第39話
数日、俺はウォリアソードの強化とレベル上げを行っていた。
ウォリアソードの強化は順調に行えていたのだが、レベル上げに関しては少し問題があった。
……というのも、最近はあまりレベルが上がらないようになってしまったのだ。
どれだけ肉を喰らっても、魔物を倒してもレベルアップのペースが遅い。
もうそろそろ別の迷宮に移動するべきなのかもしれないな。
そんなことをぼんやりと考え始めた俺は、ギルド長に呼ばれていた。
「ギルド長、どうしたんですか?」
ギルド長の部屋へと入ると、彼が気さくに笑いかけてきた。
「いやな。ちょっと最近街付近で見かけない魔物がいるみたいでな」
「見かけない魔物、ですか……?」
「ああ、そうなんだよ。そこでおまえに依頼したいと思ってな。見かけない魔物ってのはグリフォンでな、そいつの討伐と周囲に他にもグリフォンがいないか調べてほしいんだよ」
「分かりました」
「……最悪、迷宮爆発の前触れの可能性もあるからな。ちょっと良く調べてみてほしいんだ」
……迷宮爆発。
迷宮内の魔物が外に溢れ出てくる現象だが、同時に普段は現れない魔物なども発見されることがある。
もしも、グリフォンが迷宮爆発の前兆ならば――。
「迷宮爆発……大丈夫なんですか?」
「とりあえず、今のところはそういった様子はねぇな。迷宮内で、魔物の階層移動が見られたというのも聞いてはいないんだけど……とりあえず警戒しておかないといけねぇからな」
「……そう、ですか」
迷宮爆発が発生すると、本来迷宮の階層を移動しない魔物が、階層の移動を行うようになる。
それが迷宮爆発を決定づける状況として一番分かりやすいものだった。
「分かりました。とりあえず周囲の状況を調べてみようと思います」
そういって俺はギルド長の部屋を後にして、街の外へと向かった。
「……グリフォン、あれか」
受付にて地図をもらい、発見された場所周辺を歩いてみたらすぐに見つかった。
グリフォンはウルフの死体を食い荒らしていた。
……この街の周囲にはウルフやゴブリン程度しか魔物がいない。
グリフォンの好物はどうやらウルフのようで周囲にはいくつものウルフの死体が転がっていた。
「……でも、近くの迷宮にもグリフォンはいないんだよな? ということは本当に迷宮爆発の前触れなのか?」
あるいは、この個体だけがどこかから流れ着いてきたか、だ。
とりあえず、討伐が依頼内容だったので俺は刀を抜いた。
斬撃を放つと、グリフォンは敏感に察知して飛んでかわした。
そして、俺を睨みつけてきた。
食事を邪魔され、お怒りのようだ。
グリフォンが足で掴みかかるように飛んできた。
それを横に跳んでかわし、反撃しようとするとグリフォンは空へと逃げた。
……自分のアドバンテージをよく理解しているな。
空を飛ばれているのは厄介だったが、こちらにとってその程度ならば問題はない。
こちらには、【サムライオーク】がある。
意識を整える。
集中した俺は、その体を見据え、刀を振りぬいた。
不可視の斬撃。魔力の感知のみでしかかわすことのできない斬撃が、グリフォンの翼を切り落とした。
「がああ!?」
グリフォンは驚いたような声をあげる。
翼を失ったグリフォンが空中に体を維持することはできず、そのまま落下する。
頭から落ち……打ちどころが悪かったようで、そのまま動かなくなった。
よし、死んだな。
心臓を食べようか。
動かないことを確認してから、その心臓に手を伸ばす。ステータスを確認すると、【憑霊グリフォン】が増えていた。
早速、使用してみようか。
体に【グリフォン】をまとってみる。
……どうやら、風を操る力があるようだな。
ささやかな風が生み出せるが……使い道は何だろうか? ……スカートでもめくるとかか? 本当にその程度の風しか生み出せないようだ。
「……あんまり使える才能ではなさそうだな」
俺は憑霊を【サムライオーク】に戻してから、さらに周囲を確認していく。
しかし、それから一時間ほど周囲の散策を行ったのだが、グリフォンの姿は見当たらない。
いたのはウルフの群れやゴブリンの群れたちだ。無謀にも挑んできたので返り討ちにして、その心臓も一応食べたがもちろん、レベルが上がることもなければ大した憑霊も得られなかった。
「……とりあえず、ギルドに報告に戻るか」
特に新しい情報は得られなかったが、それでもグリフォンがいたというのは確かなのだ。
迷宮爆発などにつながらなければいいんだけどな……。
【重要なお知らせ!】
日間ランキング上位目指して更新頑張ります!
・ブックマーク
・評価の「☆☆☆☆☆」を「★★★★★」
をしていただきますととても嬉しいです!