの草原が一瞬で燃え上がり瞬時に燃え尽きる。
あとに残ったのは大半がはげた大地になった草原だった。