始まりは唐突に
青春 それは学生特有の甘酸っぱい恋愛をしたり、掛け替えのない友達を見つけたり、青春を謳歌してる奴が数多くいる。だが学生全員が青春を謳歌しているかと言えば、そうではない。恋愛所か友達すらできなかった奴も存在している。
ああ、ちなみに俺は後者だな!ぼっち最高だぜ……桜並木の道、桜の花びらが春風で舞う中を歩きながら、俺は桜の花は好きだけど散る様子は見ていて切なくなるんだよな~
そんな事を考えながら大学の帰り道を歩いていると、前を歩いている男女二人の会話が聞こえてきた。
「ねぇ、この後どうするぅ?カラオケとか行ってテンション爆上げしちゃう?」
「カラオケいいな!他の奴も呼んで楽しもうぜ」
あの制服は近くにある高校の学生だろうか?女の方は化粧が派手で髪は金髪、ギャルだな。
もう片方の男は茶髪で顔は強面で、耳にはピアスがついていて、手には煙草があった。要するに不良である。おいおい高校生、まだ君達には煙草は早いぞ...
「ごめん、ちょっとコンビニ行ってくるから待ってて!」
「おう、早くしろよ」
そう言ってギャルの方が少し駆け足でコンビニの中に入って行く、不良の方はつまらなさそうに煙草を咥えながらスマホを覗いたその時に、それは突然起こった。
「な、なんだこれは!」
「!?」
そう叫ぶ不良の足元には六芒星に似た文様が突如浮かび上がってきた、昔から感だけは人一番いい俺の第六感が今すぐその場から逃げろと告げてくる。俺はそれに従い踵を返して逃亡しようとした時に、不良の男は叫んだ
「うわああ、誰か助けてくれええ」
・・・正直言って俺は不良が好きではない、しかも目の前にいる奴は知り合いではなく全くの他人、助ける義理何てあるはずがない。だけど…
「逃げろ!!」
自分でも良く分からないが気づいた時にはそう叫び、不良の元に駆けよっていた。不良は突然の事にびびって足が動かないのか怯えて立ち竦んでいた。そんな不良を俺は六芒星の文様の外に押し出そうと、力一杯タックルした
「うぐっ」
走ってタックルしたので不良は苦しそうな声をあげて、結構な勢いで吹き飛んだ。六芒星の文様は最初より眩く光っており、それを見ながら俺はやけにスローモーションになった感覚を感じながら、ああ何で俺はこんな事をしたんだろうかと考えた時だった。
「ぐへぇっっ」
先程は痛みを我慢したような声だったが、今回聞こえたのはまるで潰されたカエルの様なうめき声だった。そちらに視線を移すと吹き飛んだ不良は、六芒星の外には出ておらず、俺の考えとは裏腹に目には見えない壁みたいな物に衝突していた。
……ふぁっ!?えええええええええ!?いやいや!!こういうのって普通はあいつは助かって俺が犠牲になるもんだろ!これじゃあ無駄骨じゃねえか!!
「ちょっ、まっ・・・」
そんな言葉も空しく六芒星の光は最高潮に輝いて、地球から二人の青年が姿を消したのだった
眩い光が収まってゆっくりと目を開けると、そこはさっきの桜並木の通学路ではなく、眼前に広がるのは真っ白な部屋?見たことのない花が美しく咲き、足元には澄んだ青空が見えた。
えええ!何ここ、天国?俺死んだの?混乱状態の俺がそんな事を考えキョロキョロしていると
「・・・おや?あなたはもしかして異世界人でしょうか?」
そんな声が聞こえ振り返って俺は絶句した。腰下あたりまで伸びている美しい銀白髪で艶々な髪は癖一つ見当たらなく、瞳は今まで見たどんな物より美しいダイヤモンド……
身長は一般女性より高く170近くあるだろうか?女性の顔はまるでおとぎ話から出てきた様な、はたまた芸術作品?とりあえず俺が持てる言葉では言い表せないほど美しい。
俺の感が間違いなくこの方は人間ではない別の何かだと告げている、そんな事を考えていたら
「大丈夫でしょうか?」
「・・・す、すいません、少し混乱していて」
その女性の声は聴いただけで体に電流が走った。それほどまでに声が美しい、何とか声を絞りだして俺は目の前の女性に話しかける。
「あの、ここは一体どこなんでしょうか?何が起きたのか分からなくて・・・」
「少々お待ちください」
そう言って美しい女性は俺に手をかざした。な、何だ?一体なにを・・・
「なるほど、どうやらあなたはセブンスカントリーの召喚に巻き込まれたようですね。」
淡々と美しい声でそんな事を言う女性、召喚?セブンスカントリー?分けの分からない単語ばかりで余計に頭が混乱する、一体俺に何が起こったんだ...
