第43話
「なんですか、ギルド長」
「おお、良かった! エミルはいるのか!」
嬉しそうな声でそう叫んだのは、ギルド長だ。
……一体どうしたのだろうか?
街の戦いに参加していないことを叱られるという様子でもなさそうだ。
「どうしたんですか?」
「街の鎮圧は終わったんだが……迷宮爆発が発生しているらしくてな。これからその問題の迷宮を攻略する必要があるんだが……人がいなくてな。そこでエミルに協力してもらおうと思ったんだよ」
「分かり、ました」
……迷宮爆発。
まさか本当に発生してしまうとは思っていなかった。
このような状況に対面したのはこれが初めてだった。
騎士の詰め所にいた人たちも、その言葉を聞いてどこか不安げだった。
「一刻も早く迷宮爆発を収めないとならねぇ。つーわけで、街内にいる戦力をかき集めていたんだがよぉ、アローはいないみたいだな……」
「……そう、ですね。たぶん、迷宮攻略に行っているはずです」
「……そうか。タイミング悪いな。どこの迷宮かは分かるか?」
「たぶん、タウロス迷宮ですね」
「……」
ギルド長が額に手をやった。
……その反応で、俺は理解した。
「まさか、迷宮爆発が発生したのも……」
「……そう、その通りだ。そのタウロス迷宮だよ」
ギルド長の言葉に、俺は唇をぐっと噛んだ。
詳しい話をするため、場所を移す。
避難者たちがいる場ではさすがに話しにくいからだ。
俺たちが一室へと移動すると、そこには騎士がいた。
「お久しぶりですね、エミルさん」
「久しぶりです」
にこりと微笑んだ騎士に、俺は頭をすっと下げた。
以前、勇者との賠償金に関してお世話になった騎士だ。
「こいつはこの街の騎士隊長でな、レベルは2000ほどだ」
ギルド長の紹介によって騎士は頭をかいた。
「もっと私も強ければエミルさんのお手を煩わせることもなかったのですが……申し訳ありませんね」
「いえ、大丈夫です」
そういって騎士が笑いかけてきた。ギルド長が用意されていた椅子にどかっと座る。
「魔物が街に襲ってくるまでにさっさと攻略する必要があるんだ。ただ、デュラハンをオレたちだけで倒せるとは思えねぇ。全員で、協力する必要があるってわけだ……そういうわけで、エミル手伝ってくれるか?」
「もちろんです」
冒険者はこういった際の対応を行うのも仕事の一つだ。
「そんじゃ、さっさと行こうぜ!」
「結局アローさんは見つからなかったんですか?」
騎士が立ち上がり首を傾げる。
「どうやら、タウロス迷宮攻略中みたいなんだよ。……それ含めてさっさと行かねぇとな。無駄な犠牲を出すわけにはいかねぇしよ」
「なるほど……それは急いだほうがよさそうですね」
……俺もそう思う。
アローは確かに強いが、それでも迷宮爆発が起きた中で戦えるかどうか分からない。
エフィたちだってそうだ。
……みんな、無事でいてくれよ。
タウロス迷宮の攻略を行うための準備を整えた俺は、一度ルーナに会いに向かっていた。
彼女はやはり心配そうにこちらを見ていた。
ぎゅっと抱き着いてきた彼女を受け止め、頭を撫でる。
「大丈夫だ、必ず攻略してすぐに戻ってくるからな」
「はい……気を付けてくださいね」
俺は最後に一度ルーナをぎゅっと抱きしめてから、その場を離れた。
外で待っていた騎士隊長とギルド団長の元へと向かう。
と、彼らは騎士と冒険者をまとめあげているところだった。
「すぐに私たちが迷宮を攻略してきてみせます!」
「てめぇら! そういうわけでそれまで持ちこたえろよ!!」
騎士隊長とギルド長がそれぞれに怒鳴りつけるように叫ぶ。
「「おおおおおお!」」
皆が各々の武器を掲げ、声を張り上げた。
いつ、魔物たちが街を襲ってこないとも限らないため、この街の防衛も重要だ。
その守りの要であるた騎士や冒険者たちの士気は2人の叫びによって最高潮に達していた。
……これなら、問題はないだろう。
俺たちはすぐに町を出発した。
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