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異世界転生したけどオレはやはりおれのようです

作者: コカマキリ

久しぶりの短編です! 良い年越しを!

異世界転生してなんでも手に入れても良いとなったら、みんなはどうする? 


ああ。分かっている。そんなもの語るに語り尽くされてきたなんてことはな! だが! あえて!! 言わせてもらう!!!


どんな願いを叶えるにも最低条件がある。転生先の身体が健康であること。これに尽きるだろう。さてそんな感じで転生先でチート能力を授かったおれはなにを願ったかというと・・・。


鼻炎薬であった。いや、ね? ほらあれだよあれ。前世から愛用してたもの全部よ。MM製薬、トーサ製薬、大林製薬とかの大手のもの全種類を手元に錬金する能力である。体質によってアレルギー性とか慢性にききやすいのとか、そもそもの薬の強度とか。


詳しくは知らぬ。おれ薬は飲んでたけど素人だもの。


それはさておき、5歳児のおれにとってはなかなかにしんどかった。偏頭痛に耐え夜も眠れない中前世の慢性鼻炎のおれは薬を召喚し、その日からご愛用し健康的な生活を手にいれた。


中世ヨーロッパの世界観の異世界で、なろう小説みたいなところに転生したおれはまあ普通に頑張って勉強もしたし、貴族にふさわしくあろうと日々邁進していた。


気づけば王立学園15歳。中等部を終え、最終学年になっていた。光陰矢の如しとはよく言ったものである。


だが・・・。おもしろくもないことに乙女ゲームの世界でもなんでもないので(ただの異世界)特にイベントが起きるってわけでもない。


あ~。おれこのまま公爵家を継いで国に使えなくていけないのだと思うと退屈なことこの上ないのだった。


そして貴族の慣習によりおれも例に漏れず国内の適当な令嬢との政略結婚をすることになったのだ。リュシエンヌ嬢。侯爵家のご令嬢である。


世間の彼女の噂や評判からして我が家のみんな(おれ以外)がため息をついた。儚げでどんくさく特に良い話がない身分だけのご令嬢。


マジかー。おれの婚約者さまおれの実家から少しだけだが歓迎されてないし、身体も弱いそうだし大丈夫ってばよって思っていた。


実際にあってみると確かに鼻声だし、終始ボーっとしているし、会話の受け答えもちんぷんかんぷんなときあるし確かにパッとはしないという前評判は当たっていたとも言えた。


もうすぐ卒業パーティーで春先だというのに妙に厚着だし、前髪長すぎて顔見えないし。自分に自信なさげだし。


それでも・・・。彼女の仕草は品があり、笑った時の雰囲気はとても可愛らしかった。声も鼻声じゃなければ可愛いと思う。しかし雨の日のデートでは常に頭をさすっており頭痛があるのか辛そうだった。


あまりにもしんどそうなので、おれは彼女におれの上着を着て貰う事にした。


「くっしゅっ!」


今のくしゃみ? なんだこの可愛い生き物は?


「風邪をひかれましたか? 回復術師お呼びします。少し待っていて下さい。」


「あ、あの。皆さんにはご迷惑をおかけしたくないので。私そろそろお暇しますわ。」


ずずーーーーーーーー。。。


「・・・。」


なあ。ひょっとしなくても彼女って鼻炎なんじゃね? 頭痛そうなのって偏頭痛じゃね?


チーーーーーン。


「あら嫌だわ。私ったらはしたない。///.」


「・・・。」


決まりじゃね!?


「リュシエンヌさま。良かったらこれお飲み下さい。」


「ええ。これは何ですの?」


「お薬です。爽健作用があります。」


「あの・・・。そのこういうのは旦那さま。ご結婚しないうちはそのう・・・。」


うーーーーん。なんで顔を赤らめた?


