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第42話


 

 ……魔物だ。

 近づいてきて、はっきりとわかった。

 俺はその魔物をよく知っていた。


「グリフォンだ!!」


 悲鳴のような叫びが響く。

 そう……それは紛れもないグリフォンだった。  それも複数のグリフォンが一斉に。


 巨躯を大きな翼で操るようにして街へと下りていく。

 そして、咆哮を上げながら周囲を風で薙ぎ払う。

 

「に、逃げろぉぉ!」


 戦えない市民たちが一斉に悲鳴をあげ、グリフォンがいない方へと走っていく。


 ……平穏な日常は瓦解する。悲鳴と叫びが入り混じり、多くの人が背中を向ける。

 

 すべての人間は才能を持っているのだが、冒険者としてやっていけるような人はそれほど多くはない。

 そもそも、冒険者は安定しない職業なので、それ以外を目指すという人も多くいる。


 街によって力を持つ人間は大きく差が生まれるが、この街はそれほど大きくはないようだった。

 しかし、それでも何人かの冒険者がグリフォンへと斬りかかった。

 グリフォンの背後を取り、その背中を切り裂いた。


 俺も戦いに助力したかったが、それよりまずは……ルーナを探したかった。

 俺は約束の場所へと戻ってきた。

 ……まだ50分ほどしか経っていないためか、ルーナはいなかった。


「ルーナ! どこにいるんだ!?」


 声を張りあげ、周囲を探す。

 まさかこんなことになるのなら一緒に買い物に付き合えばよかった!


「わあああ!?」


 グリフォンがさらにどこかに降り立ったようで、近くで悲鳴が聞こえる。

 ……とりあえず、近くにいるグリフォンを片っ端から倒していくしかない。


 俺は悲鳴が聞こえた方へと走り出した。

 そちらを見ると、グリフォンが数体地上へと降りてきていた。


「うわあああ!?」


 大人たちがグリフォンから逃げようとコチラに向かって走り出していた。向かってくる人の波をかき分けながら、俺はグリフォンへと接近する。


 その瞬間、逃げ惑う大人たちに押されて石畳に倒れてしまった子どもが見えた。

 俺がすぐに助けようと思ったその時……探していたルーナが子どもの体を起こそうと視線に割り込んできたのだ。


「な、泣かないでください! ほら、すぐに立って……私が一緒に着いていきますから、早く!」


 ルーナが立ち上がろうとする子どもの手を取り、走り出そうとしたまさにその瞬間だった。

 その場にいた二体のグリフォンがルーナたちを視界に捉えたのだ。

 狙いを、ルーナたちに定めた瞬間だっだ。


「ルーナ!」

 

 俺が叫ぶ声に反応したのか、ルーナがはっとしたようにグリフォンの方を向き直る。


「キュエエエエエエ!」

 

 グリフォンが吠えルーナへと翼を広げて駆け出し、襲い掛かっていく。


 やらせるか……!

 二体のグリフォンが同時にルーナへと迫る中、俺は即座に【シャドーアサシン】を纏う。


 さらに、同時に【サムライオーク】も纏う。

 一体のグリフォンの首を、シャドーアサシンで操った影で斬り飛ばした。


 矢継ぎ早に【サムライオーク】の居合を繰り出して、ルーナへと迫るもう一体のグリフォンの首と胴体をその剣閃で両断する。


 5秒の制限時間を迎えた俺は、それから大きく息を吐いた。 


「大丈夫かルーナ!」


 呼吸に詰まりながら、必死に声を絞り出す。

 すぐに俺は制限時間の反動で膝をつくと、ルーナが心配げに俺の肩を掴んだ。


「に、兄さんのおかげで何とか……兄さんは大丈夫ですか!?」


 ルーナに返り血が飛んでしまったようで、頬にはグリフォンの血がついている。


「俺は、大丈夫だ!」


 【再生の勇者】のおかげで、俺のスタミナは既に回復していた。

 ルーナを安心させるために笑みを浮かべる。

 ……しかし、周囲は大混乱だった。


 グリフォンは近場にはいなかった。

 それがどうして――?

 疑問が渦巻く中、俺はルーナと子供を先に走らせて、その背後からルーナらを守りながら人が集まっている場所を探して走る。


「逃げている市民はギルドか騎士の詰所に避難しろ! 戦えるものは武器をとれ!」


 騎士が叫んでいる。

 ギルドか騎士の詰所が避難場所となっているようだ。

 ……今、俺たちがいる場所からだと、騎士の詰め所が近いか。


「ルーナ、避難するぞ!」

「わ、分かりました」


 ルーナは子どもの手を握り、一緒に走り出した。




 しばらくして、俺たちは騎士の詰め所へとたどり着いた。

 子どもを避難所に連れていくと、すぐ入り口で涙を流していた母親が俺たちの方へとやってきた。


「レイル! レイルなの!?」

「ま、ママ……!」


 ……どうやら、助けた子どもの母親らしい。

 わんわん泣きながらレイルは母親の方へ駆け出し、その体に抱きついていた。


「よ、良かった無事で……! ありがとうございます、ありがとうございます!」


 必死に何度も母親は俺たちの方へと頭を下げてきた。

 俺とルーナは少し照れ臭く思いながらその感謝に頬をかく。

 と、その時だった。


「ここに、アローかエミルはいねぇか!」


 ギルド長が大声を張りあげながら騎士の詰め所へとやってきた。

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