第51話
迷宮爆発の対応が終わった次の日だった。
俺はギルド目指して街を歩いていた。
街を歩いていると嫌でも昨日の被害を見せつけられる。
迷宮爆発による被害は、決してないわけではない。
街にはいくつもの傷跡が残っていた。グリフォンや、他の魔物たちによって街は散々に蹂躙されてしまっていた。
それらを見ると、胸が締め付けられるような痛みに襲われた。
……もっと、早く対応できなかったのだろうか? 別に俺は正義の心に溢れているというわけではないが、被害を最小限に抑えたかったという気持ちを抱く程度の正義感はあった。
ギルドに到着した。同時に、冒険者たちがこちらへとやってきた。
「おまえ、エミルだよな!?」
「あ、ああ……」
急に周囲を囲まれ、俺は驚いてしまう。
彼らは顔を見合わせた後、嬉しそうに頭を下げて来た。
「助かったぜ! おまえのおかげで俺たち死なずに済んだんだよ!」
「死なずに……どういうことだ?」
「もうグリフォンに食われるかも! って思った時に魔物たちが消滅したからさ! 迷宮の攻略が終わったってことだろ!? ほんと、助かったよ! ありがとな!」
冒険者たちが揃って俺のほうに頭を下げてくる。
それは彼らだけではない。
受付の方に進んでいくと、冒険者たちに囲まれる。
「助かったぜ!」
「ありがとな! おまえは英雄だよ!」
「俺の子供もおまえのおかげで守ることができたよ! ありがとう!」
……感謝の嵐だった。
正直言って、こんなに感謝されたことはないため、引きつるような笑みしか返すことが出来なかった。
受付へと到着した俺は、そこに待ち構えていたギルド長にすっと頭を下げられた。
「ぎ、ギルド長?」
「……ありがとう。この街を任されている代表者としては今回の迷宮爆発はマジでやばかったからな。正直言って、おまえがいなかったら攻略にもっと時間がかかっていただろうから、下手したら街自体が無くなっちまってたかもしれねぇ」
「そ、それは……」
さすがにないんじゃないか、とも思ったけど……あり得るのかもしれない。
迷宮爆発の発生地がAランク迷宮だったせいで、この街の戦力ではどうしようもなかった。
となれば、持久戦に持ち込むしかないのだが、それも相性が悪い。
門を堅く閉じたとしても、グリフォンが空から襲ってくる状況だったんだからな。
「おまえのおかげだぜ、エミル。本当に、本当にありがとう」
「……力になることが出来て良かったです」
俺はそういうと、ギルド長は下げていた頭を上げた。
「まあ、後で領主様からも礼を言いたいって話だ」
「りょ、領主様からですか? そ、それは……さすがに」
「いやいや、おまえはそのくらいのことをしたんだ。また詳しい日程が決まったら伝えるからな。まだしばらくは街にいるんだろ?」
「は、はいその予定ですが……」
……貴族の人とはできればあまり話したくなかった。
だって、俺はそんなに礼儀を知っているわけじゃないからな……。
どこでどんな無礼を働いてしまうのかと今から緊張してきてしまった。
ギルド長はガハハと笑って俺の背中を叩いてくる。
「まあ、そう緊張するなよ。英雄様としてどーんと構えていればいいんだよ!」
「そ、そういうわけにもいきませんよ……」
俺はそう言ったが、ギルド長は大らかに笑ったままでいた。
……とりあえず、こうして普通の日常が戻ってきて良かった。
俺は改めて、そう思った。
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