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第36話

 次の日。

 迷宮に行く前に鍛冶工房へと向かい、刀を回収する。


「いい刀じゃねぇか。兄ちゃん、大事にするんだぞ?」

「分かっています、ありがとうございました」


 代金を支払った後、俺は鍛冶工房を出た。

 背中にウォリアソードを背負い、腰に刀を差す。

 ……刀と剣の二刀流だな。


 難しいのは、剣と刀を使う際の使い分けだな。

 俺は腰に差した刀の柄を握りながら、【憑霊ウォリアオーク】を発動する。

 ……やはり、刀では恩恵は得られないようだ。背中の剣の柄を握ったときには、その効果は受けられた。


 逆も試してみる。【憑霊ウォリアオーク】から【憑霊サムライオーク】へと切り替える。

 剣を握ってみても効果はないが、刀を握った瞬間……一気に体が軽くなった。

 

 確実に、【憑霊ウォリアオーク】よりも恩恵は強い。

 ……もしかしたら、タウロス迷宮に挑んでも勝てるかもしれない。

 

 新武器の試し切りも行ってみたいし、今日はタウロス迷宮に挑んでみようかな。

 気分はウキウキだ。新しい武器を試すときと、新たな憑霊を手に入れたときが楽しいと思える時だった。


 冒険者通りを歩いていると、向かいにいた五人組の冒険者が目に留まった。

 ……あれは――。


 俺が気づいたのと、向こうの女性も俺を見てニコリと笑った。


「やぁやぁ! そこの人はエミルさんだね! やほー、覚えてる?」


 元気一杯の彼女――エフィに俺はもちろん頷いた。


「ああ、覚えてる。エフィだよな?」

「やった! 名前覚えてくれてたんだ。ありがとね!」


 にこっと微笑む。

 愛想の良い子だな。

 整った容姿に、これだけの人懐っこさだ。さぞかしモテるに違いない。


「アローはどうしたんだ?」


 アロー以外の全員が、ここにいた。


「いやぁ、アロー様はアタシたちとあんまり仲良くなくてね。一緒に買い物はしないんだよね」


 一緒に買い物しない、というよりもアローにとってそれは階級の低い人間がやることとか考えているんだろうな。


「……なるほどな。今は宿で寝てるってところか?」

「おお! お見事! 良く当たったね!」

「まあな。元々勇者パーティーの雑用をやっていたからな」


 勇者パーティーにいた頃は、迷宮の攻略の準備は俺がすべて行っていたからな。

 あの時は俺自身に他の才能が全くなかったというのも原因の一つだし、それ自体は理解しているが。


「そっかぁ。とにかく、勇者アロー様がお目覚めになられる前に迷宮攻略のための準備を整えないといけないわけなんですよー」


 ふざけた調子で言うエフィに苦笑する。


「でも、良くアローに声をかけたな。アロー、装備品何も持っていなかったんじゃないのか?」


 ないのか? というか、たぶん持っていなかったと思う。

 しかし、最近はアローも最低限の服を身につけている。……前ほどしっかりとした物ではなかったけど。


「あっ、そこはアタシたちである程度サポートしたんだよ! 本当会った時は、身ぐるみ全部剥がされて勇者様の見る影もないんだもん!」

「でも、サポートか……ということは、何かしらの見返りがあるのか?」

「当たり! アロー様に最低限の装備品を援助してあげる代わりに、私たちのレベル上げを手伝ってもらってるんだよね。ほら、アロー様って才能だけは優秀じゃない?」

「ま、まあな」


 ……チクチク、とアローに対しての印象が見えているな。

 まあ、別にいいけど。


「だから、多少高難易度の迷宮の魔物とも戦えるんだよね。今はタウロス迷宮の浅い階層でレベル上げを手伝ってもらっているんだよ! アタシたちのレベルってまだ950くらいだから、本来であればCランク迷宮くらいでレベル上げをするのが適正なんだけど……アロー様がいればAランク迷宮にも挑戦できる!」

 

 ……確かにな。

 アローたちと別れる前のレベルは1000前後だったはずだ。

 レベルが近ければ、一緒に魔物を倒しても問題ないからな。


「毎日10レベルくらいずつ上がっていくんだから! こんな美味い話ってないんだよ!」

「そうか……」


 ……そういえば、レベルって上がりにくかったんだったな。

 毎日10レベル、というのはかなり上がっている方なんだよな。

 すっかり忘れてしまっていた。


 ……最近の俺も50レベルくらいしか上がらなくて落ち込んでいたが、それでも他の人からすれば超速でレベルアップしているんだよな。


「ま、あんまりアロー様の態度がうーんって思うこともあるけど……アタシはいつかSSS級の冒険者になろうと思っているからね! 利用できるものは何でも利用するんだよ!」


 ……なるほどな。

 利用し、利用されているというわけか。

 アローだって、エフィたちのパーティー以外では中々入れてもらえないだろう。


「一応気を付けてな? アローがいつ無茶を言い出すか分からないからな。こう、泣かされるようなことされそうになったら言ってくれ」


 一度やられた先輩として、そうアドバイスを出させてもらう。アローが何をしでかすか、分からないからな……。


「大丈夫! アタシたちだって強いからね!」

「……それならいいんだが」

「あっ、そうだった! ちょーっと聞きたいことがあったんだけど……いいかな?」

「なんだ?」

「アロー様がおやつにクッキー食べたいってうるさくって! ……この辺りで美味しいクッキーのお店とか知らないかな? 前に買っていったものは美味しくないと怒られてしまったんでー」

 

 嫌々、といった態度が露骨に見えていた。

 ……冗談なのか本気なのか分からないな。


「あー、分かった。案内しようか?」

「え!? ほんと!? ありがとうございます!」


 ……アロー含め、勇者の人たちは昼食などの用意をしっかりしていないと滅茶苦茶怒るからな。

 俺はいつも購入していた店をエフィたちに案内した。


「ここなら安いしアローは満足するはずだ」

「なるほどなるほどっ!」

「また何かあったら聞いてくれ」

「ありがとー!」


 エフィたちがすっと頭を下げ、店へと入っていく。

 ……エフィたちもまた、最強の冒険者を目指しギラギラと目をたぎらせていた。

 

 そんなやる気に、俺もまた負けたくないという思いが溢れた。

 

「頑張るぞ!」

 

 気合を入れなおし、俺はタウロス迷宮へと向かった。

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