7.教えたがりな愚者
頭の中の知識の宮殿に検索をかける……
その瞬間、目まぐるしい程の知識の本流が俺に襲い掛かってくる。
物語の様な魔法の数々に、途方もない破滅へとつながる危険な魔術の数々。
星の様に無数に広がる輝かしい流派に歴史の数々。
または冥府魔道に繋がる悪しき流派の数々。
星の様に無数に広がり、星座の様に紡がれる魔導の世界が脳内に土石流の様に流れ込んでくる。
だが、理解しようとは思わない……
ただ、今の俺に必要な情報だけを……
「ふむ、なるほど……」
その瞬間、顔をしかめてしまう程の頭痛が襲ってくる。
「ど、どうしたのよ?」
見ると、こちらの異変を感じ取ったのかエルフの少女が心配そうな顔でこちらを眺めていた。
「君の魔術の流派は風を起こす事で矢の威力や速さを増幅。あるいは起動のコントロールなど目指す体系の様だな。それにより、狩りの成功率や戦闘を優位に進ませる。ふむ…… なるほど、風を纏って矢避けにも使うと……」
俺の言葉を聞いて彼女が目を見開いた。
「!!!」
なるほど、なるほど……
「単純にして王道を歩む流派…… そして、気質としては、貴族的で潔癖…… ふん、馬鹿馬鹿しいな。それ故、風の魔術を使えぬ者は差別し蔑み迫害するか……」
「あ、え……!?」
エルフの少女は驚いた様子で口をパクパクと開いている。
まあ、彼女が魔術を意識的に使えたとしても結果は変わらなかっただろうがな……
「あ、貴方、なんで私達の一族の事を知ってるのよ!?」
驚愕の表情で彼女がこちらを見上げてくる。
「俺はこの世界の過去、現在、未来の魔術についての知識を持っているのだ、それぐらいのことは知っている」
「か、かこ、現在、ミライ……」
彼女は白目を向いて悶絶の表情を見せている。
見たところ、何処かに意識が飛んでいってしまったようだ。
おーい、戻ってこーい。
おい、おーい。
「まあ、君がどう言った人生を歩んだかまで細かくは知ることは出来ないが、君の一族の魔術形体はわかった。まあ、やはり下らんがな。まったく、貴重な虚数属性を手放すとは……」
「きょ、虚数!? それって、アレよね、貴方が使ってた……」
彼女が今日何度目かと思われる驚きの顔を作った。
まあ、これはわからなくとも仕方あるまい。
「まあ、そうだな。簡単に説明するなら魔術の世界に於いての虚数とは、実際には存在しないが存在する物の事を指す」
「そ、それはつまり?」
「俺にもわからん!」
ここはキッパリと言い切る。
だって、俺もよくわからんもん。
「ズゴー!」
俺の言葉と共に彼女は大きく地面にズッコけた。
うん、ノリが良いな、嫌いじゃないぞ。
「わ、わからないってどう言うことよ、貴方!? 全部知ってるんじゃないの!?」
「俺は知識を持ってるだけで、全てを使える訳ではない。考えてもみろ、たかが人間風情が過去、現在、未来の全ての魔術知識なんぞ持っていたら脳が爆発してしまう、廃人一直線だぞ」
そう言って俺は頭をコツコツと叩く。
「だから、俺はその時々に必要な知識を最低限だけ引き出す事に努めてるんだ」
「は、はぁ……」
彼女は口をポカーンとさせてこちらを見ている。
まあ、俺の話はこの程度でよかろう……
「君は虚数の風を纏う持つ者だ。後者の風の属性は血縁に因るものだろう」
「ちょ、ちょっと待ってください! 虚数属性と言うことは貴方がやってた空間に何かを隠すとかも出来るんですか!?」
いきなり大量の情報の開示されたせいなのか、彼女は混乱したように、あたふたとあわてふためいている。
まあ、普通はそうなるだろう。
俺も、何時も何時もとんでもない情報量と渡り合ってるからわかるぞ。
思わず、うんうんと頷きそうになってしまう。
「いや、君の属性は虚数の風だ。風や摩擦等を無くしたりは出来るだろうが空間までの影響力は無いな。しかし、元素として風はその影響力を増せば空間へと至る可能性はある。そこから空の世界にどう切り込むかは……」
見ると、彼女は口をポカーンと開いて機能停止している。
うん、これはいかんな。
我ながら、自分の中の知識が暴走しているな。
先ずは基礎から始めなければ……
よし、そうだな……
先ずは……
「うん、先ずは君の名前をおしてえ貰おうか……」
「え!?」
彼女は今日何度目かと思われる驚愕の表情を浮かべると、直ぐに呆れたと言った感じの表情を作ってみせた。
「い、いまさら?」
そう言や、確かにそうだな……




