出会わなければ
あの日、俺は彼氏と共に過ごせないことを理解した
ある日の夜、俺は彼氏と他愛もない話をしていた「俺はずっとずっと一緒に居る!」「…実は、僕、いつかお嫁さん貰うんだ」突然の告白だった、なんの前触れもなく…本当に突然だった
頭が理解してくれなかった、いや…したくなかったのだ、生きてきて中で幸せであったこの時間を……努力では変えられない運命で失うのだから
理解できるはずがなかった、だが…理解せざるを得なかった
そこからは少し話をし解散した、普通の話をしている間も頭の中は真っ白…いや、絶望に塗り尽くされていた、解散後も何も納得などできなかった、理解は可能だった、相手も男だ…そして人間である以上本能もある、子孫を残すことは当たり前のこと………当たり前、それでこの気持ちを納得させ、抑える…それしか出来ない、己の納得できないという気持ちで、大切な彼氏を不幸の道へ連れていくことなどできなかった、出来るはずがない…だって、愛しているのだから
その日は何も手が付けられなかった、飯も食っても塩味…外へ行っても雨が降っているのだろうか、ずっと歪んだ視界…布団へ入っても、目を瞑り暗闇へ逃げても……絶望だけがそこにある
「……幸せの後に来るのは毎回…不幸だけだな」
そう1人で…呟くことしか出来なかった
気分転換に暗闇の広がる外へ景色を見に行った、普段ならば綺麗だと思えた何気ない景色も…今は絶望が覆いかぶさり、薄汚れてしまった景色としか思えなくなっていた、心も真っ黒になったのだろうか、分からない、いや…分かりたくないのだ、理解してしまえば…あの幸せで覆われていた空間を否定してしまうようだから
もう、悔いはなかった
そばに誰も居ぬ世界に…居場所はない、生きる理由もない、何もかも無いのだ
その日俺は、離れることを心へ刻んだのだった