超短編小説 二篇
【二人】
「ねえ、どうだったの?」
その晩、私は、父にそう聞いた。
「何が?」
「話したんでしょ?お爺ちゃんと、」
私がそう言うと、父は小さな声で、
「……うん」
と、答えた。
「どうだった?」
「……うん、まあ……。話したよ。無言だったけど、」
「え?……話してないの?」
「……言葉は交わしてない。だけど、話した。……こう、きゅっと、手を握って、」
「……それって、会話なの?」
「……うん」
「……なら、よかったじゃん」
「……うん」
父はそう言うと、軽く笑った。どこか、晴れやかな笑顔だった。
【チャイム】
ぴんぽーん、と、チャイムが鳴る。
遠くでは、らーそー、らーそー、と、救急車。
私は、インターホンのボタンを押して、
「……はい、どちら様?」
と、言った。
ふと、救急車が、家の前で止まった。