第三幕・食堂事変
『一場・第二実験準備室』
ホスト教師らしく適当にHRを終わらせると、俺は足早に職員室…ではなく俺の部屋と化している第二実験準備室に引き篭った。
ここは特別棟と言われていて、教室がある棟とは渡り廊下で繋がっている。
しかも4階に位置するこの第二実験準備室は、放課後ともなれば誰も来ない。
この学園には『部活棟』が別にあるから、美術部だの実験部だのもこの特別棟じゃなく部活棟の方に行くらしい。
「あー…落ち着く…」
第一実験準備室は頻繁に使われているけどこの第二実験準備室は誰も使っていなかったから、今じゃ椅子やテーブルを置いて俺の第二の部屋となっている。
急須に茶葉を入れ、ポットのお湯を一度別の容器に入れて僅かに冷ましてから急須に注ぐ。
紅茶は熱湯を入れた方がいいらしいけど、緑茶はこうやって優しく起こしてやらなきゃいけない。
茶葉を蒸らしている間に、ミニ冷蔵庫から本日のお茶請けである桜羊羹を取り出す。
白餡に桜の花の塩漬が入った羊羹は、見るだけで春の訪れを感じさせる一級品だ。
羊羹を切り分けると丁度いい感じに茶葉が蒸れ、大きめの湯飲みにたっぷりと緑茶を注ぎ入れていく。
それを一口飲んで気を落ち着けてから、楊枝で一口大に切った羊羹を食べる。
「んーっ! この甘さの中に微かに効いた塩味と、桜の風味が何とも言えん!!」
そう、俺は無類の甘党だ。
食堂ではホスト教師のイメージを崩さないようにスイーツの類いは口に出来ないから、3時のおやつはこの部屋で、食後のデザートは自室で食べるようにしている。
嗚呼…糖分が全身へと浸透していくのがわかる。
人一倍妄想のせいで頭を使う俺には、最早甘味はなくてはならない必須アイテムなのだ。
今日はまだ午前中だけど甘味を摂取しているのは、朝から妄想しまくったせいでもある。
「………良かった、喜んで…くれて」
「うわっ!!」
不意に人の声がして、ついつい湯飲みを落としてしまいそうになる。
ちょっ、誰だよ俺の癒しを邪魔すんのは!
って、それよりも俺のホスト教師としてのイメージが!!
「ごめ、ん…そんなに驚くとは、思って…なくて…」
慌てて入口を振り返ると、そこには講堂で別れたはずの相川桔梗生徒会書記君が立っていた。
「…何だ、相川か。そんなところに立ってないで、こっち座れ」
実は俺と相川君は甘味仲間だったりする。
去年たまたまここでスイーツを食べているところを見られて、それ以来二人で暇が合えばお茶している関係だ。
今食べている羊羹も相川君から貰った物で、何と相川君のご実家は江戸時代から続く老舗の和菓子屋さんなのだ!
相川君の分のお茶と羊羹をテーブルに置いて、今度は二人並んで食べはじめる。
二人でいる時間は言葉は余り交わさないけど、思いの外心地良い。
190cmはある相川君が、ちょっと眼鏡を曇らせてお茶を啜る姿とか、羊羹を繊細な手つきで切り分ける仕種とか見ると何故か癒される。
全てを食べ終わり、至福の中でお代わりしたお茶を啜っていると、何か思い出したのか相川君が小さく声を漏らした。
「………あ、そういえば」
「ん? どうした?」
「副会長がレン、呼んで来いって…」
ちょっと待てぇええっ!
相川君が来てかれこれ1時間近く経ってますけど!?
もうすぐ12時になりそうな勢いなんですけれども!?
