始まり始まり…
ぼちぼち投稿していきます。
××××年十月某日。
鈴畑哲は困惑していた。
中学二年生になったばかりの哲は、面倒臭いながらも学校に行こうと玄関の扉を渋々開けた。
「……は?」
真っ赤な空と、赤黒い土が視界いっぱいに飛び込んだ。
雑草も、今見えている範囲では、両手で数えられるほどしか生えていなかった。
後ろを振り返ると、さっき出てきた扉が綺麗さっぱり消えていた。
代わりに、真っ赤な空、赤黒い土が広がっていた。
「……」
意味がわからなすぎて言葉も出ない。
その代わりに変な汗がダラダラと頬を伝う。
頭をフル回転してやっと答えが見つかった。が、哲は認めたくなかった。しかし、これは認めざるを得ない状況だ。
「いや…ははっ……ここ、日本じゃねぇだろ。もしかして……もしかしなくても……異世界…?」
哲はさらに困惑した。
哲が想像した異世界というものは、もっとキラキラしていて、街があって、様々な種類の者が行き交っていて……というものだった。
しかし、それが全くない。
人っこ一人、いないのだ。
どこを見ても、少し歩いてみても、目の前に広がるのは赤い世界だけ。
「俺にどうしろって言うんだよ……」
寝癖のついた頭を掻きむしり、イライラしながら先に進む。
進んでも進んでも赤い世界は永遠のように続いた。
–––––––––二十五分後
哲の体力はもう底をつきそうだった。
食べ物も、水もない場所でただただ赤い世界をひたすら歩き続けた。
哲の歩くスピードがだんだん落ちていく。
歩く音が、自分の呼吸の音でかき消される。
視界もだんだんぼやけてきた。
すると突然、膝がガクンと折れ曲がった。
膝が急に曲がったことで、哲は赤黒い土の上に倒れてしまった。
薄く、草の匂いがする。
「一体なんなんだよ……急にこんなところに連れてきて……やってらんねぇよ………」
はは、と渇いた笑いを、空気の中に混ぜる。
「無理だろ…これ」
哲は呟いた。
呟いて、三分がたった。
哲の体の上に、影が落ちた。
「…?」
半分ほど開けていた目を、動かす。
「大丈夫か?」
丸まった声が聞こえる。
「ん?おーい。聞いているのか?」
丸まった声の持ち主は、右にいた。
「……ああ」
「うぉっ…生きていたのか…」
見た目は十五歳…と言ったところだろう。
触覚の方が長く、切り揃えられているボサボサの薄い黄緑色のボブの髪の毛の少女がこちらを覗き込んでいた。
服装は、白いシャツに真っ赤なネクタイが通されておりその上に真っ黒なパーカーを羽織っていて、パーカーの裾より短い半ズボンに白い靴下にガーターベルトが付いている。
「誰だ…お前…」
「あのなぁ…せっかく声をかけてやったのに、その言い方はないと思わないか?」
少女は呆れた顔をした。
「こっちにはヨユーってのがないんだよ…」
「そうか。ヨユーがないのか」
「ああ…」
「よし。助けることにしてやろうか?」
少女は自慢げにふんぞり返った。
「…そうしてもらえると助かるよ」
「よしわかった。そうと決まればお前は今から仲間だ。名前を言うのは助かった後でということにするか」
「…ああ」
「よし。それじゃ転移するか」
少女は哲の腕を自分の肩に回した。
「あ…?」
「転移!」
少女がいきなり何かを言ったと思ったら、赤い世界が、茶色い木の世界に変わっていた。
「…?」
困惑しながら少女を見ると、まるで当たり前かのようにスンとしている。
「よし。上手くいったか」
空いている方の手を腰に当て、自慢げにこちらを見てくる。
「お前はここで寝ていたほうがいい。相当疲れているからな」
少女はゆっくり、後ろにあったベッドに哲を寝かせた。
ベッドに入った瞬間、一気に眠気が襲ってきた。
哲はそのまま、眠りについた。
「………」
目を開けると、新品の木の匂いがした。
部屋を見渡すと、ベッドとクローゼットだけの小さな部屋だった。
「よお。起きたのか」
助けてくれた少女が、ドアから顔を覗かせた。
「ああ」
哲は短く返事をする。
「そういえば、お前の名前はなんだったか?」
少女が、持ってきた丸い小さな椅子をベッドの横に置いて、座る。
「俺か?俺は哲。よろしく」
「テツだな。よろしくな」
少女が哲に手を差し伸べる。
哲は快くその手を握った。
「それで…えーっと……?」
「私か?私はリリス」
「ああ。よろしく」
「これで私達は仲間だな!」
「おお!仲間か!いい響きだな」
「だろ?」
「ああ!よろしく!」
哲は握っている手をブンブン振り回した。
ー⭐︎ー⭐︎ー⭐︎ー
「ふーんここはリリスの家なんだな」
哲はスープを飲みながらリリスと喋る。
