異世界に来ました!
セレナさんと別れて、扉を開けた先には薄暗い部屋? 地下室みたいな場所が目に入ってきた。周りにはフード姿で杖を持った人達が数十人いた。なるほど、セレナさんの言った通り本当に異世界に召喚されたんだなぁ……
「セブンスカントリーへようこそ、異世界人の・・・あら?」
俺が異世界に来た事を実感していると、目の前の女性が声をかけてきた。金髪の髪をロールにしていて、豪華なドレスに身を包んでいる。頭には小さい王冠を被っている、どっかのお嬢様かな?その後ろには、鎧を身に着けた屈強な兵士が複数並んでいる
「えーと、あれ?こんなはずは・・・」
目の前の女性は戸惑いながらそんな事を口にしている。あー、恐らくこれは俺のせいだな、本来は一人しか召喚されないはずが二人も来たから混乱しているんだろう、そう思って俺が声をかけようとした時...
「あっ...お前!!」
横から少し怒気を含んだ声が聞こえてきた、そうあの時に俺が助けようとした不良少年だ。あれ何か怒ってる? 何かあったのか?
「お前、よくもさっきはぶつかって来やがったな、おかげでまだ鼻血が止まらねぇんだよ!!」
そうきれる不良君は両方の鼻にティッシュを詰めていて、怒りながら俺の胸倉を掴んで来た...なるほど、あの時に俺がタックルして壁にぶつかったから怒っていたのか...ごめんて
「あー、悪い悪い、咄嗟に助けようとしてあの陣から出そうとしたんだけど、裏目に出ちまったな、ごめんな」
俺的には助けたつもりだったのだがまさかこんな結果になるとは...あまり納得はできないがやってしまったのは事実なので、俺は不良君に謝罪した
「大きなお世話なんだよ!誰も助け何て頼んでねぇわ!」
……いやいや、助けてくれええとか情けない声を出していただろ!結果的には俺が悪いけど、はぁ...こいつ嫌いだわ。謝ったけど怒りが収まる様子がない不良君...よしここは俺の必殺技シリーズの一つ、変顔でこの場を収めるしか...
「お二方落ち着いてください、まずは自己紹介をいたしましょう。私の名前はメリア=ブランデット、このイスカンダル王国の第一王女ですわ」
俺達がそんな風にもめていると、落ち着きを取り戻したメリアさんがそんな事を言った。お嬢様所かまさかの王女様か...流石異世界だな
すると王女様のおかげで不良君は落ち着きを取り戻したのか、少し不満気な表情で自分の名前を言うのだった
「...五十嵐達也だ」
「自分は相沢渚です」
不満気な五十嵐君に続き俺も自己紹介をした、俺達が名前を言うとメリアさんは満足そうに頷いた
「五十嵐様に相沢様ですね、先程は取り乱してしまい申し訳ありませんでした、本来なら一人しか現れないはずの異世界の方が二人も現れたので驚いてしまいました、大天使様から色々説明を受けたと思うのですが、何かこの状態についておっしゃっていましたか?」
「えーと、実は...」
メリア王女は予想通りの反応をしたので、それから俺はなぜこうなったのかを説明するのだった...
「なるほど、そういう事でしたか」
説明を終えるとメリア王女は納得したように頷きながらそう言った、申し訳ないと思い俺は謝罪の言葉を口にした
「ご迷惑をおかけして申し訳ないです」
「いえいえ、元々召喚したのは私達です。こちらこそご迷惑をかけて申し訳ないですわ、それに人助けをしようとした相沢さんは素晴らしい方だと思いますよ」
謝罪した俺に対して、自分の方が悪いと謝罪する王女様、しかもさりげなく俺の行動をフォローしてくれている・・・な、なんてできた王女様なんだ...
「ちっただ余計な事をしただけだろ...」
感動している俺の耳にはそんな五十嵐君の言葉が届いた。うん!やっぱりこいつ嫌いだわ!!
俺がそんな事を考えていると、メリア王女は手のひらに収まる小さい透明な箱から水晶を取り出した。・・・明らかに水晶の方が大きいのだがどうなっているんだ? 魔法ってやつか?
