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第一幕・変装転校生

 持ち得る全てのコネを使って入った、全寮制の男子校。

 金持ちばかりが集まり、成績や家柄によってクラスや寮を分けられ、生徒会は人気投票で決まり親衛隊など普通にいる。

 ゲイやバイの巣窟。

 このパラダイスを見付けるのに、俺がどれだけ苦労したことか。

 この楽園に入るのに、俺がどれだけ心血を注いできたことか。

 そして晴れてこの学園の一員となって1年が経った今日、あの夢にまで見たイベントが幕を開けた。


「……で、お前が俺のクラスに転校してきた山吹桜か」

「おうっ、…じゃなかった、はい!」


 目の前にはあからさまにカツラだとわかるボッサボサの黒髪に瓶底眼鏡という、どう見ても超高級ブランド物のブレザーには似つかわしくない容姿の少年が立っている。

 しかし、鼻筋は通っているし肌も白く唇は淡く色付いているのが伺える。

 これは絶対に確実に間違いなく美少年だ。

 惜しむべくは身長178cmの俺と大して変わらない長身だということか。

 そんな変装転校生は、どう考えても下手くそな敬語を喋ってるし、よくよく見てみれば結構引き締まった身体をしている。

 こりゃ、元チームのヘッドフラグ立ったんじゃないか?


「……てか、アンタ本当に教師かよ。…ッス」


 何だ最後の『…ッス』は。

 それ付けとけば敬語になるとかないからね!!


「当たり前だろうが。俺の何処をどう見たら教師じゃねぇっつーんだよ」

「どこって、明らかにホストじゃん。…ッス」


 もういいよ、諦めたよ偽敬語は。

 まぁ、そこも王道っぽくて俺的にはドツボ突いてるからな。

 これまででわかった通り、俺は腐男子だ。

 しかも、バリバリの生物教師。

 黒いスーツに開けたワインレッドのシャツ、シルバーアクセが首やら腕やら耳やら指やら腰やらに光っていて、極めつけは暗い赤に染めた長めの髪を軽くセットしているという教師にあるまじき姿。

 この転校生君が言った通り、どっからどう見てもホストだ。ホスト教師だ。

 更に…


「…中々威勢が良いな、気に入った。お前を俺専属のパシリにしてやる。泣いて喜べよ、桜」


 俺様微鬼畜が上に付いたホスト教師なのだ。

 俺は考えた。

 最も安全に健全に萌を楽しめるポジションは何なのか。

 そりゃもう、学生時代から考えていたさ。

 学生として王道学園に入学するなんて、はっきり言ってアホがすることだ。

 どんなに影薄く過ごしていようと、どんなに王道ポジションにいようと、完全に安全とは言い難い。

 世に出回っている『腐男子受け』の多さから見てわかる通り、腐男子である限り平凡でも生徒会メンバーでもいずれは『腐男子受け』フラグが立ってしまうのだ。

 そこで俺が出した結論がこれだ。


 俺様微鬼畜ホスト教師。


 かなり美味しい立場で大人の魅力ムンムンにも関わらず、絶対に主人公とゴールインしない奇跡のポジション。

 更には学生じゃない分、親衛隊から制裁を受ける心配もないし、迫られたとしても「ガキにゃ興味ねぇんだよ」の一言で『大人』『俺様』のイメージを際立たせながらも貞操を守れるという素晴らしい役柄。

 そして、今年度から生徒会の顧問となったもんだから、これからは王道見放題ってわけだ。

 ホスト教師を目指して早10年!

 23歳にしてようやく王道転校生総受けというドリーム切符を手にした俺は、今まさに凄まじい達成感を噛み締めていた。


「…ふっ、ざけんな! 誰がパシリなんかになるかよっ、このホスト!!」


 嗚呼、桜君…君はなんて良いリアクションをするんだ!

 これでもかなりの数のファンを抱えているモッテモテの俺にこの態度……これは確実に食堂イベントくるな!

 もちろん桜君をここまで連れて来た副会長君も、俺が顧問という立場をフルに利用して学園を案内させたのだ。

 思惑通り、副会長君は桜君を痛く気に入っていたようだし、今日の昼は絶対に食堂に行かなければ。


「ピーピーうっせぇな。生物の単位落とすぞ?」

「……うっ! …この卑怯者ッ」


 理事長の甥である桜君は、前の学校で問題を起こしたとかで2年生の新学期からこの学園に『裏口』入学した。

 つまりは生粋のおバカさん。

 いいねぇ、こうやって王道転校生と無理矢理接点作っても不自然じゃないキャラ。

 瓶底眼鏡と長すぎる前髪のせいで見えないけど、睨んでくる桜君は鼻血が出そうなくらい王道だ。

 今日のために堪えてきた日々が、今まさに報われる!!


「って、もうこんな時間じゃねぇか。おら、さっさと行くぞ」


 君が主人公の王道物語へ☆

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