「そうだ。魔法で力をつけて、木を切って、切った木をなんやかんやして出来上がったんだ。この大変さが分かるか?」
哲は手を止め考えた。
「……分かりたくないね」
「だろう?」
「でもさー、だからってなんでこんな赤いところで家を建てようと思ったんだよ」
哲は窓の方に目を向けた。
窓の外には赤い空に赤黒い土、加えて、赤い木が数本生えている。
「誰もいないところに住むのが夢だったからな」
リリスは自慢げに話す。
「ふーん。いいんじゃない?」
「だろう?」
スープを飲み終わった哲は伸びをして、席を立ち、窓の前に立った。
リリスも食べ終わり、席を立つ。
「にしてもここは本当に静かだな。物音が一切しない」
「当たり前だ。ここには私たちしかいないからな」
リリスが哲の隣に行く。
「俺たち以外、誰も?」
「ああ」
「ふーん」
「…なんだ?寂しいのか?」
リリスが哲の顔を覗き込む。
「な訳ねーだろ!……って」
「ん?どうしたんだ?」
リリスが首を傾げる。
「誰もいない=二人きりってワケ⁉︎」
哲が急に乙女のような声を出した。
「…まあ、そうなる…な」
リリスが考え込む。
「まじか!ということは、リリスとあんなことやそんなことをするシュチュエーションって訳ー⁉︎」
哲が早口で言う。
「…?あんなことやそんなことってなんだ?」
リリスが腕を組む。
「俺も分かんない」
哲がはてなを頭から出した。
「じゃあなんで言ったんだ」
「え、なんか…ノリで…」
哲はダブルピースをした。
「まぁ、ノリだとしても、そう言うシュチュエーションならあんなことやそんなことをするしかないな」
リリスが組んだ腕を解き、両手を腰に当てる。
「でも、分からなきゃできないだろ」
哲がダブルピースをやめる。
「…考えるしかないな」
リリスが頷く。
「「う〜ん…」」
リリスと哲が唸る。
「あー‼︎」
「なんだ⁉︎」
哲が閃いた言葉を出した。
「分かった!きっと鬼ごっことだるまさんがころんだじゃね⁉︎」
哲がリリスの方を向く
「…た、確かに。どちらも二人でできるものだな」
リリスの背景にピシャーンと雷が落ちる
「だがしかし、私にも案がある」
リリスが人差し指を立てる。
「お、なんだなんだ」
「テツと…」
「俺と…?」
哲がゴクリと唾を飲む。
「農業をすることだ」
「の、農業だとぉ⁉︎…確かに農業は二人でできて、二人で楽しく畑を耕し、二人で楽しく苗を植え、大きく美味しくなるようにジョウロで一つずつ水をやり、収穫までを楽しみつつ、毎日毎日休む日もなくジョウロで水をやり、時には雑草を引っこ抜いたり、虫を駆除したり、肥料をあげたり、あまり大きくならないものには、しょうがなく少量の農薬をあげたり、雨や風、雷の日にはソワソワしながら畑を見て、無事を祈る。それで収穫の日には今までの苦労や苦難を乗り越えた達成感と大きく美味しく育ってくれてありがとうという気持ちを持って、収穫……考えただけでとても良い………」
「ふふふ、だろう?」
リリスはとても自慢げだ。
「よっしゃー!そうなったら畑を耕すぞー!」
哲が拳を振り上げる。
「まぁ待て。実はもう畑を耕しているのだ」
リリスがニヤリと口角を上げる。
「準備万端だな‼︎よっしゃー!そうとなれば苗を植えるぞー‼︎」
「「おーー‼︎」」
苗植え中…
「よっしゃ!こんくらいでいいだろー」
哲がひたいの汗を拭う。
「そうだな」
リリスが手を腰に当てる。
「…でさ。リリス」
哲がリリスの方を向く。
「ん?なにかようか?」
リリスも哲の方を向く。
「俺たち、あんなことやそんなことしたからさ…」
「うむ」
「付き合ってもいいと思うんだよね」
哲が最高のキメ顔でリリスに言った。ついに言った。
「なるほど…悪くない提案だ」
リリスもキメ顔で答える。
「それでは……コホン。デデンデンデデンデデンデンデデンさあ!お返事をどーぞ‼︎」
「私は……」
リリスが目を閉じたままキメ顔を続ける。
「お前のマイハニーというものになってやろうではないか‼︎」
リリスがガッツポーズをする。
「おっしゃー!ということは、俺たち今からカップルだな‼︎」
「そういうことだ‼︎」
「「イエイ‼︎」」
リリスと哲がピースを振り上げた(?)
バカップルの誕生である。
あ、ちなみにナレーションはこんなスン…としているが、実際のところ程よく頭がよく、程よくバカなのだ。
この話は、たまにナレーションが口悪くなったり、メタ発言をするから注意である。
バレるまで性別隠したいから、一人称は自分で行きます。よろしくお願いしてます。
自分でもびっくりするぐらい長くなった……