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異世界コネクト  作者: 在原ナオ
第1章 異世界からの訪問者
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第7話 現状

 俺とリブラが相棒となった後、森を抜け夜の街へ戻った。ありがたいことに彼女は俺の自転車も能力によって回収してくれていたため、十分とかからず家に着くことができた。

これは後から知ったことだが、先ほどの襲撃による火事は新聞に小さく載っていたらしい。謎の不審火があり、警察も放火の方向で捜査を進めているそうだ。なんでも現場に血痕が残っていたことで、事件性ありと判断されたそうだ。

もちろんそれは俺が胸を貫かれたときにできた血痕で、さすがに慌てたが、俺が問題を起こさない限りは問題ないと判断した。

 さて、俺が異能力を操る敵と戦う覚悟を決めてから、何かしら事件的なことは起きないかと待ちに待ち、そして・・・・・一週間が経過した。


「さすがに何も起こらなすぎじゃない!?」


 気づけば金曜日の朝、俺はいつもと何ら変わりない日常を送っていた。俺が関わり殺されかけた放火事件を皮切りに、この荒神町で不審な事件はめっきり起きなくなっていた。まるであの日の出来事なんてなかったかのように、俺は不安を覚える。

 しかし、俺の不安を払拭するかのように家の窓から一羽の鳥が入り込んでくる。そしてまばゆい光が隣で発生し、人の形をかたどる。

 そう俺の相棒、異世界人リブラだ。

 リブラはここ数日、深夜を中心に見回りを行っている。

 俺は朝食を作りながら、リブラに問いかける。


「今日も成果なし?」

「ええ。さすがに不気味ですね、ここまで静かになってしまうなんて・・・」


どうやら今日も成果はなかったらしい。いいことなのだろうが、相手に時間を与えているため、リブラも気が気じゃないようだ。今のところ、こちらが先手をとれたことはない。俺も夜に見回りをするようになったが、まるで相手も警戒するかのように、息をひそめ始めたのだ。

俺が朝食をテーブルに並べ始めたころ、リブラも反応してこちらに来る。今日はトーストとサラダ。それにスープまで作った。もちろん片手間に弁当も作ってしまっている。

リブラと一緒に住んでいるというわけではないが、異世界人の彼女に家などあるわけもなく、食事や休憩するときにこの家を使ってもらっている。


「今朝もおいしそうですね。まさかレンが料理に精通しているとは、意外でしたよ」


 最初はリブラも遠慮していたが、異世界の料理にはもともと興味があったらしく、ここ数日俺とともに食事をするようになった。今では、俺の料理にウキウキしている節がある。

 先ほどは鳥に変身していたし、なんだか餌付けのような気もしなくはない。


「「いただきます」」


食事をする際のあいさつには馴染みがなかったらしく最初は驚いていが、今では当たり前のように言うようになった。それにおいしそうに食べてくれるのだから、俺も作り甲斐があるというものだ。


「まさか、こちらの世界にもパンがあるなんて、しかも焼きを入れるとは、面白い発想もあったものです」


確かにトーストは不思議だ。パンをトースターで焼いてマーガリンやバターを塗るというシンプルな調理工程。しかし、それだけでおいしいのだからパンを作った人や最初にトーストを作った人には感謝の手紙でも送りたい。

 それはそうとリブラはこちらを見据えて尋ねる。


「それでレン、あなたの異能力について何か進展はありましたか」

「特に何も・・・本当に俺のそんな力があるのやら」


 あの日から俺は、自分の中に宿っているという異能力についていろいろ試してみた。しかし何も反応せず、いまだに能力らしい能力を発動できていない。

 これでは、異能力を扱うものと遭遇しても何の役にも立てない。俺の中にはさすがに焦りが生まれていたが、リブラがそれをなだめてくれる。


「別に焦る必要はありませんよ、今のところ相手方に動きはないようです。ですので今のうちにできることをして、体制を整えましょう。それが今の私たちにできる平和までの第一歩です」


 気づけば俺はリブラに言いくるめられていた。どうやら俺の相棒は俺のことをお見通しのようだ。とにかく俺は頑張ろうと、自分で作ったサラダを口の中にかきこむのだった。



  ※



「さあレン、学校の時間ですよ。早く行きましょう」


 そう言ってリブラは俺のことを急かしてくる。今週の月曜日からリブラは俺の学校に同行していたので、リブラにとって5回目の学校となる。曰く、異世界の文化を学べるのが面白いのだとか。

 ちなみに同行といっても、もちろんそのままの姿で行くのではない。学校の間リブラは、ネックレスへと変身する。それを俺が首から掛け、スクールタイムを過ごすのだ。

 それに昼休みから放課後まではリブラは町の見回りに行くようにしている。こうすることで、学校と待ちどちらも平等に監視することに決めているのだ。まあ、リブラは授業に興味津々で後ろ髪をひかれているのを俺は気づいているが。

 俺はリブラの変身したネックレスを首にかけ学校へと自転車で向かう。十分ほどせずに学校へと打擲する。そして駐輪場に着いたところでリブラが話しかけてくる。


「いいですか。この学校はかなりの人口を誇っています。今日も異変がないか見逃さないでくださいね」


 リブラはこの学校の中でも何か異変が起きているかもしれないと警戒している。これがリブラが同行している一番の理由だ。なんでも、最初に事件が起きていたのが、この学校の周辺なんだとか。だから俺も警戒を怠らない。まあ・・・そんな危ないことはないと思っているのだが。

 俺は教室に行き自分の席に着いたところで誰かが近づいてくるのを感じる。まあ俺に話しかけてくれるのはあいつらしかいないか。


「よう蓮、今朝は元気だな」

「おはよう蓮」


 俺の友人の吾郎と龍馬だ。なんやかんやで朝は俺の机に集まるのが習慣になっているらしい。


「おはよう二人とも、朝から元気だな」


 そう適当に返して俺はスマホをいじりながら二人の話を聞く。何かしら事件が起きていないか気になるし、この二人も何か知っているかもしれないので、もちろん話は聞き逃さない。


「それでよー、俺の推しのアイドルが・・・」

「そうだ聞いてよ、最近面白い友達が増えてさー・・・」


 割と聞き逃してもよさそうだな・・・そう思ったところで担任が教室にやってくる。


「ホームルーム始めるぞー、葉島、号令を」

「はい・・・起立!」


 担任の呼びかけに応じてクラス委員長である葉島が号令をかける。

 一見何気ない日常、しかし俺とリブラは気を抜かずにこれからのことについて考え続ける。


 こうして不自然なほど平和ないつもの日常が再び幕を開けるのだった。


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