もしかして待ってたりするのかな…いや、絶対に待ってるよね、これ。
「…ッ…しゃあねぇな、なら行ってやっか」
メチャクチャ焦ってても、ここはキャラを守るために大人の余裕を見せる。
ホスト教師は慌てたりしないのだ。
「………レン、怒って…る?」
椅子に座ったまま僅かに俯く相川君の頭を、立ち上がったついでにくしゃりと撫でる。
本当なら教師の名前を呼び捨てにするなとか、敬語を使えとか言わなきゃいけないんだろうけど、俺はどうも相川君には甘くなってしまうみたいだ。
「怒ってねぇよ。この桜羊羹に免じて許してやる」
「良かった…」
俺を見上げてふんわりと笑う相川君は、ヤバイくらいに可愛かった。
え…これ、もしかしてフラグ立った?
いや、まさかな。
『二場・食堂事変』
ただ今、食堂に着ております。
もちろんあの後相川君と生徒会室に行ったんだけど、扉を開けた瞬間もう黒いどころかブリザードが吹雪まくっていた。
慣れているのか生徒会メンバーは余裕の表情だったけど、俺はもう内心ではジャンピング土下座をかましてたね。
実際にはできないんだけど。
どうやら今後の予定やら書類の顧問の欄に捺印しろやらの話らしかったけど、時間が時間だということで食堂でミーティングすることになった訳だ。
そして何故か、ここは寮の食堂。
校舎の食堂の方が明らかに人が少ないし近かったはずなのに、誰も何も言わずに自然な流れで寮の食堂まで来てしまった。
言わずもがな、桜君を見るためだろう。
まさか一緒になって食堂イベントを見る羽目になるとは思わなかったけど、これはこれで美味しいので良しとしよう。
食堂内に入った瞬間、爆発するかのような歓声が轟いた。
うわ、ガラスが震えてる…最早凶器と言っても過言ではないだろう。
流石の生徒会メンバーもこれには眉を寄せているけど、今は文句も言わず先頭を歩く香坂副会長について行ってる。
目指すは役員専用の2階席……ではなく、一般の席。
「やぁ、桜君。朝振りですね」
もぐもぐと王道にオムライスを食べていた桜君の肩に手を置いて、香坂副会長が黒くない笑みを浮かべた。
その瞬間、さっきとはまた違った声が上がる。
「香坂様が下の名前を呼んでいらっしゃる!!」
「何あのオタク!!」
「香坂様に触んじゃねぇよ!!」
振り返った桜君も驚いているのか、唯一見える口があんぐりと開いてしまっている。
「あ……百合」
え、下の名前呼び合ってんの!?
萌えるんですけど!!
って悶えている内に更に周りからの非難の声が増す。
親衛隊持ちの生徒は余り名前で呼ばれるのを好まないから、必然的に名前を呼ばせる=お気に入りみたいになっている。
だからこの反応は至極当然だろう。
「へー、君が桜。俺は生徒会会計の関紫陽花だよ。紫陽花って呼んで?」
「あ、あぁ。わかったよ、紫陽花」
「ボクは書記の鈴枝桃だよ! こっちも同じ書記で相川桔梗☆」
「よろしくな、桃に桔梗」
生徒会が挨拶すればするほど、桜君への非難の声が高まっていく。
というか、桜君の向かいに座ってる爽やかな神田君は良いとして、隣に座ってるのはまさか2年で1番の問題児、孤高の不良・猫柳梅君ではないか!?
早速不良まで手なずけるなんて、流石俺が見込んだ王道なだけあるな。
俺が感心している間にも挨拶が進み、何やら澤村会長に桜君が立ち上がって怒鳴っているみたいだ。
澤村会長がニヤリと悪い笑みを浮かべた瞬間、桜君の腰を引いてななな何とっ、キスを打ち噛ましたのだ!!
うあ゛ーっ!! これ鼻血出てない、これ!!
ヤバイ生チューだよ!!
おい、写真部写真撮ったか!?
明日の新聞に載せろよっ、貰ってやるから!!
後生大事に保管するから!!!!
「んっ、ん゛ーっ! …はっ、な、ななな何すんじゃボケェエエエエッッ!!」
ようやく解放された桜君がわなわな震えたかと思えば、渾身の力で澤村会長の顎に強烈なアッパーを決めた。
おいおいマジかよ! 今決まったよ、アッパー確実に決まったよ!!
