残滓。
「ふむ。ノームの森に居たと」
「ええ。お父様。先日弱っていたところを見つけて。あ、でも今日は元気になっていたのよ」
「今まで猫科の動物は確認がされたことはない。森に張られた結界は空からの侵入をも防いできたはずだ。それなのに、か?」
「だって、居たのは間違い無いのですもの。レイアだって見てるわ」
「お前が持ち込んだのでは無いのか?」
え?
「外で拾った子猫を森で飼おうとしたのでは無いのか?」
「そんな! わたくしそんなこと考えたこともありません!」
ああ。お父様は完全にわたくしを疑っている。
そうか。
誰かがこの子をあの森に連れてきたと考える方が自然、と言うことだ。
勝手に入ることのできない森。わたくしたち王族しかあの扉を自在にくぐることはできない、そんな場所だもの。
従者だって、あくまで王族と一緒の時でないと扉を開けることはできない。
仮に王族と一緒に扉を通ったとしても、もし一人取り残されたら帰ってくることもできないから。
「お父様、信じて。わたくし、そんな……」
ギロリとこちらを見るお父様の怖い顔に、だんだんと声が小さくなっていく。
いくら言っても無駄かもしれない。
お父様は役立たずのわたくしのことなんか、もう愛していないのだろうから。
そう思うとだんだんと顔が曇っていく。涙が溢れてきそうになるのを必死で堪えて。
「ふむ。見せてみろ」
え?
「それを見せろと言っている」
怖いお顔とは裏腹に、優しい手つきで子猫を抱き上げるお父様。
何かを調べるように子猫の全身を撫でまわし。
「弱っていたと言ったな」
「ええ、最初見た時は黄色い毛玉にしか見えなかったのです。何かの切れ端か何かかと。まったく動く気配もなくてうずくまっていて……」
「ふむ。回復魔法の残滓がみえるな」
え?
「それも、我ら王家特有の魔力紋に近い。これは……マリアリアにも話を聞かねばならんな……」
ああ、お姉様。お姉様がこの子を回復させてくれたのかしら。なら、お姉様に感謝しなくちゃだ。
「まったく。猫が飼いたいならそう言えば良いものを。わしは反対などしないのに」
その言葉はほんと小声で。
かろうじて聞き取れた。
「お父様……」
「まあいい。この子猫は健康そのものだ。もうどこにも悪いところはなさそうだ。おまえがしっかり世話をしてやるといい」
そういってお父様、わたくしに子猫を返してくれた。
「にゃぁ」とわたくしの胸に抱かれ丸くなる子猫。
良かった。
この子と一緒にいられる。
嬉しくって。
可愛らしい子猫の額をちょこっと指で撫でると、代わりと言わんばかりに、にゃっとその指を舐めてくれた。




