番外編 ──アオリンゴ殺害事件 2 ──
アオリンゴがいないとやりにくい。
今更なんですけど、自分って警察関係のことマジで分からんので、名前とか仕事内容とか違ったらすみません。
「ここが現場か〜」
テツが黄色いテープをくぐって辺りを見渡す。
アオリンゴの家はごく普通の一軒家だった。
「あ!テツー!こっちす!」
ワトが片手を大きく振る。
「おー!ワトソン!コート変えた?似合ってんじゃん」
テツがワトソンのコートを指差す。
「変えてないっす」
ワトがげんなりする。
「え、マジ?」
「そんなことよりやることがあるんじゃないんすか?」
「あ〜そうだね。被害者の細かいことの確認?」
テツが手を後ろに組む
「語彙力ないんすか…?まぁ、そうっす」
ワトが少し大きめの手帳を横ポケットから取り出す
「出た!ドラマとかでやる手帳取り出すヤツ!リリスも手帳を取り出せ!対抗してやる!」
「ふふ…そうだと思って持ってきたぞ。じゃじゃーん!手帳…!」
リリスも、オーバーオールの上に羽織っていたパーカーの横ポケットから赤い表紙の手帳を取り出す。
「用意周到…さすが俺の助手…!」
テツが小さく拍手する。
「そりゃあ助手なら誰でも手帳は常備してるっすよ」
ワトが呆れ声でリリスに向けていた目をテツの方に移動させる。
「怒らない怒らない。ほら、早く詳細をドーゾ」
「別に怒ってたわけじゃ……こほん。えー、大体はテレビでやっていた通りっす。テレビ見たっすか?」
ワトが上目遣いでテツの方を見る。
「あったりまえじゃーん。俺のことなんだと思ってるのさ!アオリンゴ、五歳、刃物で皮を剥かれ、ウサギの形にされた。第一発見者はサンふじ。これでどお?」
テツが自慢げにワトを見る。
「ま、合格っすね。」
「うし!」
ガッツポーズをするテツ横目に、リリスが手帳に落としていた目を上げて眉を顰めて呟く
「にしても、ウサギの形にするなんて残酷だな」
「なー。相当なイカレ野郎だよなぁ」
テツが…ええと…あの……首痛めてるみたいな格好をする。(このポーズの名前が分からない)
「そのこともあって、警察はそのイカレ野郎を捕まえてやろうと必死なんすよ。そんなの街にいたら、安易に外出できないっすから」
ワトが疲れたように息を吐きながら言った。
「お疲れー」
テツが苦笑しながら言った。すると……
「あれ?テン哲じゃん乙〜」
殺害現場には似つかわしくない明るい声が響いた。
「あ!まっちーじゃん乙〜」
まっちーと呼ばれたのは、マちほ・タカハシ(27)鑑識だった。
「リリスも乙〜」
マちほは、リリスにも手を振った。
「おつ〜!」
リリスも明るい声で返事をした。
「先輩、私語を謹んでくださいっす」
ワトが何度目か分からない呆れ語で言う。
「ワトソンがカチカチすぎんだよ〜」
マちほがワトの髪の毛をぐしゃぐしゃにする。
「ところで、俺たちそろそろ殺害現場に行きたいんだけど……」
テツが小さく手を上げる。
「あ、おけおけ。行こ〜」
次回に続く