「では五十嵐様、相沢様、こちらの水晶に手のひらで触れていただけますか? この水晶は熾天使様がお創りになられた特別な物で、触れると熾天使様の特別な魔力が手から流れて体を巡り水晶に戻ってきます、そうする事で異世界から来た方の適正を図る事ができます。
勇者なら水晶が赤に、戦士なら青に光ります、大天使様の所で適正にあった特別な武具か魔法をもらったと思うのですが、あくまで確認の為なのでご協力をお願いします」
なるほど、そんな装置があるのか。しかし熾天使様か...大天使様もいるし後で色々とこの世界の事を教えてもらおう。そんなこんなでまずは五十嵐君から水晶に触れた、結果は透明な水晶は青色に光った
「ありがとうございます、五十嵐様は戦士で間違いないですね、相沢様は巻き込まれた形なので恐らく反応しないと思いますが一応お願いします」
少し申し訳なさそうにそんな事を言ってくるメリア王女、何かすいません...そして隣でニヤニヤしながら俺の方を見てる五十嵐君・・・その顔を殴りたい
「はい、わかりました」
返事をして俺はその水晶に触れた、その瞬間眩い光が...出るわけもなく予想通り水晶は何も変わらなかった。・・・べ、別に期待してないけどね!あわよくば光らないかな~何て思ってないけどね!!
「お二方ありがとうございます、予想通りですね、ではこれから戦士だった五十嵐様はイスカンダル王国の国王に謁見していただきます。
本当は相沢様もお連れしたいのですが、謁見を許可されているのは戦士様もしくは勇者様なのでお許しください。ですが安心してください、相沢様は大切なお客様としてお迎えいたしますので」
そう安心させるように優しく微笑むメリア王女、本当にこの人はいい人だな...
「では五十嵐様は私に付いてきてください、相沢様は別の物に案内させていただきます、それと五十嵐様は謁見の間に行く際にはその剣は一時的に預からせていただきますね」
そう五十嵐君の腰にはいかにも〇ラクエに出てくる剣みたいな物を腰に下げていた。おそらく、大天使様に貰ったのだろう
「おう、後で返してくれよ?」
「はい、その剣は大天使様からの下賜されたものなので、大切に保管しておきますわ」
やっぱりそうか……五十嵐君、王女様には敬語を使え!というか初対面の人には敬語を使え!
「羨ましいか?だけど、残念だったなこれは選ばれた者しか与えられない物なんだ」
そんな風に剣を自慢げに見せてくる五十嵐。まぁ、確かに異世界にきて特別な物を与えられてテンションが上がるのはわかる、だけどそれにしても鬱陶しい奴だな、文句の一つでも言ってやろうと思ったが、ここで言い返したらこんな奴と同類になってしまう、ここはスルーしよう
「...では五十嵐様は私に付いてきてください。相沢様また後でお会いしましょう」
そういってメリア王女は軽く一礼してから扉の外に消えていった。後を続いて五十嵐が部屋から出る間際に振り返り俺に言葉を投げた
「じゃあなモブ君、折角の異世界でお前は寂しく惨めに過ごしてくれ」
鬱陶しいわ!さっさといけやボケ!・・・そうして王女様と五十嵐は部屋から出て行ったのだった。……はぁ、何でこんな事になったんだろうなぁ...
二人が部屋から出て行った後に俺が立ち尽くしていると、黒髪七三で小柄なメイドさんが話しかけてきた。メイド...元の世界のメイドとは違い凄く気品を感じる
「初めまして相沢様、私はメリア様の専属のメイドで名前はシルフです、これから私がこの世界について説明させていただきますね。まずはここを出ましょうか、客間にご案内します」
「初めまして、自分は相沢渚です。よろしくお願いします」
「はい、では相沢様、参りましょうか」
そうして俺はシルフさんに続いて部屋の外に出たのだった...地下室?から出てしばらく歩いて行くといかにも豪華そうな扉の前で、シルフさんは止まった
「ここが客間になっております、では入りましょうか」
そう言って扉を開けるシルフさん、中の光景に俺は絶句した...簡単に言うと部屋の中は物凄く豪華だった...床には凄く綺麗な大理石? みたいな石が敷き詰められていて、天井からは美しいシャンデリアがぶら下がっていた。部屋の隅には天使の像や綺麗な絵画が飾られている。
部屋の中央には綺麗なテーブルに高そうなソファーがあり、テーブルの上には美味しそうな果物が置いてある。え?これが客間?さ、さすが王宮なだけあって凄いな……あまりの凄さに驚きつつもソファーに座ると……って柔らかっ!!
