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【漫才台本】あの時助けていただいたモノです

作者: いかり かます

※B=ボケ T=ツッコミ


B 世知辛い世の中ですね


T どうしたの急に


B コロナに戦争に不倫に横領、耳も眼も塞ぎたくなります


T 一まとめにして良いのかな今の……


B こんな時はお伽噺でも聞いて心をリセットしたいですね


T そうなんですか?


B 特に私ね、恩返しのお話が好きですね


T へえ


B 良い事をしたら、良い事が返ってくる。それが分かってたら皆善い行いをすると思いません?


T ああ、確かにね


B 奥さん大事にしてたら奥さんも夫を大事にしてくれる


T ああ、これはね。本当にそうでしょうね


B 真面目に仕事してたら、会社がちゃんと自分を評価してくれる


T これはね~、思い通りに行かない事多いかもですねえ


B 一生懸命残業したのに、ぜーんぶ、お前が好きでやった事だろって手当なし!


T それは辛い


B 結婚記念日だから早く帰ってご馳走作って待ってたのに、夫は忘れて同僚と飲みに行ってた


T これも良くある事なんでしょうね。でもうっかりかも知れないから許してあげて欲しいですね


B 許されないですねえ


T え?


B 逆の立場だったらどう思います? 今日は結婚記念日だからバラの花束買って、サプラーイズって言いながらリビングに入ったら、嫁がそんなこと忘れてて若い男を連れ込んでイチャイチャしてる!


T ええ!?


B 許せるか?


T いや、許せないよ!


B だろ?


T でも


B そっちの方がけた違いにサプライズなんだもん、負けて悔しいよね?


T え?


B そういう時は「笠地蔵」を思い出して欲しいね


T え? あの


B お爺さんとお婆さんは年を越すのに餅を買うお金もない。二人で一生懸命菅笠すげかさを作ってね。お爺さんが街に売りに行きました。けどね。これが思うように売れなかった。「婆さんががっかりするのう」お爺さんはしょんぼりと帰路につきました。帰る道すがらお爺さんは雪をかぶったお地蔵さんたちを見て、売れ残った笠を頭にのせてあげます。「これで少しは寒く無いでしょう?」優しいですね。お地蔵さんは何体も並んでたので、持ってた笠だけでは足りなくて、結局自分が頭に巻いていた手拭いまでお地蔵さんにあげてしまうんです。これが善い行い、善行ですね? さて、お爺さんはそのまま家に帰って、お婆さんに笠が売れなかったことを詫びて、帰る途中でお地蔵さんにあげてしまった事を言います。正直ですね。僕だったら「追い剥ぎにあって売ったお金取られた」とか嘘つきますね。だって笠が売れなかったとか自分の能力が低いと思われたくないですし


T クズですね


B ところが流石、正直なお爺さんのお嫁さんです。お婆さんは怒る事もなく「それは良い事をしましたねえ」とお爺さんの行いを褒めます。もうこれだけでも十分良い話です。だって、お正月に食べる餅も買えない程困ってるのに、笠を売ってこなかったジジイを


T おい、ジジイ言うな


B 怒るどころか褒めるなんて、こんな良い嫁います? この嫁なら間違っても妙なサプライズはしませんよね?


T その話なんだけどさ、サプライズじゃなくて浮気……


B お腹も減ってるのにね。白湯だけ飲んでこの夫婦は床につくんですよ。そしたら夜中になにやら音がしてね、玄関を出てみると家の前に山ほど食材が積んであるんです。米俵に餅に野菜にハンバーガーにポテチにコーラグミ


T こら


B いや食材だけじゃなかったかな? 反物や金銀財宝もあったかも


T そうでしたっけ?


B 「一体誰がこんなものを……」遠くを見ると、笠をかぶったお地蔵さんがざっすざっすざっすざっす、歩いて帰って行ってるんですね。一番後ろにはお爺さんの手拭いを被ったお地蔵さんもいます。お爺さんとお婆さんは「ありがたやありがたや」と手を合わせました


T うん


B こうであって欲しいですよね。例えその贈り物が、お地蔵さんがどっかから盗んできたものであったとしても


T やめなさい


B だってお地蔵さんがそもそもそんなもの持ってる筈がないんだから


T いやそうかも知れないけど……


B 極悪非道な悪代官の家からならセーフです


T セーフかな? 盗みは盗みなんじゃないかな?


B いえいえいえいえ。それでこそ辻褄が合うんです。善い行いにはご褒美。悪い行いには制裁!


T 怖い


B 助けた動物が恩返しに来てくれるのも良いですね


T 動物?


B 「私はあの時助けていただいた鶴です」


T あれ? それ最初は言わないやつじゃない?


B 「羽根を抜いてはたを織ってるのを見られたくないんで家で織って来ました」


T 合理的な鶴さんですね。


B 「見ないでって言っても見るでしょう?」


T ちょっと人間不信ですけどね。


B 「娘さん、そんな綺麗な姿して、本当に鶴なの?」


T あ、お爺さんかな?


B 「ちょっと、脱いでみてよ」


T え? いや、ちょっと


B 「今なら婆さんは川に洗濯に行ってるから気にすることはない」


T 待って、そんなお伽噺はダメでしょう


B 「良いではないか、良いではないか」


T 悪代官になっちゃってる!


B 「あ!」(驚いて振り向く)「婆さん!?」


T あちゃー、お婆さん帰って来ちゃったよー


B 「さ、サプラーイズ!」


T いや、許されるか!

この後お爺さんは放り出され、おばあさんは鶴と末永く幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし(*ˊ˘ˋ*)

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