ほらっ、澤村会長が膝付いてるしっ、あれ絶対脳が揺れてるから!!
普通は頬殴ったり、足蹴ったりじゃないの!?
「……テメェ、面白ぇじゃねぇか…気に入った。特別に菖蒲って呼ばせてやるよ、桜」
明らかに青筋の浮かんだ香坂副会長に支えられて、澤村会長が立ち上がりながらまた悪い笑顔になる。
あれだけ強烈なアッパー食らって笑ってられるなんて流石だとは思うけど、そんなこと言うから周りの絶叫っぷりが半端じゃないんですけど。
これは確実に親衛隊に目を付けられたな。
桜君には悪いけど、これも大切なイベントだから我慢してもらうしかない。
俺に出来ることはしてあげるけど、事前に先回りして止めることはできないんだよ…俺は教師である前に腐男子だから!!
心の中で桜君にエールを送りながら、今度こそ2階席へと向かう一行に続いて俺も階段を上がる。
あ、澤村会長ってばもう一人で歩いてるよ…もしかしたらこの人もチームとかに入ってるのかもしれないな。
少しずつ擦れが生じてきた王道だけど、まだまだ軌道修正は可能だ!
負けるな蓮華!
明日の萌えは己が手で作り出すのだ!!
『三場・役員専用席』
下の席も高級レストランレベルだけど、この役員専用席は格が違う。
何せ2階にはまた別に厨房があって、役員専用の特別メニューが用意されているらしい。
全く、信じられない。
長いテーブルには純白のクロスがかけられ、花瓶には色とりどりの花が活けられているし、床には細やかな織り目の絨毯が敷き詰められているときたもんだ。
初めて目にする光景にキャラ作りも忘れて呆れてしまった。
もうこれは異次元だとでも思い込まなきゃやってられないレベルだ。
思い思いの席に座る生徒会を横目に、俺もウエイターが引いてくれた椅子に腰掛ける。
………ヤバイマズイ困った。
俺テーブルマナー守れるかわかんないんだけど!!
ナプキンの使い方やカトラリーを外側から使うとか基本的なことは知ってるけど、箸が大好きな俺はフォークとナイフが壊滅的に下手だ。
絶対に音を立ててしまうに決まってる。
ホスト教師は『実はマナーが綺麗』みたいなギャップがないといけないんだよ!!
あー…どうするよ、これ。
どうやって回避したらいいのかもわかんねぇよ!!
「んー、今日はAにしよっかな☆」
「じゃー俺はBで」
「私はAをお願いします」
「俺はAで、メインはAとB両方持ってこい」
「………B」
何でメニューが二種類しかないんだよ!
渡されたメニューには、左側にAコース右側にBコースのフルコースメニューしか書かれていない。
いやいやいや、これは流石にマズイですよ奥さん。
こんなしっかりしたコースメニューじゃ、とてもじゃないけど箸を頼める雰囲気じゃない。
「あれぇ? 何でここにいんの、蓮華センセ」
尋常じゃないほど冷や汗が出そうになった矢先、後ろの方から声がかけられた。
振り返ると今階段を上ってきたのか、入口の方に真っ白な髪の生徒が立っていた。
「…何でテメェがいんだよ、藤」
不機嫌そうな声を出したのは、俺じゃなくて澤村会長だ。
「何でじゃないでしょ? 生徒会で仕事があるから今日は校舎の方の食堂に行くかと思えば、まさかまさかのこっちに居るし。しかも何だか凄い騒動になってるみたいだし? これでもオレ、風紀委員長だから見過ごす訳にはいかなーいの。わかった、菖蒲?」
流れるような余り抑揚のない独特な話し方をするこの生徒は、泣く子も黙る天下の風紀委員長・澤村藤だ。
名前からもわかるように澤村会長と澤村委員長は兄弟で、しかも三つ子らしい。
双子は王道だけど、三つ子は流石に聞いたことないよね!