「相沢様、こちらをどうぞ。ではまずは何からお聞きになりたいでしょうか?」
そう言って紅茶を出してくれた後にソファーに座りながら、優雅に紅茶を飲むシルフさんは凄く絵になっていた
「そうですね...まずはこの世界について知りたいです」
「なるほど、分かりました、では...この世界セブンスカントリーは人族、神族、魔族、そして邪王がひきいる邪王軍が存在しています。最初に挙げた3種類の種族は友好的な関係になっています、そして人族には3つの国が存在しています。
シトラ王国、カライヤ王国、そして今相沢様が滞在しているイスカンダル王国です、この国は3カ国の中でも一番人口が多く最も栄えてると言っていいでしょう。こちらの地図を見ると位置関係などが鮮明に分かると思います」
そういって地図を取り出すシルフさん、地図には先程言っていた国が描かれていた。その三カ国の国の構図は三角形になっており、頂点にイスカンダル王国、左下にシトラ王国、右下にカライヤ王国となっている
「あとこれは重要な事なのでしっかりと聞いてください。人族、神族、魔族は3カ国を平等という形で同盟していますが、実際は神族と魔族の二つの強さは人族とかけ離れているので、その気になれば一日も立たずに人間は殲滅されるでしょう」
「そ、そんなに力の差があるんですか!?」
強すぎだろ、魔族に神族...
「はい、それほどに違います...ですが安心してください、魔族も神族もそんな事をするような方達ではないので」
「なるほど、自分の世界だと魔族は基本悪い奴と相場が決まっているので、少し驚きました」
漫画でもゲームでも基本的に魔族は敵軍だ、味方である事何てまずないしなー
「なら魔族と神族の種族は皆さん友好的なんですね」
「確かに大多数の魔族はそうですが、一部そうではない者も存在します。そもそもなぜ明らかに格下の人間と魔族が関係を築いているのかというと、それは魔王様のお力のおかげです
魔王様はかつて無秩序だった魔界を纏め上げ、今は四天王様と共に魔界の管理を行っています」
どうやら本当に魔王様はいい存在らしい、ていうか四天王きた~!そりゃあ魔王がいればやっぱりいるよな!何か少しテンションが上がってしまう...
「四天王様とは?」
「はい、四天王様は炎帝様、妖精王様、獣皇様、黒影様で魔王様が最も信頼している4体の部下です。4体とも物凄い位の高いお方なのでお目にかかれる事はほぼないですが、妖精王様は人族に一番友好的で公の場に顔を出す事が多いですね、皆さんとてつもない力をお持ちしている偉大の方なので、人族の王でさえ粗相がないように接しています」
魔王だけではなく四天王もいい奴なのかよ、ことごとく元居た世界の常識が崩れていくな……
「神族の方は基本的に地上の事に無関心なので信仰する者は多くても敵対する可能性はないですね」
「なるほど、魔族側のTOPは魔王様だと思うんですが、神族側のTOPは誰なんですか?色々な天使の方がやはりいるんでしょうか?」
大天使様とか熾天使様だとか色々な天使がいるんだし、凄く気になる
「そうですね、そちらの説明もしないといけませんね。神族を纏め上げるのは究極神様です、この世界では魔王様を除く誰もが跪く尊き存在です。そしてお察しの通り、天使様も色々な階級に分かれています。まずは究極神様>熾天使様>主天使様>大天使様>上級天使様>下級天使様の順になっています。
神族の皆さんは人族にとって信仰するお方達です。神殿に行って運が良ければ上級天使様を拝めるかもしれませんね。あとこれは凄く重要な事ですが、天使様達には真名という物が存在しているのですが、神殿に通って天使様に気に入られれば呼ぶことを許される事があります、許可なく呼んでしまうと物凄い無礼に当たるのでお気をつけください。
天使様には~の天使(例:天空の天使など)と究極神様から与えられた二つ名があるので、人族はそれを呼びますね。皆さん凄いお力を持っています、特に主天使様から上の階級の方は別格です。お目にかかれる事はほぼありませんが...」
究極神様かとんでもなく凄い方なんだろうな...天使にも思っていた通り色々な階級がるんだな、それに真名があるのか、呼ばなように気を付けないといけないな。そういえばセレナさんは簡単に呼ぶことを許可してくれたけど、そこまで階級は高くなかったのかな? そして俺は一つ凄い疑問に思っていることがあった
「あの...それだけ凄い力を持っている方がいるなら、人間族に魔族&神族が協力してくれれば邪王軍を倒せるのでは?それとも邪王はもっと強い存在なのでしょうか?」
そう、凄い疑問に思っていた。それだけ凄い二つの種族と同盟を結んでいるんだ、協力すればわざわざ召喚儀式何てやらなくてもいいのでは?