「あまり健全ではないというか。いけませんわ。」


なんで? あ~。おれ結婚したら旦那さま呼びされてしまうのか。それはとてもいいね。そそるね。それはさておき。


「これは惚れ薬でも媚薬でもないですよ。」


「ほ、ほんとですか?」


「ええ。私の名誉に誓って本当です。もし明日以降身体の調子が良くなったら教えて下さい。」


「分かりましたわ。」


体調悪そうな彼女を見送ったあとおれは真剣に悩んだ。ひょっとして彼女あんなに可愛らしい雰囲気なのにけっこうむっつりなのではないかと。


週明けに彼女にお会いしたら、なぜかとてもお元気になっていた。ひょっとすると薬が効いたのかもしれない。


「こんにちは!」


その声は鈴のように軽やかで。おれは一瞬天に召される所だった。


「あ、あの。言いつけ通りにお薬飲みましたら今までの人生で一度もなかったくらい身体が軽くなり、気分が晴れ晴れとしてますの!」


「それは良かった。」


「それにそのう少し前髪切ってみたのですが、どうでしょうか? 変ではないですか?」


もじもじと赤面する彼女。


その可愛さは語る必要すらないが、事態はそう単純ではなかった。前から可愛らしい雰囲気は隠しきれていなかったものの、前髪によって封印されていた、蒼く美しい儚げな瞳は彼女を完璧な美少女たらしめていた。


長いまつ毛はまるで彼女を美の女神が作り上げた造形品のような美貌を作り上げている。


おれは当然呼吸が止まりかけた。


「ああ。とても可愛らしいね。ところでもう薬の予備はないのだろう?」


「え、ええそうですわ。」


「はい。一日3回。朝、昼、晩飲むんだよ。」


「ありがとうございます。こんなにも貴重なものを。」


「いいんだ。実はおれもお鼻の疾患でね。薬を飲んで健康を保っているんだ。」


「だ、旦那さまも?」


「そうおれも。」


「そう、そうだったのですね。旦那さまもお鼻の疾患で苦しんでいらしたのですね。でもこれからは私がお側にいますから。」


ちょっと背伸びしておれの頬にそおっと触れてきた。指先はひんやりと冷たかった。冷え性なのかな?


「ああ。ずっと一緒にいような。」


「ええ。」


そんな感じで甘いひと時を過ごしてからおれは改めておれのご両親に彼女を紹介しにいった。


「お初にお目にかかります。私ワンダフル侯爵家のリュシエンヌと申します。不束者でございますが、どうぞ末永くよろしくお願いいたします。」


「・・・。」

「か、可愛い。」


「え!?」


「まあまあまあ!!! あなたが噂のリュシエンヌちゃんね! あ~。こんな可愛いらしい義娘ができるなんて♡ よくやったわ我が息子! お母さん誇らしいわ!」


「天使かと思ったよ。わが家へ歓迎する。よくぞ参った! さあ! リュシエンヌよ! 義父の胸に飛び込んでくるのだ!」


「父さん母さん! ごめんね。このひとたちのことは無視していいから。何してんだよ!?リュシエンヌが怖がっているだろ?」


「そ、そんな可愛いだなんて///.」


ええ~。何この可愛い生き物。


「と、とにかく!! リュシエンヌは噂がどうとか気にしているみたいだけど。この通りおれたちの両親はちゃんと君に向き合って接してくれるひとたちだから気にすることはないと思う。」


「・・・。」


頬を一筋の涙がこぼれおちた。


「わ、私これまで家族以外にはあまり優しい言葉をかけられたことが無くて。ご、ごめんなさい。嬉しくて。」


「そうか。でもこれからはずっと一緒だもんな。」


「ええ。ずっと一緒ですわ。」


「息子よ。生意気にも立派に成長してくれたんだな。」

「お母さんも嬉しいわ。」


「義母さま!義父さま~!」

「リュシーーーーーー!!!」


3人は優しく抱き合った。リシュエンヌは意外とわが家へとなれるのが早いかもしれない。



*****


後日リシュエンヌのご両親にご挨拶に行かせて頂いた。


「己この若造が! 娘をたぶらかしおってーーーーーー!!! 娘は、娘はやらんぞーーーーー(打撃音)」


「ぐはっ」


「ちょっとあなたやめて! やめなさいっ! 力つよっ!衛兵! 衛兵をお呼び!]


「父さまやめてーーーーー!!!」


ちょっとした一方的な大乱闘は起きるべくして起こったのであった。
























読んでくれてありがとう♪

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