空知川の岸辺の憂鬱(一)
全五回連載の一回目です。
昔々、北海道の滝川市近辺を根城に自主制作で映画を撮っていた頃のことである。
国木田独歩(1871年~1908年)が滝川に来たらしいことは何となく知っていたが、どうもその足跡がよく分らない。「空知川の岸辺」を読んでみて、滝川から三浦屋に立ち寄ったが、道がないのでしかたなく歌志内へ回り、そこから山を越えて空知川の岸辺に向かった――と、頭の中の地図で足跡を追ってみても、どうにもうまくつながらないのだ。
砂川市空知太の滝川公園内に、「空知川の岸辺」の一文が刻まれた文学碑があるようなので、そこに行ってみれば何か分るかもしれないと、初夏の一日、思い立って訪れてみたのだが、その公園というのがすごいことになっていた。ろくに手入れもされていない芝は荒れ放題、“廃園”といったほうがぴったりするような殺伐とした風景で、実際、昼間なのに人影もなく、我が物顔に飛び回るカラスの群れだけが目に入る。死体遺棄現場や心霊スポットといった風情だ(当時はそんな感じだったが、今は知らない)。
ひっそりとした沼のほとり、傾いた木碑と並んで、見捨てられたかのように独歩の文学碑が立っている。どう考えても、ここが「空知川の岸辺」に関係があるようには思えないのだが……。
というわけで、ロケハンがてらぶらぶら歩き、調べ、考えてみることにした。以下の雑文はその当時の記録と記憶の屑籠から引っ張り出したものである。
本雑文の考察の舞台ともなっております北海道の空知地方の美しい自然を背景にした小説「カオルとカオリ」をセルフ出版(ペーパーバック、電子書籍)しました。ティーンエイジャーである2人のカオルと1人のカオリが織りなす四つの物語から成る連作形式の作品で、青春の希望と蹉跌、愛と孤独、死などをテーマにしています。第一部の「林檎の味」はこちらで公開しています。
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