「いえ、邪王はそこまで強くないですよ。人族から見れば脅威な事は間違いないですが」
「え?そうなんですか?ではなぜ・・・」
「そうですね、順を追って説明しますね、邪王軍は数百年前に誰かが邪王を召喚した事で生まれたとされています、邪王軍は結界に覆われたダンジョンに陣地を構えています。最初は結界も閉じていて何事もなかったのですが、ある時にダンジョンの入り口の結界が開きそこから邪王軍は地上に攻めてきました。
人族も必死に抵抗しました、ですが邪王軍の方が数も多ければ力も強いので、徐々に押されていきます、そこで現れたのが当時は人族とはあまり関係がなかった魔族と神族でした。二つの種族はあっと言う間に邪王軍を殲滅させていき、遂には邪王をも倒しました。絶望していた人族達は歓喜し救世主の魔族と神族を称え、ハッピーエンドではなく...」
終わらないんかい!!まぁ、確かにそこで話が終わったら何の為に異世界召喚されたかわからないしな
「倒したはずの邪王軍が数年経ってまた地上に攻めてきました、しかし前回とは違い人間介と関りを持った魔王様によってあっと言う間に殲滅されたのですが、ここで1つ問題が起きました」
「問題ですか?」
「はい、それはダンジョン内の邪王は不死身だったのです、それは結界のせいだと言われてますね、結界の外でなら倒せますが、数年経つと復活→中だと不死身→邪王軍が増えるの繰り返しになりました。何回か繰り返していくと邪王はダンジョン内から出てこなくなり、ひたすら軍勢を増やしていきます
そこで初めて究極神様から熾天使様を通じてお告げがありました。「「悪しき者を倒すには異世界の勇者が必要でしょう」」とそこで始まったのが異世界召喚です」
「なるほど、それで異世界召喚が始まったんですね...」
そういう事か、力は圧倒的に神族と魔族のが強いが特殊な結界のせいで不死身で、放っておいたら軍勢を増やして進行してくると...だいぶめんどい存在だな邪王
「あれ...もしかして、数百年前から異世界召喚を初めて今もまだ続いてるのって...」
「渚さんは頭がきれますね、お察しの通りだと思います。戦士様でもダンジョン内の邪王は倒せるのですが、また数年すると復活してしまします。完全に消滅させるには勇者様のお力が必要なのでしょう...」
それが数十年前から今も異世界召喚を続けている理由か、どうやら俺が思っている以上に勇者という存在を引き当てるのは大変なんだな・・・
「ふぅ、これでこの世界で重要な事項については説明できたと思うのですが、まだ何かご質問はありますか?」
かなり長めに説明してくれたので、少し息を吐きながらそんな事を言うシルフさん
「いえいえ、とても分かりやすかったです。シルフさんありがとうございます」
「それは何よりです、向こうの謁見も終わったと思いますので、私はメリア様に今後の相沢様についてのご指示を仰いできますので、少々お待ちください」
そう言って席を立ち一礼すると、客間からシルフさんは出て行ったのだった...
Q「なぜ装置は反応しなかった?」
A「どっかの神様が初めての加護で加減を知らなかったから」
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