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プロローグ

「座標を秩序の虚(ちつじょのうろ)に指定……」


 空中に浮かぶ怪しげな光を放つ“ソレ”に意識を集中させる。


「周辺座標の時間を遅延。多重時空結界クロノス起動」


 怪しげな光を放ちながら揺らめく“ソレ”は結界に囲れると、その揺らめく頻度を緩めて見せた。


 まるで呼吸を妨げられ鈍く揺らめくソレは、裏目しそうにこちらを眺めている。


「座標を時空結界クロノスに指定。周辺座標の時間の多重遅延及び虚数空間への収納を開始」


 結界に囲まれた“ソレ”はまるで背景に飲み込まれる様にして、この空間ではない何処かへと消えていった。


 その消える間際、ゆらりと不気味に揺らぎこちらを睨み付けた。


「これで精々百年って所か……」


 仕方ない。どんな魔法、魔術も無力化する秩序の霧(ちつじょのきり)、その溜まり場秩序の虚(ちつじょのうろ)だ。

 

 時空魔術との摩擦を利用して侵食を遅延し、虚数空間に封印するしか対処法ない。


 しかも、これは単なる時間稼ぎでしかない。

 

 俺が居なくなり、結界の維持が出来なくなればあの霧は徐々に結界を喰いやぶり、虚数空間から溢れ出し、その(うろ)は驚異を増して行くだろう。


 滲み出すようにジリジリと……


 それでなくても、あの霧は徐々に侵食を進めている。


 あれが世界を覆ったら……


「この世界から魔力は魔法は魔術は消えて無くなっちまう……」


 俺みたいな物好きが後に何人も現れれば猶予は伸びるが、それでも精々、二千年と言った所だろう。

 どんなに侵食を送らせようと、止めること出来ない。

 何時しか終わりが訪れる。


 その時、人類は……

 いや、魔術師達はどうなるのだろうか……

 

「はあ、まったく。ろくでもない事を知っちまった……」


 青年は一人森の中に姿を消した。

 その身に、端のほつれたボロ臭いローブを棚引かせて……

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