「混乱するのも無理はないでしょう。焦る必要はありません、あなたのお名前は?」
「・・・自分の名前は相沢渚です」
混乱する俺とは裏腹に目の前の美しい女性は冷静にそんな事を聞いてくる
「なるほど、では渚さんと呼ばせてもらいますね。私の事はセレナとお呼びください。」
「わ、わかりましたセレナさん」
「はい、ではお茶でも飲みながらあなたの疑問に答えていきましょう」
そういってセレナさんが指をならすとすぐ近くにテーブルと椅子が出現した。まるで手品のような出来事に驚愕しながら椅子に座る。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
またもや急に現れた中身まで入ってるティーカップを出されて、俺は戸惑いつつもその紅茶?を飲んだ。
「滅茶苦茶美味しいです」
「そうですか、それはよかったです」
紅茶は好きではないのだが、これは格別に美味しい!というか美味すぎる、何か怪しいものでも入っているんじゃあないかと思うくらい...
「少しは落ち着きましたか?」
「は、はい。ありがとうございます」
「ふむ、ではまずは何を聞きたいですか?」
セレナさんのおかげで多少落ち着く事ができた、聞きたいことは山ほどある。俺は紅茶を飲みつつセレナさんに質問をするのだった
「では先程言っていた、セブンスカントリー?と召喚について詳しく教えてください」
「分かりました、セブンスカントリーとは別世界の名前ですね、要するに異世界です。そして召喚とはセブンスカントリーで行われている、戦士または勇者の召喚の事です」
ええええ!異世界があるだけでも驚きなのに勇者?そんなアニメやゲームみたいな事が現実に起きるなんて・・・これ夢じゃあないよな?そう思い軽く頬をつねる...うん、痛いわ
「勇者や戦士を召喚してるって事は、魔王?みたいな悪い奴が存在するんですか?」
そういうゲームや小説だと勇者がいれば魔王もいる、そんな俺の世界では常識に近い事を聞いてみる
「はい、魔王は確かに存在します、しかし異世界の魔王は悪ではなく、むしろ友好的で人族とも仲良くしていますね
問題を起こしてるのは邪王です、セブンスカントリーでは邪王を倒すために戦士や勇者を召喚しています。ちなみにまだ勇者の素質があるものは発見できず現状戦士ばかり召喚されていますね」
「な、なるほど...ではなぜ俺は一人でここにいるのでしょうか?もう一人男性がいたはずなんですが」
そう今この空間にいるのは俺とセレナさんだけ、俺があの時に助けようとした不良君が今は見当たらない
「そうですね、本来なら召喚魔方陣に入ると、大天使のいる神殿に召喚され素質に合わせて武具または大量の魔力などを授かるのですが、渚さんはイレギュラー扱いされてここに来たみたいですね」
そうか、本来はあの不良君だけが召喚されるはずが俺が割り込んだせいでこうなっているのか...
「え、天使がいるんですか!?」
「はい、存在していますよ」
驚く俺に淡々と返すセレナさん。魔王、勇者、天使、まじでゲームの中の世界じゃあないか!
「な、なるほど...ありがとうございます、俺はその召喚を邪魔して割り込んでしまった訳ですね...」
「別に邪魔してはいないと思いますけど、おおむねそんな感じですね」
ぐっぐは……何て事だ人助けをしたつもりがただの邪魔だったとは...非常に悲しい現実だ。そして俺は恐れていたことを口にする
「セレナさん、俺はこれからどうなるんですか?」
「そうですね、私との会話を終えたら異世界に召喚されます」
「元の世界に戻ったりはできないんですか?」
「あの魔方陣は2年に一度の発動なので、2年後なら元の世界に戻る事ができます」
oh...現実は残酷だ、俺の淡い期待は潰えた。全然ダメじゃあないか、あの時の俺の第六感よ・・・
「そう悲観する必要はないですよ」
「え?」
「確かにあなたは戦士として呼ばれた訳ではありませんが、召喚陣で現れた異世界人です。人族も悪い様にはしませんよ」
今の話を聞いて絶望している俺にセレナさんは言葉を続ける。
「先程も言った通りに本来は大天使に何かを授かるのですが、渚さんはイレギュラーなのでそれがありません。……なので1つ差し上げましょう」
「へ?」
「最強の魔法、世界の叡智、溢れんばかりの富。何でも好きな物を授けましょう」
そういうセレナさんの雰囲気は本当に何でも叶えられそうな、まるで神様の様に神々しい物を感じてしまう...セレナさんは恐らく本気で言っている。漫画やゲーム好きなら誰もが夢見る、異世界で無双してかわいい女の子を侍らせてハーレムしたり、物語の主人公にしてやるとセレナさんは言っている。
確かに魅力的な提案だ、だから俺は少し考えてから答えた。
