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神森。

 わたくしが撫でるのをやめたせいでなんだか寂しそうな表情を見せるレオン様。

 自分からわたくしの手に頭を擦り付けてくるのまでは拒否できなくて、手を引っ込めることもできずそのままベッド上でしゃがみ込んでいた。

 ゴロゴロ喉を鳴らしながら、まるで猫のような仕草を見せるレオン様にわたくしは子供の頃一時的にお世話をしていた一匹の子猫のことを思い出した。


 色合いもちょうどレオン様と一緒。

 小さくて、とても可愛らしくて。


 メルクマール聖王国の聖都、その北側に位置するノームの森は、神が降臨する場所と、一般には立ち入ることの許されない神聖な森として崇められていた。


 天を覆うほどの高い杉の木が光を遮る。

 一歩踏み入れるとそこは聖なる氣が満ちた清浄な空気がとても心地よく。

 わたくしは一人の時間、ここにくるのがとても好きで。


 神の結界があるせいで魔物も魔獣もここには立ち入ることができない。

 常にそう聞かされていたおかげか、恐怖は感じなかった。

 ただただ心地よい気配と自分の中が満たされるような清浄なマナを感じ、ゆったりと過ごすことのできるその時間が大好きだったのだ。


 わたくしは一回目の人生のそれも幼い頃から、自分の中のマナをうまく外に出すことができなかった。

 お父様や姉様に何度も聖魔法の使い方の指導を受けたけれど、うまくできたためしがなくて。


 父様や姉様に当たり前にできる力のほんの片鱗も、使うことができずにいたのだ。


 そんなわたくしでも、自分の中に清浄なマナが吸い込まれていくこの感覚はとても心地よくて、何度も何度もこのノームの森に足を訪れたものだったのだ。


 二回目の人生が炎に焼かれ終わった後、三回目の人生を迎えたわたくしは。


 今度こそ後悔のしない人生を送りたい。そう思うようになった。


 姉様の身代わりとして獣帝国に赴くのはきっと変えられない。

 その過程で死ぬことがあっても。

 でも、なんの努力もしないでただただ死を待つなんて、そんなの耐えられない。

 そう、思って。


 自分の中にマナがあるのはわかる。感じる。

 それをうまく外に出すことができさえすれば、きっと妖精たちは力を貸してくれるんじゃないだろうか。魔法だって使えるようになるんじゃないだろうか。


 聖なる力、魔法の力というのは概ね自分の中のマナを外に出し、それをこの世界に満遍なく存在する神の子、天使、妖精たちに与えることで力を貸してもらう行為だ。

 このノームの森はそんな妖精たちの棲家でもあるから、きっとわたくしの今の状況を解決するヒントも掴めるかもしれない。

 そんなわずかな希望を胸に、一人で森を訪れた三度目の人生の、それもまだ5歳の幼い子供だった頃。



 わたくしは出会ったのだ。


 金色のもふもふ。小さな子猫に。


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