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ピペルパン通りのスキル剥奪屋さん  作者: KAME
ピペルパンの少女
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よく晴れたなんでもない日

 玄関から外に出て、朝の日差しを浴びる。職人さんの腕が良かったのか、昨日直してもらった扉は軋む音すらたてなかった。


「ああ、いい朝だわ――」


 心の底からそう思う。

 昨日は買い物に行ったり二人もお客さんが来たり、その後に扉の修理の人が来たりと大変だった。……普通の人ならそこまで大変でもなかっただろうけれど、三回吐いた。

 でも、今日はなにも予定がない。お金は昨日ロアさんからたくさんもらえたからしばらく心配ないし、食べ物は十分あるから買い物に行く必要もないし、お客さんは元々少ないからたぶん来ないし、誰とも会わずゆっくりお休みできる。最高の日だ。


 今日はなにをしようか。このままベッドに戻っても二度寝してもいいし、いい天気だし久しぶりに庭の手入れとかやってもいい。昨日買ってきたちょっといいお茶を淹れて楽しむのも捨てがたい。

 なにをやってもいい。誰にも会わなくていい。小鳥たちが奏でるしらべとともに踊り出してしまいそう。


 いや、いいや。もう踊ってしまおう。どうせこの辺りは寂れていて、空き家ばかり。お隣さんなんていないのだから、誰にも見られる心配なんてない。

 腕を伸ばして、脚でステップを踏んで、クルクルと回って。ダンスなんてよく知らないけれど、この心の軽さを表現するにはこうするのが――



「おはよう、剥奪屋殿」



 声を掛けられてビクッとなった。ワケの分からない踊りの格好のまま、ピタリと止まってしまう。

 見られた。朝の陽気を浴びて気分が昂ぶってド素人のメチャクチャなダンスを踊り始める恥ずかしいところを他人に見られた。


「お、おはようございま……え?」


 また朝から吐くのかと後悔しながら、ギクシャクとした動きで振り向く。そこにいた人の姿を見て、思わず驚きの声が出た。

 見覚えのあるフードを目深に被り、封印の装飾具をいっぱいに身につけた男性。


「ロアさん?」

「ああ。実は昨日見たこの空き家が気に入ってしまってな。南も落ち着いて軍も縮小の方針を固めつつある今、退役してこの辺りに住むのもありかと思い切ってみた」


 新居を手に入れて嬉しいのだろうか、お隣の家の庭からあんな不審者の格好から出るとは思えない明るい声が聞こえる。

 軍人ってそんな簡単に辞められるものなのだろうか。空き家の購入もそんなに簡単なものだっただろうか。頭が理解を拒否しようとするけれど、つまり彼は、今日からその家に住むということだろうか。

 胃がキリキリして、グワングワンと頭痛がして、わたしの楽園が壊されたのだということだけが分かって思わず倒れそうになって。


「これからよろしく、アネッタ殿。――それと、すまない。間違えて戻してしまった威圧スキルの剥奪を頼む」


 こうして、よく晴れたなんでもない日、わたしに少し変わったお隣さんができたのだった。


とりあえずキリの良いところまでで、なろうコン12に滑り込みですー。

スキルのある世界を書きたいなと書き始めたけれど、たぶん間違えている気がする。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 間違えたなんてとんでもない。独創的でこれからが楽しみな世界観
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