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第52話

更新お待たせしました。あとがきで詳しく書きますが、またちょっと更新まで間隔あきます。


「エミル」


 エフィに名前を呼ばれ、俺は顔を上げた。

 エフィとは、迷宮以来の再会となる。まだ少し顔から疲労が抜けきってはいないようだった。

 俺の隣にエフィが並ぶ。場所は表通りから一本脇に入った道だ。民家に続くそこは、人気が少なく密会をするにはうってつけの場所だった。


「エフィ、来てくれてありがとな」

「ううん……それで、確認してきたんだけど、デュラハンとの戦いについては、私以外はみんな気絶していたみたいだよ」

「……そうか」


 それでホッとする。口止めを行う相手がエフィだけで済むようだった。


「それで、なんだけど……エフィは見たんだよな?」

「……キミがアローの心臓を食べたところ、とか?」


 話が早くて助かる。俺は頬を引きつらせた後、すっと頭を下げた。


「た、頼む。そのことは誰にも話さないでくれ!」

「え!? う、うん……そのつもりだけど……」

「本当か?」


 金をいくらでも払うつもりだったので、あっさりとそう返事をされて驚いた。


「……なんていうか、話したらいけないことなんだろうなって思っていたから誰にも話してないよ。……助けてくれた命の恩人が困るようなことはしたくなかったからね」

「……ありがとな」


 俺が考えている以上にエフィは優しい子だった。

 俺が安堵の息を吐いていると、


「でも、さすがにいきなりだったから少し驚いちゃったかな」

「や、やっぱりそうだよな」


 ……あまり、褒められる行いではないしな。

 この国では別に食人について問題に上がったことはない。


 ……食料に困るスラムではそういった行為も行われていることがあると聞くことがあるくらいのものだ。


「まー、その後の戦闘を見ていたら、食べた理由もなんとなくは分かるんだけど……もしかして、死体を食べたりすると、その死体の主の力が手に入る、とか……なの?」


 ここまで来て、隠し事をするつもりはない。


「ああ、そうだ。……だから、アローを喰らえば……デュラハンを破るための力が手に入ると思ったんだ。……もちろん、引かれるかもとは思ったけどさ」

「そんなことないよ。私たちを助けるためにしてくれたんだから。……ありがとね」

「……ああ」


 そう言ってもらえて、俺はほっと胸をなでおろした。

 嫌われたり、拒絶されることは構わないと思っていた。もちろん、悲しいし、苦しい気持ちはあるけど。

 ……でも、それ以上に嫌なのは……彼女によって俺の力がばらまかれ、人間を食ったということを伝えられることだった。


 そうなれば、この国には居づらくなって、ルーナにも迷惑をかけるかもしれなかったからだ。


 俺があの時考えていたことは、そんなことだった。


「その……これからも黙っていてくれると助かる」

「……うん」

「それじゃあな。今日呼んだ理由はそれだったんだ。呼び出して悪かったな」


 俺はそう言って両手を合わせる。もう用事は終わったので、路地から表通りへと戻る。

 そのまま帰ろうとしたところで、彼女がすっと手を掴んできた。


「そ、その……ちょっとだけ話してもいい?」

「え? どうしたんだ?」


 俺が振り返ると、エフィは頬を赤らめていた。


「……わ、私ってさ。故郷を守れるだけの冒険者になるために、今訓練中なんだよね」

「あー、そうなんだな」


 エフィが迷宮内で残していた手紙の内容を思いだす。……確かに、そのような感じだった。


「ただ、今回のことでちょっと……久しぶりに家族の顔を見たくなって……それで一度戻ろうと思うんだけど」

「いいんじゃないか?」

 

 ……命を失いそうだったこともあり、一度家族の顔が見たいんだろう。

 俺も、どこかで一度孤児院に戻ろうかな?


「それで……さ。い、一緒に故郷に来てみない?」


 エフィは耳まで真っ赤にして、そう言ってきた。


「え? それって……」

「わ、私の両親に凄い冒険者がいるって紹介……したくて……い、嫌じゃなかったら一緒に来てほしいなって……」


 そ、それってもしかして――。

 俺はエフィの表情と言葉から、少し考えてしまう。

 直接的な言葉による表現はされていないが、これってもしかして、告白されているのか!?


 目の前にいたエフィにドキドキと胸が高鳴る。……だけど、その高鳴りを抑えるように、脳裏にルーナの姿ちらついた。


「……いや、その悪い。俺はまだしばらく街に残る、からさ」


 気づけばそう答えていた。

 エフィは俺の返答に残念そうに肩を落としてから、いつもの調子で笑った。


「あ、あはは……そっか。うん! ま、また今度誘うからね!」

「ああ……ありがとな」


 エフィはそういって片手をあげて、去っていった。

 俺はその後姿を眺めながら、ルーナのことを考えていた。


 ……分からないんだよな。

 ルーナのこと、妹のようにずっと見てきたつもりだった。


 でも、一緒にいると安心して、楽しくて、そして……ドキドキさせられる。

 ……いや、まあ発言内容自体にドキリとさせられることもあるんだけどさ。




 俺が宿の部屋に戻ると、ルーナがこちらにやってきた。


「兄さん。早いお帰りでしたね。どうしたんですか? もしかして、私に会いたくて……とか」

「なあ、ルーナ」

「はい? そろそろ成人を迎えるから結婚の相談でしょうか?」

「……もしも、俺が人を食って力をつけた、って聞いたらどうする?」

「え? 兄さんが正しいと思ったことなら良いと思います」

「……そうか」


 俺は小さく息を吐いてから、ルーナの体をぎゅっとだきしめる。


「え? に、にににに兄さん!?」


 抱きしめたあと体を離すと、ルーナは目をぱちくりとしていた。

 普段散々からかってくる癖に、ルーナは耳まで真っ赤だ。


「よし! また明日から冒険者活動再開だな」

「え!? ちょ、ちょっと待ってください兄さん! さっきの抱きしめはなんですか!?」

「まあ、あんまり気にするな」

「き、気にしますよ! どういうことですか兄さん!」


 後ろから迫ってきたルーナに、俺は笑みを返した。





前書きに書きましたが、一章全体見直して修正する予定です。


書きながら「勇者の力を獲得するのいいかもー」と思って一章の終わりをあのようにしましたけど、あれやるなら主人公の能力獲得方法は「食べる」じゃなくて「吸収」とか別の方法にしたほうがいいかなーとか思っているので、そこら辺修正するかもです。


とりあえず、二章についてですがですが、ある程度結末までの見通しが出来たところで投稿していこうと思います。



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