二人の他にもう一人末っ子が居るんだけど、これがもう顔がそっくり瓜三つ。
髪型と性格が違うから辛うじて見分けられるけど、それがなかったら見分けることは不可能だろう。
とにかく澤村委員長は白く色を抜いた髪をツンツンと立たせている、緩くて底が見えない不思議な生徒だ。
もちろんかなりの人気があるんだけど、風紀委員の立場をフルに利用して親衛隊を解散させたらしい。
親衛隊をセフレ代わりに使っている兄とは大違いだ。
そんな澤村委員長の言葉なんか気にすることなく、澤村会長は悠々とグラスの水を飲んでいる。
「アイツ等が勝手に騒いでるだけだろうが。俺のせいじゃねえよ」
いやいや、どう考えても一番の原因は澤村会長だろうが…弟に迷惑かけて恥ずかしくないのかよ!!
とは口が裂けても言えない。
「自覚がないのは重症だよね。あ、蓮華センセ。折角のところ悪いんだけど、ちょっと風紀まで来てくれる?」
香坂副会長にも負けない黒い笑みを浮かべながら澤村委員長が俺の肩に手を置くと、一瞬にして場が硬直した。
「生徒会じゃ話にならないから、蓮華センセに事情聴取するよ。菖蒲、あんまり調子に乗ってると足元掬われちゃうからね?」
「あぁっ? 上等じゃねぇか。引き擦り落とせるもんなら落としてみろよ」
同じ顔が睨み合う中、俺はといえば小刻みに身体が震えるのを懸命に堪えていた。
だって……だって!!
ヤンデレ弟×俺様兄だなんて素晴らし過ぎる!!
愛してはいけないとわざと距離を置くものの、それでも惹かれてしまう二人の兄弟…
禁断の愛とは知りながらも止められない想いは、やがて狂気的な衝動へと変化していき弟は兄を監禁!!
ぐはぁっ!!
萌えるっ、萌え過ぎる!!!!
そこに末っ子まで絡んできちゃったりなんかしたら、俺はもう飯が9杯はいける!
「そんな野郎でいいなら、いくらでも連れていけ」
「言われなくてもそうするよ」
嗚呼っ、俺は当て馬なのか!?
素っ気ないお兄ちゃんに振り向いてほしくて俺にちょっかいを…
なんて可愛い奴!!
『四場・風紀委員室』
「蓮華セーンセ!」
「えっ? うわ、ここ何処ッ」
妄想に囚われていた俺は、耳元で名前を呼ばれよくやく我に返った。
確か役員専用の食堂にいたまでの記憶はあるんだけど、いつの間に移動したんだろうか。
視線を巡らせれば8畳くらいの部屋に、テーブルと3人掛けソファが2つに扉がひとつ、窓はない。
見たこともない室内よりも、実は今一番気になることがある。
それは…
「んー? ここはね、風紀委員室の奥にある生徒指導室だーよ」
「いや、それより………近くないか?」
テーブルを挟んで向かい側にもソファがあるのに、何故か澤村委員長は俺の隣に座っている。
しかもまるで肩を組むみたいに俺の後ろにある背もたれに腕を回し、メチャクチャ綺麗な顔を必要以上に近付けてくる。
そりゃ、綺麗だし肌もツルツルだし笑顔も美しいことこの上ないしいい匂いもするんだけど、澤村委員長は男だ。
綺麗と言っても女性的ではない男性的な美しさだし、身体なんて俺よりも逞しくさえある。
重ねて言おう。
俺はノーマルだ。
どんなに見目の良い男であろうと近寄られたら鳥肌が立つ。
これが俺以外の男相手だったらどんなに萌え……嬉しいことだろう。
「えー…蓮華センセってば冷たくない? 折角あの場から助けてあげたのにー」
「…は? 事情聴取じゃなかったのかよ」
「事情聴取だよ? もうすぐ他の子も来るし」
訳がわからん。
澤村委員長とは去年ちょこっと話をしたことがあったけど、相変わらずフラリフラリのらりくらりしていて掴み所がない。
にしても、他の子って誰だ?
