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弱者のヒーロー

「また弱い者虐めか、いい加減やめろよ」

 俺はたった一人を三人がかりで虐めている連中に向けて言い放った。

「ンあ、俺たちとヤるのか」

 いつもは尻尾を巻いて逃げている奴らなのに、今回はやけに強気に応対だ。

「望むところだ、かかってこい」

 それから数秒間俺たちの間に緊張感が張り詰める

「じゃあお構いなく」

最初にその均衡を壊したのはリーダー格の男シュランドで回し蹴りを放った。俺はそれを難なく躱すが、シュランドに続くように二つの拳が俺に襲い掛かる。俺はそれを受け止めて、反撃を試みる。

 その時、俺の足元に氷塊が出現した。

「うっ」

 咄嗟の出来事になすすべなく俺は吹っ飛ばされてしまった。

「ふぅ、成功するか分からなかったが、うまくいったな。どうだ、驚いたか?これが俺の能力の氷生成だ。どうやらお前が無能力だって噂は本当だったようだな」


 この世界には能力というものが存在し、十四、五歳で発現する。幼い頃から俺は多く魔物を討伐する英雄譚を聞くのが大好きで、将来の夢はヒーローだった。しかし、俺には能力がなかった。

 いつか自分も強い能力を使ってたくさんの人を救いたかった。しかし、無能力者ではその夢すら叶わない。


「まだ、まだ終わっていない」

 立ち上がろうとしても力が入らない。

「はぁ、いい加減諦めろ。確かにお前は強い、それは認める。恨むなら無能力の己の運命を恨みな。もう  お前は正義のヒーローの力はない」

 物心ついてから英雄に憧れて、ひたすら鍛錬を積んだ。出来るだけ人助けをして、きっと英雄になれると思っていた。

 本当にこのまま諦めていいのか、弱かったらヒーローになれないのか。

 いや絶対に違う。

「今すぐ逃げろっ。」

 俺は出来る限りの大声でいじめられていたラントに向けて言った。怯えて動けずにいたラントは俺のあまりの剣幕に飛び上がり、一目散に逃げ出した。

「あっ、逃げやがった。今から追いましょうよ」

「ここから先には絶対に行かさない」

 俺はシュランドの足に掴みかかる。

「今のお前になりができる」

 俺は殴られ続けてボロボロになりながらも手を離さない。

「ふっ、やられたな。降参だな」

 シュランドはいきなり負けを認め、下っ端の奴らは口をポカンと開けている。

「いい加減気づけよ。上手く巻かれちまった。今回の所はこれくらいにしといてやる。さっさと行くぞ」

「ちょ、ちょっと待ってくださいよ」


 たった一人残された俺は充実感に満ちていた。

「俺は逆境なんかに挫けず、ヒーローになってやる」

 俺は夕日に大声で宣言をしてやった。

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