「では異世界に行ったら目を良くしてください」
「・・・はい?」
そう俺がお願いすると先程から、一度も表情を変えないセレナさんの表情が少し崩れた気がした
そんなにおかしい事言ったかな?ちなみに俺は非常に目が悪い、コンタクトをしないとほとんど何も見えない。
異世界に行ってコンタクトや眼鏡があるとは限らない、あったとしても何かの理由でどっちかがない状態でモンスターに遭遇したら? 何もできず終わる自信がある、中学生の頃にもし自分が、異世界に行ったら? を妄想した事があった、その時に真っ先に心配したのが、視力の事と言語が通じるかだった、言語はセレナさんに通じているし、異世界に行っても問題ないと思ったから視力をお願いした
それに過ぎた力は身を亡ぼす気がする、最強の魔法? 暴発しそうで怖い、世界の叡智? 元が馬鹿だから意味なさそう、大量の富? 盗賊とかに狙われそうで怖い!と、そんな事を頭の中で考えていると・・・
「フフ、あなたは面白い存在ですね、そんな小さな願いでいいのですか?」
俺の発言が相当おかしかったのか、さっきから表情を1㎜も変えないセレナさんがほんの少しだけ微笑んだ。その表情があまりに美しく、見ただけで俺は顔に熱が集まっていくのを感じた
「はい、俺には過ぎた代物ばかりなので」
「分かりました、ではそのようにいたしましょう、それと加護をあなたに授けましょう」
「加護ですか?」
「はい、セブンスカントリーの加護とは天使が気に入った相手に施す物ですね、天使によって与えられる加護の内容は違います、一般的には滅多にされるものではありませんね。ですが私はあなたを気に入りました、なので授けましょう、私は加護を行うのは初めてですが」
なるほど、天使様に気に入られるとそんなのが受けられるのか、というかセレナさんみたいな美人に気に入ってもらえて凄く嬉しいんだが?
「相沢渚、あなたが私の加護下に入ることを認めます」
そうセレナさんが言って手をかざすと眩い光が俺を飲みこn・・・だりはしなく特に何も起きなかった
え?終わり?
「えーと、セレナさん?もう終わった感じですか?」
「はい、渚さんは私の加護元にありますよ」
「あ、ありがとうございます」
加護とかいうくらいだからもっと、凄い演出でもあるかと思ったらかなり地味で少し驚いた、それにしても加護っていうのは何の効果があるんだろう?運が上昇したりとか?
「セレナさん加護ってどんな効果があるのでしょうか?」
「分かりません」
「へ?」
「先程言った通り、私は加護をしたのが初めてなので」
「な、なるほど」
ええ、自分の加護の能力がわからないとかあるのか、まぁ俺は天使の事情は分からないのでこれ以上追及はしないでおこう
「そろそろ大天使達の方も終わりますね。では渚さん、そちらの扉から出れば召喚先に着くようにしておきました」
セレナさんがそういうと何もない所から扉が現れた、ありえない事が起きても三度目だと慣れるものだ。俺は扉の前まで進み振り返りセレナさんに話しかける
「セレナさん色々とありがとうございました」
「問題ありませんよ、こちらこそ楽しいお茶会でした」
本当にセレナさんには感謝している、あの魔方陣でそのまま異世界に行っていたら、どうなっていたかわからない...
「向こうの世界に行っても、神殿にいけば私に会えます。渚さんはまたこうして私とお茶をしながら話をしてくれますか?」
「はい!セレナさんみたいな美人と話せるなら喜んで」
俺はセレナさんの疑問に即答で答える、まさかのお誘い!こんな美人とお茶できるとか断る奴いるの?是非また来たい
「ではお待ちしています、またお会いましょう渚さん」
「セレナさんこちらこそよろしくお願いします!望まれた召喚ではありませんが、邪魔しないように頑張ります、では行ってきます!」
セレナさんと約束を交わし、俺は扉を開いて先に進むのだった
そういって渚が消えた後、セレナは一人呟く
「あの召喚魔方陣は戦士と勇者以外入れない仕組みになっています、確かに私は戦士としては呼ばれていないとは言いましたが、勇者に関しては何も言ってませんよ?」
「ようやく私の願っていた存在が現れたのですね...ああ、これが楽しみという感覚なのでしょう、渚さん、この神であるセレナメティスが断言しましょう、あなたは邪王だけでなく世界を大きく変える存在だと・・・」
そしてこの私ですら...
作者「セレナさん……あなた、その加護はある意味チート級なんですよ...」
セレナ「……何か問題でも?」
作者「あっ……すいませんでした」
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