1.知り過ぎた者、冒険者になりたい
「すまないが、冒険者になりたい」
俺がそう言うと目の前の女性は目を丸くしながらこちらを見上げた。
「は、はい……」
なるほど、これが受付嬢と言う奴か……
ギルドの顔、看板娘。やはり見てくれはかなりいい……
俺がこんな状態になる前なら劣情の一つや二つは抱いただろうな。
女性は俺の顔を見ると次は視線を下へと移し身体全体を、と言うより姿格好を眺めた。
まあ、品定めと言った所だろう。
さて、彼女は俺をどう鑑定するかな?
しばらく待っていると彼女はどうしたものかと頬を掻いてみせた。
ふむ、俺が何者か決めかねているみたいだな。それとも彼女のお眼鏡に叶わなかった。
どれ、一つクルリと回ってみるか?
それともランウェイを歩くモデルのようにギルド内を闊歩して見せようか?
まあ、この時代、この時空にランウェイもモデルも存在しないがな……
俺は今居る建物の中をクルリと見渡す。
鎧を着込んだ屈強な男達。
僅かに魔力を纏うローブを纏う魔術師。
身軽そうな格好の弓使い。
皆が揃いも揃ってたむろし、ガヤガヤと騒いでいる。
なるほど、ここがギルドか……
「あの、失礼ですが御職業の方?」
むむ?
職業だと?
「冒険者だ、今から冒険者に成ろうとしている」
「いえ、そう言う意味ではなく。前衛職とか後衛職とか、その…… 戦士とか、魔術師とか、そう言う奴です……」
ふうむ、なるほど、そう言う奴か……
見ると彼女は「ははは」と申し訳なさそうな顔をしている。
別にどれでもいいんだがな……
「一番実入りが良いのはどの職業だ?」
「は、はいぃ?」
俺の答えに彼女が驚愕した様子で口を大きく開いている。
ほほう、結構口が大きいお嬢さんなんだな。
ご飯一杯食べそう。
それにしても、この返答は間違いなくディスコミュニケーション。ソー、バットだな。
果たして何が正解なのかわからん。
まったく、ろくでもない知識を頭にぶちこむなら、ここら辺の知識もぶちこんで貰いたい所だな。
「あ、あの…… そうではなくですね。自分の得意な事だったり、持っている技能だったり、前職の経験だったりと……」
「なら、盗みと強奪だな。前職は盗賊だ。これでいいか? 俺の職業は盗賊だ……」
「……わ、わかりました。では、少々お待ち下さい」
よし、どうやら上手く行ったらしいな。
元々、俺は山奥で暮らしてた盗賊だからな、世俗の事柄には疎い疎い。
色々とゴタゴタしそうな雰囲気がしたがどうにかなった様だな。
重畳、重畳!!
「衛兵さん、こちらの方が盗賊だそうです、捕まえて下さいッ!」
見ると、受付嬢がどこからか屈強な衛兵を連れてやって来た。
なるほど、これが「お巡りさん、コイツです」と言う奴か……
この世界でもあるのか!
出会えて光栄だ!
「まったく、命知らずの盗賊だな。だが直ぐに牢獄に送ってやる」
そう言うと衛兵さんは手に持った槍をブンブンと振り回し勢い良くこちらに突き繰り出して来た。
困ったことに今のところ最高にディスコミュニケーションだ。
我ながらコミュ症も甚だしい。
「まあいい、どうにかなるだろう」
俺は魔力を練り上げ、繰り出される槍に意思を向けた。




