閑話1
第二章、作製中でございます。生存報告的な感じで投稿させていただきました。
感想にも目を通しております。修正に関しては現在、検討中です。
孤児院で作っているポーションの納品の手伝いを終えた俺は、その帰り道一人の少女を見つけた。
道の端でぽつりと膝を抱えるように座っていた女の子だ。
頬と目尻が赤くなっていた。泣いていたのだろうか、涙のあとのようなものが見えた。
「先生」
俺は気づけば、前をいく先生を呼び止めていた。
先生とは、俺を拾ってくれた孤児院の人だ。
今回の納品のポーションは先生が作ったものだった。
「ん? どうしたんだ?」
「……あの子、ちょっと声をかけてきてもいい?」
俺がゆびさした先には、先ほどの少女がいた。
俺と一瞬目があうと、怯えたように顔を膝の間に埋めていた。
「……そうだね。ちょっと声をかけてくれないかな?」
先生は穏やかな声と笑みを浮かべ、俺の言葉に頷いてくれた。
俺はすぐに少女の方へと向かう。
俺は今8歳だけど、少女は俺よりも一回りは小さい。
「キミ、大丈夫?」
「……」
俺が声をかけると、少女は怯えた様子だった。
……仕方ないか。
そう思いながら、俺は少女の隣に座った。
「俺、エミルって言うんだ。キミの名前は?」
「……る、ルーナ」
怯えていた少女だったけど、絞りだすようにしてそう名前を教えてくれた。
「そっか、ルーナって言うんだな。それでこんなところでどうしたんだ?」
「……」
また、黙ってしまった。
ルーナはしかし、すぐにぐすぐすと泣き出してしまった。
「えっとルーナ? 俺ってさ、その……昔捨てられちゃってさ」
「え?」
驚いたようにルーナが顔をあげる。
……俺は少しだけ予想していた。ルーナももしかしたら、そうなんじゃないかって。
だから、俺のことを話せば、もしかしたらルーナも何かここにいる事情を話してくれるかもしれない。
そう思って先ほどの言葉を口にしたんだけど、どうやらその予想は当たっていたみたいだ。
「それでさルーナはどうしたんだ?」
「わ、私……」
それからルーナは再び泣き出してしまった。
◆
「そっか……朝起きたら家に誰もいなかったんだな」
「う、うん……そ、それで……もうどうしたらいいか分からなくて」
ぐすぐす、とルーナは涙を流しながら俺の手をぎゅっと握っていた。
今俺はルーナと手を繋ぎながら歩いていた。
彼女は鼻をぐじゅぐじゅと鳴らしながら、必死に言葉を紡いでいた。
「先生、孤児院でルーナのこと面倒見れるんだよね?」
「うん、そうだね。大丈夫だよ」
「……そっか。だって、よかったなルーナ」
「……こ、孤児院?」
ルーナは孤児院というものを知らなかったようだ。
俺はそんなルーナににこりと微笑んだ。
「ああ……その、親のいない子どもたちがたくさんいるところなんだ。みんな家族なんだ」
「みんな、家族……エミルも?」
「ああ、そうだよ」
俺がそういうと、ルーナの表情が少しだけ明るいものになった。
俺はさらにルーナを元気づけるため、その頭を撫でた。
「そうだな……俺はおまえのお兄ちゃんってところかな」
「お、お兄ちゃん……」
「ああ。だから、その……もう泣くなって。これからたくさん大変なことはあると思うけどさ。俺が妹のおまえの分まで助けるから。だから……元気出せって」
撫でていた手をずらし、その肩を軽く叩く。
ルーナは俺の顔をじっとみてから、こくり、と頷いた。
「う、うん……!」
「……それじゃあ、行こっか」
俺はルーナの手をぎゅっと握り直す。
「先生、孤児院まで急いで帰ろう!」
「はいはい、分かったよ。ほら、走ると危ないよ!」
「はーい! そうだ、ルーナ。この人は俺たちの孤児院の管理とかをしている先生って言うんだ。これからお世話になるから、きちんと挨拶してな」
「う、うん……せ、先生。よろしくお願いします」
「うん、いい子だね。これからよろしくね」
先生がにこりと微笑むと、ルーナもまだちょっと不器用な感じだったけど、笑ってくれた。
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