6.知りたがりなエルフ
「私に魔術を教えて下さい!」
はてさて、どうした物か……
見るとエルフの少女は顔を紅くし、下唇を力一杯噛み締めている。
どうやら、今の言葉は彼女に取って非常に恥ずかしい物らしい。
俺には、いまいちわからんがな……
それに……
「エルフなら魔術の一つや二つ造作もなく使えるだろう……」
その言葉を吐いた瞬間、彼女から張り裂ける様な声が上がった。
「使えないから頼んでるんですッ!!」
その大きく鬼気迫った声に木々に止まっていた鳥達が空へと飛び立った。
そして、沈黙が訪れる……
「なるほど、エルフなのに魔術が使えないか……」
俺のその言葉に少女は肩を落とした。
まるで何かを諦めたかのように項垂れると、おもむろに口を開いた。
「そう、私はエルフなのに魔術が使えない。そのせいで一族からも森からも落ちこぼれとして追い出された……」
猪を解体する手が止まる……
「うむ、追い出されたのはいいが、手が止まっているぞ。速く解体を済ませてくれないか?」
「あ、はい……」
俺の言葉に彼女の手が重々しく動きだし、猪の解体を進めていく。
それと同時に彼女は重い口を開いた。
どうやら続きを語り始めたようだ……
「笑っちゃうわよね。実の家族すら、私が魔術を使えないと知ると恥さらしと罵って何の躊躇いも無く見捨てたわ……」
「ああ、とんだ笑い話だな」
俺がそう言うと、彼女は一瞬だけ解体の手を止めたが、直ぐに解体の手を進めた。
「そ、そうよね……」
彼女の手が震える。
実の家族にも罵られるか……
さぞかし辛い目にあったろうに……
さぞかし屈辱的な目にあったろうに……
さぞや惨めな気持ちになったろうに……
きっと、幾度と無く心が折れそうになった事だろう……
きっと、幾度も挫折を経験した事だろう……
そして、最後の最後に俺と言う希望に出会ったと言う所か……
「まったく、ひどい笑い話よね……」
彼女の肩が震え、今にも泣き出しそうな顔を作る。
しかし、それでも彼女は涙を見せずに踏みと止まっている。
最後のプライドと言った所か……
まったく……
「ああ、まったくひどい笑い話だ。貴重な魔術の才能を持つ者を追い出すとは……」
「……え?」
彼女の震える身体が止まる。
藁にもすがる、そんな顔で表情でこちらを見上げる。
最後の希望。目の前に垂らされた、たった一本のクモの糸。
そんな物を見る様な目でこちらを見上げる。
まったく、とんだ笑い話だ……
「何をしている、さっさと解体を進めろ。魔術を教わりたいのだろう?」
その言葉に少女は歓喜の表情を咲かせる。
まるで大輪の花が咲くような満面の笑みを……
「……は、はいッ!!」
まったく、本当にとんだ笑い話だ……
この俺が、こんな取るに足らないエルフの言葉一つに絆されるとはな……




