衣装。
真っ赤な花のようなドレスを体にあてられ。
「お似合いですわ」
「とてもお綺麗です」
そう褒めそやすお針子さんたち。
耳が丸い。ねずみ系の獣人? なのかな。
かわいらしいお顔にまあるい耳が乗って、手指も小さい。
この小さい手が縫い物なんかに有利なんだろうか?
チャキチャキ動く二人。ほんと雰囲気が小動物といった感じだ。
ドレスはなぜか赤系が多かった。
レオンハルトさまが自ら選んだ色だという話だったけれど、わたくしに似合いそうな色が彼にはこういった赤系に見えているのだろう。
薄いピンク系や、ベージュ、そしてスカイブルーな色のものもあるけれど、数の多さでは圧倒的に赤だった。
確かに。姉様は昔から赤いドレスを着ていることが多かった。
わたくしは、そのお古をもらっていたからやっぱり自然と赤いドレスになる。
どこかで姉様を見かけたのだとしたら、そんな赤が印象に残っていたのかもしれない。
それとも。
わたくしも姉様も髪色が赤みがかったブラウンなので、その色に合わせてくれたのだろうか?
どちらにしても、赤色は好きな色だから、嬉しい。
いろんな赤がある中、わたくしは薔薇のようなデザインのドレスを選んだ。
いくつもの大輪の薔薇が浮き出たような。
ふんわりとしたスカートも、薔薇の花弁を集めたように見える赤いドレス。
デコルテは大胆に開いているけれど、それでも充分気品があるように見える。
ふわっとした肩までのドレスに、同じ柄のふんわりとした付け袖。
(これを着て、レオンハルトさまの隣に立つの、かしら……)
ここに来るまでは考えても見なかったそんな状況。
嘘、だけど。偽物、替え玉、だけど。
心がざわめく。
(本当に、いいの?)
そう、逡巡して。
♢ ♢ ♢
衣装は大急ぎで仕上げるらしい。選んだのは今日の午後に着るドレスと一週間後の披露宴の場で着る衣装の二着。
今日のドレスが真っ赤な薔薇のドレス。
披露宴用は同じ薔薇の意匠だけれどもう少し薄い色のピンク。
今日の分のサイズお直しが済むまでの間、わたくしはお風呂で磨かれることになるらしいとミーア。
衣装合わせの大部屋から外に出て、今度は大浴場に向かうのだとのことだった。
(お部屋のお風呂よりも大きいのかな)
そんなふうに思いながら。