事情聴取なら澤村委員長だけで事足りると思うんだけど…
「委員長、連れて来ました」
「あ、入ってもらってー?」
不意にドアが開いたかと思えば、一瞬顔を出した恐らくは風紀委員と思われる生徒に続いて、王道転校生・山吹桜君が顔を出した。
桜君が部屋に入るとまるで逃げるように素早く閉められた扉に、桜君も俺も目を見張ってしまう。
いや、正確には桜君の目は見えないんだけど雰囲気でわかる。
これで部屋の中には俺と桜君と澤村委員長の三人になったわけだけど、まさかこれは…ヤンデレ風紀委員長×王道転校生のフラグ立った!?
「あ、君が山吹桜君? 立ってないでこっち座りなよー」
立ち上がった澤村委員長が、桜君の腰を抱いて俺の向かいのソファに座る。
もちろん隣に座ってる桜君にベッタリ引っ付いたまま長い足を窮屈そうに組む澤村委員長に、俺の内なるもう一人の俺が大変なことになっていた。
「…やっ、やめろよアンタ! 誰だか知んねぇけど、ベタベタすんじゃねぇよ!」
あーらら、桜君メッチャ嫌がってんじゃん。
無理矢理引き剥がそうと胸を押してるけど、澤村委員長に対しては逆効果にしかならない。
桜君が嫌がれば嫌がるほど澤村委員長の腕が強く抱き寄せて、今やキスしてしまうんじゃないかと思うほど二人の距離は近接している。
やれっ、澤村藤!!
いつの間に桜君を気に入ってたのかわからないしこの状況自体が謎だけど、ここでチューしなきゃ男が廃る!
というか見せてくれ!!
「ふふっ、カーワイ。お肌スベスベだし、唇もピンクだし、声もリアクションもいいね」
「きっしょく悪ぃんだよ!! ちょっ、アンタ担任だろ! 何とかしろよ!!」
心の中でエール出しまくってたけど、どうやら桜君は俺という存在に気付いてしまったようだ。
気付かれている以上、桜君を気に入っているホスト教師としてここで止めなきゃならない。
「澤村、テメェいい加減にしろよ。そいつは俺専属のパシリなんだよ、勝手に手ぇ出してんじゃねぇ」
嗚呼…何で俺がこんな美味しい状況をみすみす止めないといけないんだ!
まぁ、俺が招いた結果でもあるんだけど…
「ふーん、だけどオレも気に入っちゃったんだよね。ねぇ、桜。オレは風紀委員長の澤村藤っていうの、藤って呼んで?」
「わかった、から! 藤って呼ぶからはーなーせーっ!!」
澤村委員長まで下の名前で呼ばせてるよ!
チューイベントこそなくなったみたいだけど、隣り合っている二人を激しく写メりたい!!
桜君に再度胸を押されて渋々離れてしまった澤村委員長は、ソファの背もたれに身体を預けてやる気なさそうに俺に向き直った。
…もう一回絡んでくれないかな…
「まー、大体何があったかは知ってるんだけど、改めて二人から話を聞かせてもらうよー」
side:澤村藤
普通に事情聴取してから、桜と蓮華センセは帰って行った。
生徒指導室に一人残ったオレは、さっきまで蓮華センセが座っていたソファの座面をゆっくりと掌でなぞっていく。
あの人の温もりを感じるだけで、胸のところがキュウッと締め付けられるような心地良い苦しさがオレを浸蝕する。
蓮華センセが喜んでくれるんなら、好きでも何でもない奴に絡むのも愛を囁くのもへっちゃら。
そんなことくらいであんなに熱い眼差しで見てくれるんなら、オレの気持ちなんか一生伝わらなくてもいい。
だけど…
「誰かのモノになったら、そいつ殺しちゃうかもー」
オレには貴方だけだから。