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見ざる私と、聴かざる探偵  作者: 霧雨アヤメ
聴かざる探偵と失楽園のアンテロス
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13.【探偵たちを追う影】

 蜜花さんの好物を教えてもらいました。

好きな食べ物はイカ墨パスタ。飲み物はコカ・コーラ。

病み系地雷系のキャラ付けかと思ってしまうほど黒い物が好きなのだとか。


それに比べたらヒメの好物は健全です。

好きな食べ物はホットケーキ。飲み物はいちごミルク。

まあ可愛い見た目ならなんでも好きでして、味は二の次かもしれません。


お腹がいっぱいになりましたので次は蛾原先輩が犯行時刻にいたネットカフェへ向かう。

距離はおよそ300メートル。


「メモに書いていた、距離100メートルに対して徒歩1分としていましたけど走ったらかなり変わりますよね。推理に支障が出るんじゃないですか?」


「生徒会長は日常用の義足しか持っていないと思うから、走るのはほぼ無理じゃないかな」


「普通の義足で走るのは難しいんですか?」


「無理に走ったら、足を痛めるし義足だって壊れるよ」


確かにアスリートが使う義足と言えばくねっと曲がったスキー板のようなものを連想する。

蜜花さんの言葉が正しいのなら今日の蛾原先輩のように平然と歩くことは難しい。

それ以前に彼女の義足は綺麗で傷はありませんでした。


話していたらあっという間にネットカフェのお店に着く。

なんら変哲のない、よくある【満喫倶楽部】というチェーン店。


店長さんに事情を教えて、監視カメラを確認してもらう。

やはり答えは「深夜2時30分から朝7時まで間違いなくご利用されてました」とのこと。

女子高生(しかもかなりの美女)がひとりでネットカフェなんて危なく思ってしまいますが貸し出される部屋はすべてロック可能。

蛾原先輩が借りた部屋は2階の28番。漫画・小説・雑誌が置かれている階です。


「監視カメラは1階、2階合わせて24台。撮れない場所は部屋とトイレとシャワー室くらいか。裏口とかは無くて外に出るためにはレジ前の入り口を通る必要がある」


「わっ!シャワー室もあるんですね。しかもエステ用品無料レンタルですって!すごっ。今度来てみよ」店内地図を見てテンションが上がります。


「男と一緒にかな?」


「違います。こういうお店はひとりで満喫するから良いんですよーだ。それともなんですか、蜜花さんが一緒に来たいんですかぁ?」


嫌味に聞こえたから煽ってみる。

可愛いヒメとは思えないくらい憎らしい煽り顔をする。



「別に。キミとはこの事件が終わったら関係は消える、好きな人と来たら良いさ」


「あ……そうですね」



興味なさげに言われた。

本当に【現在調査中の事件の関係者】として、あっさりと。

探偵は謎を解いたら去るのみ、ってんですか。


いやいや、傷付いたとかそういうんじゃねぇんです。

はなからこの人とは仲良くなれるとは思ってませんし。

口は悪いし、不愛想だし、彼氏がイケメンで腹立ちますから……まあ他の女の子みたいにヒメを邪魔者扱いしないのは、ポイント高いですけど。


と言ったって殺人事件が繋いでる関係。ろくなもんじゃありません。

この事件が終わったら今まで通り、他人。

【耳の聞こえないただの同級生】と【『死体』を見たことないただのモテ娘】、関係のない日常に戻れる。

せいせいします。


「こんな事件さっさと解決しちゃいましょうね」


「うん。そのつもり」


ネットカフェの内部を一通り見て、不審な箇所がないか探る。

そして行き着いた答えは「蛾原マイのアリバイは完璧」というもの。

アリバイの穴といったらファミレスからネットカフェへの移動時間のみ。


疑り深い探偵さんも5分くらい熟考した後「次の証拠を探すべきか」ととうとう諦めた。




消化不良のままネットカフェから出る。


すると強い視線を感じました。

顔を向けると道路を挟んで反対側の歩道、ハンバーグショップの前に革ジャンにジーパン、ヘルメット(顔が完全に見えないタイプ)を着用した人物。

すごく不審ですけど、ただのバイク乗りでしょう。

その証拠にヒメと視線があったら顔を逸らしてハンバーグショップに入って行かれましたもん。


「それで、今度はどこ行くんですか?」


「情報を集めたいからルイたちと合流かな。学校で集合する感じだけど大丈夫?」確認を取るようにこちらを見る。


「え、はい。大丈夫ですけど」


「歩き回ったから、運動不足な蜂ヶ咲はそろそろ限界だとと思って」冗談ぽく笑ってヒメのお腹に視線を落とした。


「お腹は出てませんし、ここから学校までなんて楽勝ですよ」


イラッとしたから歩く速さを上げて蜜花さんの前に出る。

後ろから「気にしてるなら瘦せなよ」なんて聞こえてくる。

勘違いのないよう訂正しますがヒメはぽっちゃりではなくて【男の子が言う『肉付きの良い娘』】程の体系。つまりちょうどいいのです。


「女の子に体重のことをイジるとはいい度胸してますね、全面戦争ですよ」


「キミだってボクに『ガリガリ』だの『貧乳』だの、好き勝手言っていたじゃないか」


「根に持ってたんですか!さては忘れた頃に昔の言動をチクチク刺してくる人間ですね!」


お互いにヒートアップするごとに小走りが加速していっていつの間にか繫華街から人通りの少ない路地裏。


ここでもかなり怖いですけどもう少し進んだら【幽霊トンネル】と呼ばれる人が通る用の20メートルくらいのトンネルがある。もちろん幽霊が出るトンネルというわけではなくて、風の音が人間の声に聞こえてくるってだけ。

ただ小さい電球が数個ついているだけで、かなり暗い。


正直通りたくはないですけど学校に向かうには一番の近道。

それにこれ以上蜜花さんに笑われるわけにはいかんのです。


タタタタタタッ。

そんなことを考えていたら後ろの方から走る足音。


「──ぎゃっ⁉︎」


振り返るとハンバーグショップ前にて見かけたヘルメットの不審者。

しかもかなり近くまで来ており木製の野球バットを振り上げていた。


「に、逃げてっ!」足音が聞こえず後ろの脅威に気が付いていない蜜花さんの背中を勢いよく押す。


ゴツッ。鈍い音がした。


「~~~~いったぁ」飛ばされた先の電柱に頭をぶつけた。


「急になにするんだ?」と睨み付けられましたが、ヘルメットの人物に気が付いたようで目を丸める。

ヘルメットの人物はというと急な出来事に戸惑ったのかバットを振り上げたまま固まっています。


「なにぼーっとしてるのさ、走るよ!」


まだ頭のぶつけたところが痛いであろう蜜花さんに手を引かれて走り出す。


「は、はい!」

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